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曽我部恵一 連載小説「メメント・モリタ」第五章

前号までのあらすじ
23歳男。乙女座。血液型は不明。友人のバンドの練習に顔を出し、アダルトビデオの海賊版を売りさばく〈KS株式会社〉でバイトをして過ごすモリタヨヒトは、出会ったばかりの中国福建省出身の大学生、ネイちゃんのことが気になって仕方ない。


彼らがやって来る。全員紫色のヘルメットを被った数十人、いや数百人の軍団。ぼくのアパートの部屋のドアのところまで、そいつらは来る。「ナニモシナイカラデテキナサイ」。変調された声がドアの向こうに気味悪く響く。ぼくはドアから逃げるしかないと思っている。が、足がすくんで動かない。探しているものはわかっている。日本人の20代男性の真っ白い精子だ。中国本土ではもう手に入らなくなったそれを求め、日本にも侵略の足音が聞こえ始めたのはいつのことだったか。粗暴な彼らはそれを得るためにぼくのちんぽこを切り落とそうとするだろう。そんなことをしても無駄なのに。彼らの脳みそはロボットのように単純で頑丈だ。「ア・ケ・ナ・サ・イ」。不気味な声が、再び。ぼくは逃げようと思う。窓から。ええっと、ここは何階だったっけ?

一瞬、間があって、アパートのドアにある新聞受けの小窓がゆっくりと開く。何かがそこから入って来る。小さいものだ。動いている。侵入したそれは、玄関に落下する。「ことり」という音がする。

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曽我部恵一 連載小説「メメント・モリタ」第五章

雑誌『ケトル』編集部

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小説「メメント・モリタ」曽我部恵一
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「書け書けと言われ、書き始めたのだ。小説。 物語がどうなっていくのかは全然わかりません。わかってても、そのように進まぬように願いたい。 自分の人生とはちょっと違うところで、また自由に生きる気分で、このお話に取り組んでみるつもりです」 曽我部恵一、初の連載小説。

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