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曽我部恵一 連載小説「メメント・モリタ」第六章

前号までのあらすじ
3年以上、海賊版アダルトビデオの注文を取って納品するアルバイトを続ける主人公のぼく。チャイニーズマフィアとの繋がりを噂されていた同僚のリーさんから、ときどきマリファナを買っていたが、出勤したある朝、そのリーさんが逮捕されたことを聞いた。


「ねえ」デザイナーのODが近づいてきて小声で話かけた。「リーさん、持ってかれたよ」

いつものように穏やかな〈KS株式会社〉の昼下がり。ぼくは出勤途中に買っておいたヤマザキのスナックスティック(チョコチップ味)をかじっていた。

「マジで?」

めちゃくちゃ驚いたが大声も出せず、声をひそめた。

「それがさ……クスリじゃないの、捕まった原因が」

「なに」

けっこう好きなスティックパン(チョコチップ味)は、もう味がしなくなっていた。

「管理売春。笑えるでしょ」

ODは真顔だ。ぼくは予想しないことに絶句した。

「ほら、リーさんが関係してたって噂の新宿のチャイナ系組織、そこの末端で、女の子動かして客取らせてたみたいよ」

ぼくは何も言わず、パンの最後のひとかけを口に詰め込んだ。

「でさ、ネイちゃん。あの子も事情聴取で引っ張られてんだって。専務が言ってた」

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曽我部恵一 連載小説「メメント・モリタ」第六章

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「書け書けと言われ、書き始めたのだ。小説。 物語がどうなっていくのかは全然わかりません。わかってても、そのように進まぬように願いたい。 自分の人生とはちょっと違うところで、また自由に生きる気分で、このお話に取り組んでみるつもりです」 曽我部恵一、初の連載小説。

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