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【ネタバレまあまあ有】映画感想『恋は光』

恋とは、誰しもが語れるが誰しもが正しく語れないものである

シーロウ・キーター

 「ラブストーリー」の人気は凄まじい。
 聖書や古代ギリシア神話にも当然のように登場するし、数々の名著にも恋愛がテーマとして登場する。そして日本でも、『竹取物語』から『源氏物語』にはじまるように「ラブストーリー」は物語のテーマとなり、人々に愛されてきた。恋によって人々は幸せになり、悩み、悲しむことも描かれてきた。それらの歩みを「哲学的に」解釈しようとする大学生たちを描いたのがこの映画『恋は光』である。

 といっても、「哲学」という言葉から連想される堅苦しさはそこにはなく、「恋」および人間の感情の複雑さを表現するために用いられているにすぎない。「哲学的に」恋について考えようとしているやり取りをしているのは登場人物の中でも一部で、物語の肝と言えど会話の中に取り込まれており受け入れやすい。一番哲学的なところっていえば「恋をどのようなものだと捉えていらっしゃいますか」というセリフだし。

 順番が前後してしまったが、私がこの映画を見に行こうと思ったのは当日。別の予定があり外出する予定だったついで程度のものだった。映画(や原作)についての知識は馬場ふみかさんきっかけの下の動画だけ。しかも動画が出たころ(5/23)に見ただけでほぼゼロ。主要人物こそなんとなく見てとれたがキャストの並びさえ見ていなかった。

 馬場ふみかさん、最近だと『やんごとなき一族』にも出演していたが、活動の場が多く嬉しい限り。仮面ライダーの頃から知っているが現在よくやるキャラはモグラ女優3人の主演となった『深夜のダメ恋図鑑』にはじまる深夜×恋愛スタイルで、今回のような恋愛巧者から『ねぇ先生、知らないの?』のような恋愛初心者までこなす。個人的には『決してマネしないでください。』が……。この辺で。とにかくその程度の事前情報で見た映画だったが、それが却ってよかった。そう思えるほどスクリーンで見る瑞々しい気持ちに胸を打たれた作品だった。

 主要登場人物は4人。主演の神尾楓珠さんは『ナンバMG5』『17才の帝国』で見たばかりの若手俳優なんだけど役幅広い。変人中の変人で、「恋する気持ちを光として視認できる西条役。その西条の唯一の理解者で幼なじみなのが代で、西野七瀬さんが演じた。『恋なんて、本気でやってどうするの?』では既婚者ながら恋に落ちる役柄でその純愛が作品の中でもかなり見ものだったんだけど今回のはそれ以上に、かなりのハマり役で見た人からも絶賛の嵐だった。そして西条と「恋の定義」をするもう一人の変人・雲を演じたのが平祐奈さん。『まだ結婚できない男』『ヒミツのアイちゃん』みたいなコミカルなイメージがあった分、今回の変人で超絶清楚な役どころは意外性もあったが最高だった。そして前述の馬場ふみかさんが演じたのが宿木。方角の入った名前である。

 映画では同じ大学に通う4人が出会うところからストーリーが始まる。西条と北代以外はそこまで親しくもなさそうだったけどひょんな出会いをきっかけに、北代の仲介で西条と東雲が「恋の定義」のための交換日記を始めることになる。この段階でかなりの親密さだと思う(話を聞いた北代も驚いていた)が、その仲介の「お礼」として西条は北代を2人きりの釣りに誘っており、ここでこの2人もかなりの仲だと知ることになる(前後の会話で2人が幼なじみと知ることになる)。

「恋の定義」を行ううち、二人は惹かれ合う。その時に西条は東雲から「恋の光」が出ていることを確認する。この辺りまではただ幸せな話なのだが、東雲と北代がやった「パジャマパーティー」がきっかけになって北代の想いが明るみに出る。そして「恋の光」が北代からは見えていないことも。明るく気丈に振る舞う理想的なキャラクターの北代の苦しみが見えたことで大きな転換を迎えることになる。

 中盤以降は、主に西条がどちらを選ぶのか(宿木からも迫られていた)、そして「恋の光」の謎が話の中心に移っていく。その中で北代が「引用」したのが冒頭の名言である。この二つの謎が絡み合って進んでいくのだが、その中で大きな役割を果たすのがまたも「パジャマパーティー」というのも(しかも宿木もいる)のが面白い。小気味いい会話の中で「恋」を見つめ、「恋」とは何たるかを語る登場人物たち。そして前後して「恋の光」についての北代の謎が解けるとき、西条との関係にも変化が……。この辺りのシーンで涙涙。

ええ、本当にいい映画でした。

 ここからのラストはぜひ劇場で見てほしい。円盤が出たら買ってもう一度見たいし。感想としては、原作を読んでいるなどある程度知識のある人なら関係性についてもう少し別の感じ方ができたような気もする。各々の関係性は西条と東雲を除けば既にできたころから始まっていたし、北代と西条の幼なじみエピソードが若干少なかった気もしなくもない。でも宿木のラストのセリフは映画を見た人ならきっと共感できるし、あれで4人全員が救われたのではないかと思う。
 日本語字幕つきで丁寧に言葉を追いながらの上映となったがそれもプラスに働いたし、ただひたすらじっくりと「恋」について考える若さ溢れる素晴らしい作品だったと思う。


ヘッダー写真は公式サイトより引用

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