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曽我部恵一 連載小説「メメント・モリタ」第二章

前号のあらすじ
主人公のぼくは、5カ月経って春になっても、元カノのミカが忘れられない。それでもエロい気持ちにだってなるし、美味しいものは美味しいし、いい音楽はいい。ただ、彼女に別れを告げられた瞬間から、色づいていた街がモノクロームの廃墟になったままだ。


ミカが通りの向こうからやってくる。小走りで。風で前髪が跳ね上がるのを避けるように顔を下に向けながら。くちびるがピンクの三日月を描く。笑っている。ぼくはミカのそんな姿が好きだった。

空はぽっかりと青い穴を開けてそこにある。5月の風は季節の予感を孕み、知らん顔で行ったり来たりしている。街はがらんどうのクッキーの缶。昭和の頃からそのままでところどころ錆びついてしまった。ぼくらは……ぼくらはクッキー缶の中で初夏の風が吹くのを待つ。ひとつ前の春。

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曽我部恵一 連載小説「メメント・モリタ」第二章

雑誌『ケトル』編集部

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「書け書けと言われ、書き始めたのだ。小説。 物語がどうなっていくのかは全然わかりません。わかってても、そのように進まぬように願いたい。 自分の人生とはちょっと違うところで、また自由に生きる気分で、このお話に取り組んでみるつもりです」 曽我部恵一、初の連載小説。

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