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都立高校令和元(2019)年度『防災学』授業まとめ

本稿は自宅学習措置に伴い休講となった都立高校令和元(2019)年度『防災学』最終回に代えて、履修生の皆さんへ宛てたものですが、これから防災について学びたい方、防災教育の授業計画を立てたい方等の参考にもなればと思います。

長文になるので、あまり時間がないときは目次→すべて表示する→15.授業まとめの部分だけでも見てくださいね。

はじめに~「知る」から「している」へ~

2019年10月から半年間、本当にお疲れさまでした。僕は好きなことを伝えるだけなので良いですが『聞く・見る・書く・考える・話し合う・行動する』など、様々なアクションを求められた生徒の皆さんは大変だったかと思います。

自然災害に対する「防災・減災」の知識や技術、理解や考え方は、気候変動に伴う気象災害の多発、巨大地震などが想定されるこれからの社会を生きる皆さとって欠かせません。

限られた期間の中で何を、どう伝えることが効果的なのかを2017年度(第1期)、2018年度(第2期)の経験も踏まえて整理し、今期の『防災学』では、次のようなステップを意識しながら授業を進めてきました。

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このステップを踏まえて、授業の内容を振り返ってみましょう。

授業内容の振り返り

それぞれの授業で大事なポイントをまとめておきました。レジュメ及びワークシートは欠席した分も配布していますが、手元にない方は、担当の先生に申し出るか 仕事依頼note からご連絡ください。

1.オリエンテーション

授業全体の進め方や、防災の考え方についてご紹介しました。また、最初のワークシートでは「自分の今の生活で、大切なもの」を書いてもらいましたね。最終回では、その記述を振り返ってもらう予定でした。

防災学の目的は「大切なものが、守れるようになること」です。自分や家族の命だけでなく、スマホでも趣味でも構いません。「自分にとっての防災とは何か」を探し、見つけ、守り続けて欲しいと思います。

2~3.自然災害の理解

地震・津波、風水害、噴火など自然災害についての基礎知識についてワークシートを用いながら紹介しました。「◯◯地震」と「◯◯震災」の違いを、忘れないでください。

▶ 防災教育に使える副教材・副読本ポータル|気象庁

あまりにも理不尽といえる自然災害(ウィルス等による災害的な事象も含めて…)を防ぐことは困難ですが、その結果として起こる社会・経済的な被害を小さくしていくことはできるはずです。私たちが、これからも本当にそうしたいと願い、行動し続けることができれば。

4~5.東京、個人・家庭の防災対策

火災対策や水型消火器を使った実技訓練、家庭内DIG(Disaster imagination Game)で自宅の危険箇所などを探してもらいました。備蓄品についての紹介などもしましたね。感染症等の対策にも役立ちますので、配布したリストを元に、しっかりと備蓄をし続けてください。

▶ 防災ブック「東京防災」|東京都防災ホームページ

6.映像学習「震災の教訓」

阪神・淡路大震災の記録映像を見て、感想を書いてもらいました。震災のことを忘れてしまうのは仕方がないことですが、その教訓、被災された方々や支援に関わった人たちの想いは、つないでいって欲しいと思います。

7~9.帰宅困難・災害情報・避難所について

首都直下地震後の帰宅困難対策や、災害情報とコミュニケーションのあり方、避難所運営などについて学びました。NHKの映像なども紹介しましたが、リアルすぎて気分が悪くなってしまった、という声もありました。配慮が至らず、申し訳ありません。

災害時に起きる目の前の現実は、変えることのできない事実です。私たちにできることは、その事実をどう受け止め、対応していくのかということです。帰宅時の注意事項やデマ対策、避難所の仕組みを知ることが、いざというときの対応につながります。

10.応急救助・応急手当活動

約35kgの訓練用人形を用いての応急救助・搬送や心肺蘇生法及びAEDの訓練も行いました。35kgといえば小学生くらいの重さですが、それでもかなりの重量であったかと思います。人を助けるには、正しい知識と技術、そして最低限の体力が必要です。「祈っても何も起こらず、願っても何も変わらず、ただ行動だけが結果につながる」それが災害対応の現実、というのが経験則です。体験を通じて、厳しい状況にあっても、適切かつ迅速な行動(他の人と協力することなども含めて)がとれる人になってください。

11.災害ボランティアと自治体・社協の取り組み

災害ボランティアセンターの仕組みや、安全衛生の大切さについて紹介しました。ボランティアとして活動する際は、ぜひ思い出してください。また、自治体や社会福祉協議会(社協)の活動も知っておくと、イザというときに役立ちます。

▶ 全社協 被災地支援・災害ボランティア情報

12~13.避難生活と災害時の食事

避難生活で役立つ、応急トイレやプライバシースペースの作り方、様々な非常食などについて学びました。アウトドアグッズがあれば便利ですが、ダンボールやブルーシート、新聞紙など身近なものでできる工夫がたくさんあります。食事の種類も様々なので「美味しい」と思えるものを、しっかりと用意しておいてください。いろいろなアレンジも大切な工夫ですね。
(以下のブログ記事も、参考にしてください)

14.映像「災害時要配慮者支援」・ペット支援

DVDで東日本大震災当時の障害者の方の状況を学んでもらいました。また、環境省のテキストを使ってペット支援について紹介しました。2020年3月2日(月)時点では、別件で代講をお願いしたため皆さんの感想をまだ読めていませんが、事後にコメントしたいと思います。

15.授業まとめ~今、私にできること~

最後の授業では「自分の生活にとって大切なもの」を思い出し、守るためにどんな行動をとるのか、授業の内容を踏まえて考えてもらう予定でした。ここまでたどり着く皆さんなら、きっと何らかの形で行動してくれるだろうと信じています。

警視庁警備部災害対策課による映像を用いて、メッセージに代えます。2017年から、同課の方々と大学生向けの宿泊訓練を実施していて、2020年度も実施予定(感染拡大がなければ…)で日程も決まっています。参加希望の人は、お気軽にご連絡ください。

映像は学生ボランティア向けに作成されたものですが、流れる歌も含めて視聴してください。

「だからボランティアをしよう」というつもりはありません。授業中にもお話しましたが、防災も災害ボランティアも、する・しないを選ぶのは私たちひとりひとりです。「何もしない」という選択もあります。

ただひとつ、伝えたいのは「後悔をしないように行動し、生きていこう」ということです。大切な何か・誰かを失った経験、そして被災地で被災された方々の言葉から学んだのは、亡くした人や失われた何かは、決して元通りにはならないということです。

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僕は講師としてではなく、一人の人間として、皆さんのこれからの人生が幸せなものであることを願っています。そして、その幸せを守っていくためには、必要な知識・理解・備え、行動が必要であることを知っています。

限られた時間ではありますが、できる限りのことは伝えました。これからも、何か防災で分からないこと、被災して困るようなことがあれば、気軽に連絡してください。いつでも、力になります。

改めて、半年間おつかれさまでした。

授業最終回に代えて。
2020年3月3日(火)
令和元年度「防災学」講師 宮﨑賢哉

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