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コロナの状況下でのグリーフケア・サポートとは?(開け!社会の窓!Season2第一回レポート)

社会の窓でゲスト出演してくれたてるみんがクラウドファンディングに挑戦中!ということで応援の意味を込めて社会の窓初の試み、イベントを記事にしてみました!

昨年の4月から、ハバタク株式会社代表の小原祥嵩くんと「開け!社会の窓!」というウェビナーを不定期開催しています。

「開け!社会の窓!」とは?

「開け!社会の窓」は10年近くあるいはそれ以上にわたって、国境を越えて様々な活動をやってきたSALASUSU代表青木健太(Kenta)とハバタク代表小原祥嵩(Yoshi)が、世界各地に飛び込み様々なチャレンジを続けている方々と共に、彼・彼女らが日々の暮らしや個人のストーリーを共有するウェビナー企画です。

会話の内容は随時グラフィックレコーディングをしてもらいながら進めています。

現在はSeason3に突入し、練習会も含めると10回以上開催。

Yoshiくんと二人で話すときもあれば、ゲストをお招きすることもあるのですが、イベント内容が毎回面白く学びも多いので、noteでもシェアしようと思います。

ゲスト紹介

一般社団法人「リヴオン」代表の尾角光美(おかく・てるみ)さん。通称てるみん。

「グリーフサポートが当たり前にある社会の実現」を団体のビジョンとし、大切な存在との死別や、さまざまな喪失を生きる人たちと共にある「グリーフケア・サポート」を専門としている。

大切な人をなくした若者の居場所づくりを行う「つどいば」、遺族やグリーフサポートを学びたい人たちのための講座や、僧侶や医療従事者など死の臨床現場に関わる人たちへの教育、また、自殺予防教育とグリーフの学びを柱として、小学校〜大学まで「いのちの授業」の開催、出版事業など多岐にわたって事業展開をしている。

代表を行う傍ら、2016年からはイギリスの大学院に進学し「国際比較社会政策学」の修士号を取得。現在はバース大学大学院 博士課程で、若者の死別による社会経済的課題を研究している。

2020年2月22日までクラウドファンディングに挑戦中。

死別だけでない、あらゆる喪失に向き合う「グリーフケア」

Kenta:自己紹介をお願いします。

てるみん:尾角光美です。覚えづらい名前なので「てるみん」と覚えていただけると嬉しいです。

一般社団法人のリヴオンを立ち上げたのは、今から約10年前。母を自殺で亡くし、グリーフケア・サポートに出会ったことがきっかけです。

グリーフケアというと、「遺族の立ち直りや悲しみを乗り越えるための支援を行なっている」と思われることも多いですが、そういうわけではありません。

喪失を通してその人が、亡き人との新たな関係性を育み、喪失への意味や新たな気づきを一緒に紡ぐ時間が生まれることを大事にしています。グリーフケアは「するもの」「されるもの」でなく「人と人の間に立ち上がるもの」だと考えています。

一方で、グリーフサポートは「するもの」として、情報提供であったり、場を開いたり、時には手続きや困っていることの伴走支援などもあると思います。リヴオンではより幅広い「グリーフサポート」という視点を大事にしています。

団体名リヴオン”live on”の意味は生き続ける、という意味を持ちます。

亡くなったいのちもまた、生き続けさせることができます。わたしたちが、その人のことを語り、共有し続けることで、その人のいのちを感じることはできるのではないでしょうか。

グリーフサポートが当たり前にあるイギリスで学ぶ社会政策学

Kenta:どういう経緯でイギリスの大学院への進学を決めましたか?

てるみん:グリーフサポートをどうしたら社会の中で当たり前にできるかを考えて、すでに、先行しているイギリスでの研究を決めました。

例えば、イギリスやアメリカでは、医療従事者が死亡診断書と一緒に、地域のグリーフサポートの情報を手渡したりします。行政も情報の発信を遺族向けにウェブサイト上でページをつくったり、郵便番号で地元のサポートを見つけられるサービスなども用意をしています。

私自身、遺族へのサポートや僧侶への教育、学校での授業を行うなかで、行政も巻き込んでアプローチしていきたいと考えていました。

そんなときに、海外大学院進学への奨学金を受けられる「日本財団 国際フェローシップ」の5期生としてフェローに選ばれました。そこから、どこに進学しようか悩んでいて。

イギリスのバース大学教授で死生学者であるトニー・ウォルター教授に、そういった悩みを言ったら「あなたがやっていきたいことは『社会政策学』という分野だよ」とアドバイスをいただいたんです。

「社会政策学の美は、『一人ひとりの個人の幸せと、社会(法律などの仕組みやグローバリゼーション)との往来の中にある』」と言われて、本当に感動してしまって...!

さまざまな分野において社会政策への取り組みが活発なイギリスへの進学を決めました。

ただ、今は新型コロナウイルスの影響で、指導教官には「1年は帰って来ないほうがいい」と言われていて、本当に大変(笑)。

コロナの影響などによる「あいまいな喪失」へのグリーフサポート

Yoshi:コロナの影響で、患者さんにお見舞いにいけないまま別れてしまう例など、そういったこと対してはどのようなグリーフサポートがありますか?

てるみん:まずお別れをする前のサポートとして、イギリスの病院では、iPadなどタブレットの画面を通して家族と食事ができるようにするなど、コミュニケーションへの工夫がされています。直接会うことができないなかで、お互いが近くにいるように感じる時間や、最期にやりとりできる時間をいかにサポートするかが大切です。

新型コロナでの死別や震災など、ご遺体が見られずに、最期のお別れを十分にできず、亡くなった実感が持てずにいることや、会うことやお見舞いをできないままコロナ下で死別を経験した人たちの経験は「あいまいな喪失」と呼ばるものになります。

当時は実感が持てなかったけど、時間が経ってから心身の不調があらわれることもあって。「グリーフは人の指紋ぐらい人によって異なる」と言われるほどに影響の受け方は異なるため、「あらゆる反応はおかしなことではなくて、正常で自然な反応です(Grief is normal.)」ということを伝えています。

現在は、コロナの影響による喪失への向き合い方とセルフケアをまとめた冊子『コロナ下で死別を経験したあなたへ』を作成するためにクラウドファンディングに挑戦しています。

大切な人を亡くされたご遺族や病院、ご遺族に関わる関連業事業者の方々(宗教者、葬儀社など)に必要な知識を届けるための取り組みです。

さらに、ご支援いただいた方には、ミニリーフレット『大切な人をなくしたとき どうすればいいだろう?』と完成した冊子をお送りします。喪失体験があったときに、自分の喪失を大事にする手がかりが書かれているので、今必要がなくても、何かあったときに、自分や誰かのために役に立つかもしれません。

他者や環境を理解するために欠かせない自分へのまなざし

てるみん:「ケア」という言葉を聞くと、人の話を聞いてあげよう、ケアしてあげなきゃ、といった「人にしてあげるもの」のようなイメージを持っている人もいると思うんですよね。

でも、教育・研修事業では「グリーフケアを学ぶなら、まずは自分の土台づくりであるセルフケアが必要」ということをはじめに伝えています。自分自身をこれまでどう扱っていたのか、どう扱えばいいのかを理解することが、他者を理解することへと地続きになっている。

グリーフケアの分野にかかわらず、人と接する仕事をしているうえで「自分とどう接するか」に向き合うのは、他者の接し方を考えるうえで大切ですね。

Kenta:特に人を支援する仕事だと、ケアやサポートを通して、「相手は助けられるべき存在で、自分は価値があることをしている」と活動の意味を確認したがる傾向もあると思うんです。

ただその思いを持ちすぎると、中には自分個人の悲しみを癒すためや自分の価値を見出すためだけに行なっている場合もある。それは、相手に対して「同情」はしているけど「共感」はしていない。FORではなくWITHの活動にしないと、一人の人として、相手と理解し合うことはできないと思っています。

まずは自分の悲しみや傷に向き合い、活動を通して他者の傷にどう向き合うかを考えるのは重要ですね。

Yoshi:二人の話を受けて、社会課題の捉え方にも通ずると思っています。問題を「自分の外において解決すべきもの・変えられるもの」と捉えられることが多いかもしれないけれど、自分も共に変容する姿勢を持ち続ける必要がある。

環境や人とどう距離をとるのか、接し方を考えるには、まず自分がどこにいるのか、自身の状況を知る必要がある。その感覚を持っておくことが必要なのかなと思います。

てるみん:社会課題や困難を自分の外に置いている方が、表面上は楽なのだと思います。

コロナウイルスについても、感染者に対して「なんか怖い、近づきたくない」と避けることは簡単ですよね。ただその渦中に自分が入ったときに、これまでやってきたことが自分に戻ってきて、孤立を招きかねない。

「コロナウイルスは怖いけど、もしなったときはできる範囲で助け合おう」と自分ごとにすることは、最初はしんどいかもしれないけれど最終的には外せないことですよね。

スキルの提供だけでなく、コミュニティの在り方も伝える教育

Yoshi:てるみんが今後行なっていたいことは何ですか?

てるみん:教育事業でさまざまな対象者に向けた学校をつくりたい。遺族も学びにこられるし、すでに現場にいる人も学べる学校。医療者や僧侶、すでに死別の臨床現場にいる人たちに向けたプロフェッショナル・ディベロップメントにも取り組みたいです。

遺族の方や医療者が共に机を並べてグリーフケアを学べるような、支援・非支援の関係を超えた「学びあい」「みんなが先生、みんなが生徒」ということを大事にしたいと思っています。

学校という建物はないですが、すでに実際の取り組みとしては、僧侶の教育カリキュラムづくり、講師養成プログラムを浄土真宗大谷派の教育部さんと一緒におこなっています。その積み重ねが学校づくりへの一歩なのかなと思います。

Kenta:これまでの話から、てるみんは教育を一つの「コンテンツ」ではなく、一つの「在り方」として、場の作りかたに焦点を当てていると感じます。

SALASUSUでも、カンボジアの農村に住む女性たちにファシリテーター養成を行なっていて。ライフスキルを多くの人に届けたいと思ったときに、自分の団体だけでは数も時間も足りない。研修自体も短期間で終わってしまうから、研修内容だけでスキルを身につけていくことよりも、コミュニティの在り方を伝えることや、つながりの場が続いていくことを目指しています。

てるみん:リヴオンでのファシリテーション養成講座は少人数で長期間で行なっていて、間に合わないなと思います。だからといって、スピードや量重視で進めて、学びの質を落としていいものではないので……。

Yoshiさんはこの10年間教育業界に携わって、どのような変化がありましたか?

Yoshi:ハバタクは、外部の立場として学校に学びのデザインを働きかけています。

ここ10年の変化として感じるのは、先生や保護者の方など、学校の内側にいる協力者を見つけることで繋がっているという点ですね。少しずつ仲間が増えている段階です。

てるみん:リヴオンでも「この組織にとってどのような仲間が増えたのか、社会にどのような影響を与えているか」を組織内でどれだけ共有できるのかも大事だと思っています。

普段は事業を回すので大変なときや、事業ごとの活動の共有が足りないときもあるので、自分たちが目標に向けてどの段階にいるのか、また、今の「リヴオン」の声に耳を傾けたり、つくりたい未来の社会や情景を描きながらみんなで進みたいです。

普段は開けないところを話してみようと思える「社会の窓」

Kenta:最後にてるみんに社会の窓の感想を聞きましょう。

てるみん:自分や活動の話を聞いてくれる場があることが、まさにセルフケアにつながると思いました。

自分に興味を持ってくれる他者がいるから、自分も自分に興味を持つことができるような。日常的にみんながこういった場所で対話を繰り返すことができればいいんだろうなと思いました。

あとグラレコをしてもらえるのがすごく嬉しい!

Yoshi:グラレコは毎回僕らも嬉しいんですよね(笑)。話したことを受け止めてもらえているんだ、て伝わるんです。

Kenta:社会の窓Season1でも一番人気だったのはグラレコでしたからね。

てるみん:普段は話さないようなこともここでは話してみようかなと思える。まさに社会の窓を少し開けるような、そんな気持ちになりました。ありがとうございます!

Kenta&Yoshi:ありがとうございました!

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(編集:糸賀)

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