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神社学的★今に伝わる天岩戸神話

僕らが住まうこの国には、自然の摂理そのものを神とみたて命あるものすべてに神宿る随神道(かんながらの道)が続いている。その命はすべて、地球という星と太陽や月、様々な天体とのバランスにより奇跡的に生まれ、その命を継承していく使命をもっている。また、古代に生きた僕らの先輩は命をもたらすその様を神々のお話として、現代に生きる僕らにも繋がる命の連鎖を日本神話として残してくれた。

日本において最も古い書物とされる古事記(AD712)や日本書紀(AD720)には、この星や国の誕生譚が記されているが、その中でもひときわ有名な神話といえば、「天岩戸開き」ではないだろうか?

≪天岩戸開き神話:概略≫
 神々の世界において、問題児であった素戔嗚尊が根の国(地上の国)へ降臨する前に姉である天照大神へ挨拶をしようと高天原(神々の世界)へ向かうが、その想いは姉には伝わらず、天照大神はまた素戔嗚尊がここで悪さをするのではないかと疑う。その疑いをはらすために両者の間で“誓約(ウケイ)”をおこない、素戔嗚尊は身の潔白を証明し高天原への入場を許可されるが、その後、素戔嗚尊は姉との誓いをも反故とし神々の世界・高天原で乱暴狼藉を繰り返した。その所業に怒り怖れ悲しみを覚えた天照大神は、天岩戸へ御隠れになってしまう。太陽の神様が岩戸の中に隠れてしまったことにより、地上には暖かい陽射しが降り注ぐことなく、漆黒の闇に包まれてしまった。それには困った他の神々は様々な計略を用いて、どうにかして天照大神を岩戸からだすことに挑戦をする(その際の計略のひとつひとつは現代の神道においてもご神事として継承され、今もなお息づく儀式となっている)。しかし何をおこなってもなかなか天照大神は天岩戸から出てくる気配がなく、その他の神々が困り果てたときひと柱の女性神が岩戸の前にたち、着ている衣服を脱ぎすて一心不乱に踊りだした。これには周りの神々も驚き、すぐに称賛の声を上げ、天岩戸の中にいる天照大神の興味を引くことに成功した。「太陽の神である私自身(天照大神)が岩戸の中に隠れ、世の中は暗闇になっているはずなのに、この大騒ぎはいったいどういうことなのか?」と外の様子が気になった天照大神はほんの少し岩戸を開けてのぞいてみることにした。その瞬間を外で待っていたのが騒いでいるはずの神々で、わずかに開いた岩戸から思兼命が天照大神を外に引っ張り出し、手力男命が岩戸を遠くに放り投げ、太玉命が岩戸へ結界の意味を成す注連縄を張ることで、天照大神は二度と天岩戸へ隠れることができなくなり、地上には太陽の光が戻り、世の中は再び明るく平和な時代に戻ったという・・・

以上で紹介した神話の最終部分に表現された“結界としての注連縄”は、現代も全国津々浦々の神社にて継承されている。つまり、注連縄の源流は“天岩戸開き”神話にあり、この国の原初の注連縄とは、神代(神々の世界)に張られた天岩戸への注連縄であったといえる。

その後、どれほどの時間がたったのかははっきりとしないが、古事記や日本書紀に記された神々の世界の出来事をも歴史とするならば、天照大神の孫である瓊瓊杵尊の曾孫・カムヤマトイワレヒコが初代天皇陛下となったBC660よりも5代前以前の物語と受け取れる。1代をざっと100年(神代の神々の寿命は今と比べると驚くほどに長く設定されている)としても、BC660よりもさらに500年以上前の話であり、今から3000年以上前のお話となってしまう。果たして原初の注連縄が3000年以上前の神々の世界のお話であったかどうかは、日本の歴史をどのように研究するかによって変わってくるのは仕方ないが、少なくとも、その神話の舞台として長い歴史を重ね、人々の暮らしとともに祈り捧げられてきた宮崎県高千穂町の天岩戸神社においては、3000年以上前の神話時代に張られた結界としての注連縄以降、それを張りなおすどころか、何人(なんぴと)も足を踏み入れることのできないご神域として天岩戸を守り続けてきた事実がある。
つまり、天岩戸神社はご神体である“天岩戸”とともに、日本神話“天岩戸開き”を守り続けてきたのであり、日本人の心の中に存在する神々への想いを大事に守り続けてきたことの証と言えるのではないだろうか。

天岩戸神話が伝えていること。

研究者の数と同じくらい、その理解は多岐にわたるのかもしれない。岩戸に御隠れになった天照大神を外の世界に戻すために神々は様々なことを試みるが、何をやっても岩戸はびくともしない。最後の最後に天宇受売命(あめのうずめのみこと)が登場し、そこに集まった神々の大きく豊かな笑い声を誘い、その笑い声につられた天照大神が岩戸をそっと開けてしまうことより、岩戸が開く算段となる。その結果、世界に光が戻ってきたのは、皆さんの知るところだと思う。様々な理解はあれど、笑い声が岩戸開きのきっかけとなっている。

笑う門には福来る・・・古来より日本人の精神性を表現することわざがあるが、笑顔が及ぼす影響は、僕らが想像するよりももっともっと強烈なのかもしれない。日本で一番有名とも思える神話「天岩戸神話」において、「笑」が及ぼすエネルギーは、他の何よりも効果的であったことを考えると、神話においてはこの国やこの国に住まう多くの方へ、ことわざとしては各地各地の個人の暮らしにおいて、いつも穏やかに笑顔でいることの大切さを伝えてきたのかもしれない。

「天岩戸神話」を伝え守り続けてきた天岩戸神社は、昨今の混乱や毎年のように訪れる自然災害など、荒ぶる神々の想いを鎮めるために、皇紀2680年12月18日に、神代以来はじめてご神体 ”天岩戸“ の注連縄張替御神事を催行した。催行に至るまでの関係者のご苦労は想像を絶するものだが、何より第24代を襲名した佐藤宮司の”想い“が具現化した瞬間であった。
当日を迎え、滞りなく御神事を催行した宮司の笑顔はまさに、天岩戸開きそのもののように感じた。

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©天岩戸神社

最後にお知らせを少々

新しく生まれた御神事は、今後も未来に向けて継承されていきます。
天岩戸神社と神社学はともに、日本の神話を子々孫々に伝え続けていくために、1年を通し季節ごとに神話を学ぶ講座を共同開催していく予定です。

その名も・・・「あまのいわと学校」

四季を通して神話を学び、毎年12月に開催される天岩戸注連縄張替御神事への参列を卒業式に見立てて参ります。通年プログラムにご参加いただいた方々には、卒業と同時に、自らの口で「天岩戸神話」を語りつなげていただく“あまのいわと語り部”となっていただき、古来より紡がれた神々の世界の物語を、ご家族やお仲間に伝えていっていただけることを目的としています。詳細は今年の初夏にお知らせいたします。神社学とともに、神話の世界へダイブしてみませんか?

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