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カルチャーデザイン 05 火をつなぐ

会社に対するモチベーションや愛情は、社員一人ひとり違います。その火を燃やし、少しずつ広げていくために、私たちKESIKIが実践すること。それが、「カルチャーデザイン」です。

経営陣と現場社員、古株とニューカマー、営業部と開発部。その間に温度差が生まれてしまうことはよくあります。そのときの有効な解決策のひとつが、「ミッション・ビジョン・バリュー」の策定です。

しかし、大切なのは、素敵なミッションの言葉を練り上げることではありません。そこから共感した一部のメンバーの情熱を会社全体に広げ、社員一人ひとりの行動を変容させていく。このフェーズこそ、「カルチャーデザイン」の重要な鍵なのです。

ただ、会社のミッションに共感しているメンバーは、エース級の人材であることがほとんど。いつも複数の仕事をこなしていて忙しく、ほかの施策をやる余裕はないケースも多い。

リモートワークが主流になった企業では、なかなか顔を合わせる機会も減っています。イベントやワークショップなどの機会を設けたとしても、熱が伝わっていきづらいのが現実です。

社員たち自身が自走し、局所的な情熱を社内全体に広げていくには。
リアルな場に集まることに依存せず、ミッションへの理解を広げ、一人ひとりの行動を変えていくには。

今回は、そんな「小さな火のつなげ方」を考えます。

「らしさ」を発掘し、発信する


「クリエイティブ魂に火をつける」

こちらのKESIKI noteでカルチャープロジェクトのストーリーを紹介した、ミドルベンチャー企業 Hameeのミッションです。

カルチャープロジェクト第1フェーズでは、コアメンバーを中心にミッションやステートメントを再定義し、その後、アンバサダーの社員とともにボトムアップでカルチャー浸透のための施策を生み出していきました。

「クリエイティブ魂」とは何か。誰に火をつけていきたいのか。そんな議論を起こしながら、最終的に「カルチャー年表」や「カルチャー発掘&共有の仕組み」をつくり、会社のカルチャーへの理解を深めていきました。


しかし、大切なのはここから。その小さな火を、どう会社全体に広げていくのか。どうしたら自然と火が燃え続けるチームにしていくか。

その課題を解決するため、9人の新たなアンバサダーとKESIKIがチームとなって、カルチャープロジェクト第2フェーズが始まりました。

今回、KESIKIがカルチャー醸成の手段としたのが「らしさの発掘と発信」。会社のアイデンティティ(=らしさ)をメンバー同士で議論して発掘し、らしさを体現するようなストーリーを社内、そして社外へと発信することで、「クリエイティブ魂」の火を伝播させていこうという趣旨です。

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KESIKIの編集チームは、どうしたら、人の気持ちをつかむストーリーを発信できるのかという軸で、ストーリーテリングを10のステップに分解。テーマの見つけ方から、人を動かすタイトルのつけ方まで、細かく解説していきます。毎週1.5時間で少しずつそのノウハウを学び、最終的にはHameeのオウンドメディアで発信を始めようという流れです。


本音で話し合える仕組みづくり

集まったアンバサダーは、入社したての新入社員や、育休から復帰したばかりのメンバーなど、フレッシュな人が多く、みんな前向き。会社のミッションに対してはまだ理解が浅いものの、業務以外でなにか会社に貢献したい! という思いの強い方々ばかりでした。

そのおかげで、最初からフルリモートにも関わらず、プロジェクトは一見、トントン拍子に進んでいました。しかし、1カ月ほどたったある日、メンバーのひとりからぽろっと本音がこぼれました。

「まだ自分を2割くらいしか出せてないんですよね……」

実は、メンバー同士の交流はこれまでほとんどなく、新入社員のメンバーは、他のメンバーに一度も会ったことのないという状況でした。お互いの置かれた立場や思っていることが、お互いに理解されていない状態だったのです。こうした場では、本音での発言もしづらくなってしまいます。

次の週からプロジェクトを行うときのルールを新たに設けることにしました。

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・必ずチェックインでひとこと
・zoomのチャット機能をうまく使おう
・休憩をしっかりとろう
・リアクションで伝えよう
・ちょっとしたことでも「ありがとう」を伝えよう
・思ったことは遠慮せずこの場でシェアしよう


KESIKIが心がけているのは、常にクライアント側のプロジェクトメンバーに主体を置くこと。このときも、KESIKIがルールを決めるのではなく、メンバーたち自身でルールを決めてもらいました。

ルールの運用を始めた翌週から早速、目に見えて効果が。ミーティングの始まりに、毎回、メンバーの一人が「最近、気になっていること」などをシェアするようになり、笑いが増えました。ミーティングの冒頭で明るい空気が行き渡ると、たいてい最後までその空気は流れ続けます。

チャットも機能し始めました。「●●さん、意外!」「私もやってみたい!」など、ちょっとした反応も気軽にコメントする流れができました。

プロジェクト期間の後半には、実際にオウンドメディアに掲載する記事の企画を考え、社員への取材もスタート。まとまった文章を書いた経験があまりない方々も多かったのですが、KESIKIがコツを教えながら、記事を作っていきます。

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たとえば、ストーリー骨子の考え方のコツは、「つかむ・深める・揺さぶる・落とす」という、起承転結の進化系。このフレームを使えば、共感を生むストーリーを組み立てることができます。(このストーリーテリングのコツの全容に関しては、改めてnoteでまとめてお伝えしたいと思っています)

オウンドメディアの社内取材のいいところは、普段あまり話さない人から話を聞けること。オフィスにいれば他の部署のこともなんとなく知ることができますが、リモートワーク下ではそんな機会も激減。同じ会社の人が何をしていて、何を考えているのか知ることができるだけでも、自分の仕事に対して大きな気づきを得ることができます。

メンバーそれぞれが、プロジェクトや社内インタビューを通して、ミッションやカルチャー、そしてHameeらしさについて自ら考え、アウトプットする。そのプロセス自体が熱を生んでいきます。そうして、無事プロジェクト期間に5本の記事が完成。あとはこの記事を含め、オウンドメディアからカルチャーを発信していきましょうというところでプロジェクトは終了し、広報部へバトンをわたしました。

パチパチパチ……。
と、KESIKIのプロジェクト期間はここで終了。そして。この話には続きがあるんです。


小さな火を絶やさないためのアクション

Hameeの広報部で、今回のアンバサダーにも抜擢されていた武井さん。Hameeには新卒で入社して8年働いた後、2年弱の育休期間を経て、プロジェクト参入当初には復帰したばかりでした。

ちょうど武井さんが育休に入る前、Hameeでは採用を強化していました。新しい人が毎年何十人も入社。その分会社のカルチャー濃度が薄まり、まさに空気が良くなかった時期でした。その空気のままだったら嫌だな。武井さんは、育休から復帰するかどうかも悩んだほどだったといいます。

しかし、プロジェクトに参加し、新しく入社した方や全く違う部署の方などとの会話をする中で、それぞれのカルチャーへの温度感が確実に高まっていくのを実感していました。もしかしたら、本当に空気が変わっていくかもしれない。そんな機運を感じ、武井さん自身も広報としてカルチャーの輪を広げていきたいというモチベーションに火が付きました。

プロジェクトが終了し、noteの運営は広報部にバトンパスされました。そのときに、一番意識したのは、勢いだけで始めないこと。というのも、Hameeでは、新しいことを始めるのは好きだけれど、続けることが苦手、という自覚があったから。何か始めても、いつも中途半端にフェードアウトしてしまうことが多かったのです。

武井さんはじめ広報部では、経営メンバーとも議論しながら、「どうやったらnoteでの発信を続けていけるか」を考え、デザインしていきました。

そこで改めて確認したのは、KESIKIのストーリーテリングWSでも検討した、メディアの「WHY」「WHO」「WHAT」

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最終的には、優秀な人たちの採用に繋げたいということを念頭に置きつつ、誰に届けたいかという部分では「社内」にフォーカスしました。はじめは、どうせやるならできる限り多くの人に届けたいと思っていましたが、まずは一緒に働いている人があの記事よかったね、あの記事でこう変えていこうと思った、などと噂になるようなコンテンツづくりを目指していこうという結論に落ちていきました。

とはいえ、社内にnoteが受け入れられるのか、社内のネタがすぐ尽きてしまわないか、不安ばかり。社内からも、「また新しいことはじめて、どうせ続かないんでしょ」という冷ややかな目線で見られていました。

それでも、とにかく何を言われようが、誰も見てくれなかろうが、週1本以上記事を上げていくということを決め、コンテンツづくりを進めていきました。サムネイルや記事内の画像なども、KESIKIからのメソッドも参考にしながら、デザイナーチームと連携してHameeらしいオリジナルのものを作る体制を整えました。


一部の熱が社内へ、そして社会へ

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2カ月ほどの準備期間を経て、ついにHamee 公式noteがローンチ。「○曜日はnoteの日」と決め、全社Chatworkで記事を共有していきました。

工夫したのは、その共有の仕方。執筆者やインタビューを受けた人にアナウンスしてもらったり、アンバサダーメンバーにコメントしてもらったりと、熱が伝わり始めている社内メンバーに裏で協力を仰いで巻き込んでいきました。業務的な共有ではなく、血の通った熱のある言葉で記事がシェアされる仕組みを設計したのです。

すると、シェアしたチャットに対して、社内メンバーからたくさんのコメントやスタンプが来るように。リモートワークで薄れていた雑談のネタになったり、家族とご飯を食べながらnoteの話をしているというメンバーまで。

さらには、自分も何か書きたい、と書き手側へ志願する人も増えていきました。「ブログを書いた経験もないし、何が書けるかわからないけど、素敵な取り組みだから協力したい」という共感者が、続々と出てきたのです。もともとなんとか頑張ろうと週1回を目標にしていた更新頻度も、今では週2,3のペースで出していかないとと追いつかないほど、書き手やコンテンツが溢れている状況です。

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まさにこのオウンドメディアが、社内のカルチャーアクションを自然と連鎖させていく着火装置になっていきました。

その結果は、カルチャー浸透の指標にも表れました。
社内カルチャーアンケートをとった結果、「クリエイティブ魂」に対してポジティブに向き合えている人の割合が、17%から40%へ半年で倍増。これには、経営メンバーも驚きました。

もちろん、当初、目的としてた「採用候補者」にも、その輪は広がっています。Hameeのnoteを読んで感化され入社を決めたというエピソードや、内定者から不安を払拭できたというコメントも届いています。

また、さらに嬉しい報告が。Hameeのnoteを見て、一度退職した社員が、出戻りしたというケースが3人も出てきたのです。話を聞くと、「なんだか空気が悪いなと思って一度辞めたものの、noteで改めてHameeの良さや熱量の高さに触れ、またここで働きたいと思った」ということでした。

Hamee noteは、ローンチして半年がたった今現在も、毎週2、3記事のペースで更新され続けています。会社やフェーズによって最適なストーリーテリングの方法は異なりますが、Hameeにピッタリはまったのが「noteでのオウンドメディア」という発信方法でした。

それは、単なる外部への発信ではなく、「クリエイティブ魂に火を付ける」というミッションそのものを体現するカルチャーアクションとして捉え、着実に隣の人へまたその隣の人へと、火をつけていくことができたから。

KESIKIがやったことは、メンバーたち自身が自走するための燃料を補給し、その使い方を一緒に考えたこと。結果として、使い切りの燃料ではなく、自然発電のようにサステイナブルにエネルギーが生まれていく仕組みをつくり出すサポートができました。

オフィスに集まらない自由な働き方へと向かう時代の中で、会社のカルチャーを社員全員が体感し、日々のアクションにまで巻き込んでいく。そのための近道は、大げさなオンラインイベントや強いリーダーシップではありません。メンバー自身から生まれる小さな火を、聖火リレーのように着実に周りへつないでいくこと。その行為をデザインすることなのです。


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