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曽我部恵一 連載小説「メメント・モリタ」第三章

前号までのあらすじ
〈細胞とガーファンクル〉をやっている友人たち、タカハシ、ヨネ、タイチ。主人公のモリタヨヒトは、彼らと飲み明かしたり、居酒屋でナンパしたり、レディオヘッドの来日公演を心待ちにしたりしながら、なんとなく春をやり過ごしている。


地下の薄暗い練習スタジオ。京王線、幡ヶ谷駅。ロビーにボロいテーブルが3つ、ロビーを取り囲むようにボロいスタジオが3つ。ロビーには何人かの客がいる。スタジオからバンドが演奏する音が漏れてくる。その音は低くこもっていてどんな音楽か判然としない。

このスタジオでぼくはよく、友人のタカハシのバンド〈細胞とガーファンクル〉の練習をぼうっと見学して飽きたらこうしてロビーで過ごす。この時間がぼくは好きだ。ぼくはモリタヨヒト。23歳男。乙女座。血液型は不明。アダルトビデオの海賊版を売りさばく会社でバイトをしている。

いま、1人で受付に座っている店員があくびをした。この店員はぼくがこのスタジオに来始めた頃からずっといる。

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曽我部恵一 連載小説「メメント・モリタ」第三章

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「書け書けと言われ、書き始めたのだ。小説。 物語がどうなっていくのかは全然わかりません。わかってても、そのように進まぬように願いたい。 自分の人生とはちょっと違うところで、また自由に生きる気分で、このお話に取り組んでみるつもりです」 曽我部恵一、初の連載小説。

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