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防災や災害支援を仕事にしたい学生さんへ【ワークシート付き】

2016年3月の記事公開後、想像以上にアクセスが伸びており、関心を持って見ていただいている学生さん等が多いことに驚きました。

本記事では、僕自身が現職に就くにあたり在学中に考えたことを中心に、いくつかのポイントとワークシートにまとめてご紹介します。


「防災を仕事にする」ことは可能です

大学で災害救援ボランティア講座を担当していることもあり、毎年のように学生さんや大学教職員の方から相談を受けます。

「防災」に関わる仕事がしたい、就職を希望したい。でも、探してもなかなか自分が考えているような仕事や会社が見つからない。どうしたらいいか…

そんな時にお伝えしている内容をまとめました。

結論から言えば「防災や災害支援を仕事にする」ことは可能です。ただし、いくつか知っておくべきポイントがあります。活動している人の姿を見て、憧れのような気持ちを抱くこともあるかと思いますが、仕事と活動は違うということも知っておかなければなりません。

防災に取り組む姿勢を整理するためのワークシートも公開しました。自分の動機や意思をうまく整理できていない場合、できていたとしても再確認したい場合に使ってみてください。

後述もしますがうまくまとめられない、答えが出せないという時も気にする必要はありません。誰かにプレゼンするためのシートではなく、いわば自問自答のためのシートです。「今は答えを出せなくても、考え続けていく」ことが大切です。

悩んだり、迷ったりしたときは…

本記事を読んで、ワークシートも書いてみて、それでも進路に悩んだり、迷うようであれば 仕事依頼note からお気軽にご相談ください。

必要であれば要望を聞いて、関係しそうな団体や個人をご紹介します。公益法人・NPO業界に関心があれば、関連法人でのインターンやアルバイトも受け付けています。

動機は具体的な言葉にして、整理する

「なぜ防災を仕事にしたいのか」を考えてみます。そして「その仕事をすることで、何をどうしたいのか、どう社会に貢献するのか」といったことを具体的な言葉にして、整理します。

命を守りたいのか、被害を少しでも減らしたいのか、被災された方の生活再建や被災地の復興を助けたいのか…一言で防災といっても関わり方は様々です。どのような関わり方をするかを整理するためにも自分の描く「防災や災害復興支援のあり方」を考えてみましょう。

会社・団体のホームページを調べてみる

会社・団体のホームページを調べるときは

(1)ミッションやビジョン、事業目的は何か
(2)具体的にどんな活動をしているか
(3)役員はどんな人たちか
(4)財務諸表

あたりはチェックしてください。ただし、団体の規模や活動によっては十分な情報が出ていない場合もありますし、採用情報を公開していない場合もあります。

イメージに近い活動に参加し、人脈をつくる

会社・団体のホームページ等で情報を得たら、活動や事業に積極的に関わり、人脈をたくさんつくりましょう。

防災を仕事にする一番の近道は「実際に防災を仕事にしている人(できれば自分のイメージに近い人や組織)と一緒に活動すること」です。たとえその組織が人を募集しておらず予定がなかったとしても、どんどん関わりましょう。

僕自身も所属法人の人事採用を担当していますが「募集して来る人」だけではなく「普段から関わりがあり、人柄や知識・経験や能力を分かっている人」から人選したいと思うのは、どの組織も同じだと思います。

「人脈作りなんて古臭い、実力さえあれば何とかなる」と思うかもしれませんし、そうできる方もいるとは思います。どんな業界にもあるように、防災にもある種の「派閥」とまではいきませんが、大まかな「系統」みたいなものが生まれています。

自分に合った「系統」の人とうまく知り合えれば良いのですが、異なる「系統」の人たちとの活動は、どこかで「あれ、なんか違うな」と感じることがあるでしょう。それも大事な経験かもしれませんが、時間は貴重ですから、ひとまず関心のある活動に参加してみることをオススメします。

防災に関する職種の4分類

そうはいっても活動していれば必ず希望する団体や組織で仕事ができるとは限りません。その組織で人員募集するまでアルバイトや非正規雇用でつなぐ、というくらいの覚悟があればいずれ道も開かれるでしょうが、もう少し現実的なラインで考えてみましょう。防災に関する仕事は大きく分けて4つの職種があります。

1.行政・公務系

警察・消防・自衛隊等、官公庁、独立行政法人、教員、公立施設職員など公益性の高い職種です。公益性の高さはそのまま防災につながりますので、直接的な業務ではなくとも何らかの形で関わる可能性が高くなります。

専門の部署や事業があればそこを狙うのもありでしょうし、そうでなくても防災に対する熱意、意思をしっかりと伝えていけば、関連する仕事を任される可能性も充分にあります。比較的安定して防災に関わることができる職種と言えるでしょう。

2.専門・研究系

各種士業や医療・福祉、あるいは大学や研究機関などの専門性の高い職種です。もともと、在学中からそうした職種や業界を希望していた、ということであれば比較的スムーズに探すことができるかもしれません。

これらの職種もそれぞれの専門性を活かして災害支援や防災啓発に関わることがあり、通常業務のなかで防災に関わることもあるでしょう。専門的な学習・経験は必要となりますが、専門家としての知見は必ず防災に活きてきます。

事務・技術・サービス系

一見すると防災に関わりがないように思えますが、それぞれ災害対策や危機管理に関わる部分が少なからずあります。サービス業ではお客様の安心について考えますし、技術職ではその技術を防災に活用する、といったことも考えられます。

どんな仕事であっても、一定の総務経理・事務の能力が求められますので、在学中に最低限のパソコンスキルや総務法務・経理の知識を持っておくと必ず役立ちます。

仕事は仕事として割りきって、防災に関してはボランティア的に活動を続けつつ仕事はそこそこにこなし、チャンスを待つ、というのもひとつの考え方です。

NPO・NGO・民間団体など非営利系

災害救援、復興支援、ボランティア、防災対策、地域活動などを中心としたNPOやNGOといった非営利系の職種です。会費や寄付金、資産運用などで財源を得ているところも多く、市民向けに幅広く活動を展開するといったことが可能です。

恐らく「防災を仕事にしたい」と思う学生さんの多くがこの業種・業界をイメージされるのではないかな、と思います。ただ、人材募集などは非公開もしくはそれに近い形で行われることが多く、関係者間で人材が行き来することも少なくありません。気になる組織や団体があれば密着して、情報を逃さないようにしましょう。

また、この職種は「社会貢献で事業を行う」ことになります。下記の本は大変参考になりますので読んでおくことをオススメします。社会貢献に関する理解を深め、業務に活きるヒントがたくさんあります。

防災はなくならないので、視野は広く

文字通りですが、どんなに社会や時代が変わっても、防災は常に社会に必要とされ続けます。つまり「いまこの瞬間、この時代」に仕事として関われなくても、想いを、信念を持ち続ければいつでも関われるチャンスがあるのだ、と考えることです。

必要なのは、まず焦らないこと。結果をすぐに求めないこと。信念を持ち続け、決して諦めないこと。そのためにも1.でお伝えしたような「なぜ、防災なのか」を自分の中で整理し、ブレない信念として持ち続けておくことが大切な作業になります。

ワークシートのダウンロード

長期的に取り組むためには自分の考えや意見を整理する機会が必要である、ということも含めて、4つのポイントはご理解いただけたでしょうか。

Microsoft Word形式とPDF形式でワークシートがダウンロードできますので、ワークシートに記載された5つの質問と、関連する質問について考えてみてください。

ワークシートに回答し終えたとき、自分と防災の関わり方を、客観的に、冷静に捉えられるようになっていることと思います。ご家族やお友だち、大学の先生やキャリアセンターの方々など、いろいろな方と話をしながら、動機や「やりたいこと」を考えてみてください。

もちろん、これに答えられないからダメとか、面接で聞かれるとかではありません。ここまで難しく考える必要はないかもしれません。ただ、皆さんと同じように在学中に防災・災害支援を志した者として、後悔するようなことはあって欲しくない、という思いがあります。

クラウドファウンディングや支援・助成が受けられるプロジェクトなど、自ら「防災に関わる仕事・活動のチャンスを自ら創り出す」という機会も、僕が学生のころに比べて格段に増えています。

いつの日か、皆さんと一緒に仕事ができることを楽しみにしています。

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