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なぜ投げ銭は難しいのか?

20代後半から30代の初めは、大道芸でいただく投げ銭で生計を立てていた。僕にとってはとても身近な事だけど、人生で一度も投げ銭をしたことがない人ってかなり多いんじゃないだろうか?やってみたらわかるけど、これが意外に難しい。いくら出してもいい=自分で決めなければならないからだ。

感覚的に近いのは、街頭で募金をする時かもしれない。「みんな小銭しか入れてないから」とか、「今月はちょっと支出が多かったからなあ」とかは街頭募金でも投げ銭の時でも考える事だろう。でも募金は何かの対価にお金を支払うわけではない。

一方で投げ銭は、大道芸を楽しんだという対価だ。そして「この人の生活もあるわけだし」とか「結構楽しんだからなあ」とか「途中から見たしなあ」という、大道芸を見終わった時ならではの氣持ちも湧くはず。さらには、大道芸人とは短期間とは言えお互いに顔見知りのような感覚になるから、情も湧いてると思う。


また、海外ではチップの習慣のある国もある。海外旅行の際に、お店の人やタクシーの運転手さん、ホテルのスタッフなどにチップを渡した経験がある人もいるだろう。でも大抵はガイドブックに料金の15~20%を渡すといいでしょうとか、ホテルのスタッフが荷物を運んでくれたら2ドル渡しましょうなんて書いてある。最終的な額は自分で決めるけど、ガイドラインがあることが多い

投げ銭について目からウロコの記事でちょっと触れたけど、物の値段が決まっているのが当たり前の生活をしていると、定価やガイドラインがないと、とたんにうろたえ、ちょっとしたストレスになってしまう。

そこに目をつけた大道芸人は、自分でガイドラインを作り、お客さんを教育、あるいは洗脳してくる。ショーの最後に「缶コーヒーは100円、生ビールは500円、映画は1,800円です。今、みなさんは30分間、私と楽しい時間を過ごしました。私のショーは缶コーヒーより価値がないですか?それとも、うんぬんかんぬん、、、」

ちなみに僕は、こういう言い方が嫌だったから、言ったことがない。(20代の頃はしゃべりながらパフォーマンスしていた)


そんな大道芸人たちの日常を知ってか知らずか、noteの「サポートをする」をクリックした時にガイドラインが出てきて、思わず笑ってしまった。金額とそれに見合ったそれぞれのイラストが、缶ジュース、コーヒーカップ、カトラリーと貼ってある。やっぱりnoteを運営されてるみなさんも、サポートの額を決める=自由=自分で考える=楽じゃないですよ、ってわかってらっしゃってて、ガイドラインを描いてあるんだろう。

そして!noteのサポートにはちゃんと、プレゼントの箱のイラストで「任意」という選択肢もある。投げ銭と同じく自由=楽じゃないやつだ。

普段、自由というといいイメージしかないかもしれないが、こういう時にちょっとした自由の大変さが浮かび上がる。


ケッチ

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