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場としての価値

 誰かにとってくだらないと思う場所は、他の誰かにとってはかけがえのない場所。

 どうも、ふじみスポーツクラブの上杉健太(@kenta_u2)です。埼玉県富士見市で、誰もがいつまでも、自分に合ったスポーツを続けられる地域社会の実現を目指して、総合型地域スポーツクラブの運営をしています。

 今日は、『場としての価値』というテーマでお話したいと思います。

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 スポーツをどう捉えるかは実に様々です。ただし、すごく大きく分けるとスポーツの捉え方は2つだと思っています。1つは、『役立つもの』。もう1つは、『それ自体を楽しむもの』です。

 スポーツのことを役立つものとして捉えている例は、「受験の内申点の為」とか、「人間として成長する為」、「体力をつける為」、「健康の為」というやつですね。何らかの目的があり、そこに到達する為にスポーツが役に立つという見方です。

 私なんかはスポーツを広める活動を仕事としているわけですから、スポーツは生活をするのに役立っているとも言えます。これがスポーツの『役立つもの』という側面です。

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 一方で、私たちは特に何の目的もなくスポーツをすることだってたくさんあります。受験なんて考えていなくても、なりたい人間像なんて描いてなくても、体力や健康で課題を持っていなくても、スポーツをしている人たちは大勢います。

 その人たちは、スポーツ自体を楽しんでいます。スポーツをすることで将来がどう変わるとか、生活がどう変わるかとか、そういうことを考えているわけではなく、スポーツをしているその瞬間をただただ楽しんでいる。「なぜスポーツをするのですか?」と聞けばその人たちは、「楽しいから」と答えるでしょう。

(※スポーツの本質は遊び)

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 さて、総合型地域スポーツクラブはどちらの価値を世間に伝えていくべきなのでしょうか?「スポーツをするとこんないいことがありますよ~」と役立ち感をアピールするのか。「楽しいよ~」と楽しさをアピールするのか。

 私の答えは、「どっちも言ったらいいじゃない」です。それが総合型地域スポーツクラブというものだと思っています。

 「スポーツは楽しむものだ!手段にするべきじゃない!」と言う人がいたとしたら、別にそれはそれでリスペクトしていいと思うし、「ただ楽しむだけじゃ意味がないじゃないか!」と言う人がいたとしたら、それもそれでリスペクトしてもいいと思います。

 スポーツには役立ちの面も楽しみの面も確実に存在していて、総合型地域スポーツクラブがどちらかにスタンスを決める必要なんてあるのでしょうか?多様性を認めるのが総合型地域スポーツクラブの素晴らしい面だったのではないのでしょうか?

 一方の価値観は認めるけど、一方の価値観は認めない?そんなのは多様性でもなんでもないです。

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 サードプレイスという言葉がありますよね。第三の場所。多くの人が居場所としている『家庭』が第一の場所。そして、『学校』や『会社』など、日常的に通って多くの時間を過ごしている所が第二の場所。ここまでは、やや義務的な臭いがする場ですね。そういう義務的な臭いがしない場所が人間には必要だよね、という課題意識から、『サードプレイス』という言葉が認識されるようになっていきました。サードプレイスは人によって様々ですが、その選択肢の一つに地域スポーツクラブがあります。

 家庭でも学校でも会社でもない、第三の場所があることで、救われる人は大勢いるんですね。それは私も特に会社員時代には実感していました。土日のクラブ活動がどれほど楽しみだったか。そこに役立ち感なんて一切不要でした。ただクラブがあればいい。ただそこにいればいい。当時の私はフットサルやサッカーをやっていましたが、別にフットサル・サッカーをやっていなくてもよかったくらいです。ただいつもの仲間と集まり、同じ時間を過ごしていれば、それでよかった。これがサードプレイスの価値だと思っています。それで日常を頑張れるんです。

 これは、総合型地域スポーツクラブをマネジメントする人が絶対に認識しておくべき価値だと思います。クラブに入会し、定期的に参加している人に、「なんか目標持ってるの?」「そんなに頑張ってクラブに来て何か意味あるの?」「そこにいるだけで何もしてないじゃん」なんて、絶対に言ってはいけないんです。これは、絶対に、です。

 多様性。一人一人が、一人一人の想いや行動、考え方を大切にできる環境。総合型地域スポーツクラブはそれを保障しなければならないのではないでしょうか。「目標を持とう」。その言葉が間違っているとは1ミリも思いません。目標を持つことで輝く人生もあるでしょう。しかし、サードプレイスである総合型地域スポーツクラブで目標を持つ必然性はどれくらいですか?どうかそこをしっかり考えてもらいたい。

 「目標を持とうよ!」と言った相手は、本当に目標を持っていないのですか?私たちが見ているのは、あくまでもサードプレイスにいる人々です。その人たちには、第一の場があり、第二の場があります。そこでも彼らが目標を持っていないとでもお思いですか?学校や塾で受験の為に猛勉強をして、息抜きでクラブに来ている子はいませんか?会社で高いノルマ達成の為に汗水たらして働き、リフレッシュの為にクラブに来ている人はいませんか?

 息抜きやリフレッシュはスポーツの持つ役立ちの一つとも言えそうですが(笑)、要するにどんなあり方も認めようよ、ということを私は言いたいのです。ただそこにいるだけでもいいじゃない。総合型地域スポーツクラブはそういうクラブでいいじゃない。そう思っています。

 誤解しないでいただきたいのですが、「だから目標なんて持たなくていい」と言っているのではありません。みんな一緒じゃなくていいと言っています。例えば、大会優勝を目指して活動する人たちもいればいいし、ただその場を楽しむ人たちもいればいい。そういう人たちが同じクラブで活動していることこそが素晴らしいのではないでしょうか。

 遠くの外国の人の価値観を認めることは簡単です。放っておけばいいだけですから。そうじゃなくて、隣の人の価値観を認めることが大事なのではないでしょうか。隣にいる、自分とは違う価値観を持つ人のことを認めることこそが、多様性ということでしょう。もし総合型地域スポーツクラブが多様性の実現を目指しているなら、そのクラブの中で違う価値観を混在させなければならないのです。

 まぁもしかしたら、「目標を持ちましょう!クラブでそれを達成しましょう!」というマッチョみたいな総合型地域スポーツクラブも地域に一つはあってもいいのかもしれません。大事なのは地域全体としてデザインされていることですからね。そのマッチョクラブとは別に、誰もが純粋に楽しめるクラブが存在していれば、地域の人々は選べますもんね。

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 ということで今回は、『場としての価値』というテーマでお話しました。役立ちに振るクラブ、楽しみに振るクラブ。どちらも存在していていいと思いますが、多様性を謳う総合型地域スポーツクラブであれば、どちらも否定して欲しくないなというのが私の考えです。クラブには、ただそこにいるだけでいいという場としての価値があるんです。もし経営的な判断などでどちらかに振るのであれば、最低でもどちらにも価値があることを認識したうえでやって欲しいなと思います。(※本当はやって欲しくないけども!)

今回もお読みいただきありがとうございました!
ではまた!

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総合型地域スポーツクラブや筆者の挑戦のリアルな実態を曝け出しています。自ら体を張って行ってきた挑戦のプロセスや結果です! 総合型地域スポーツクラブをはじめ、地域スポーツクラブの運営や指導をしているかた、これからクラブを設立しようとしているかた、特に、スポーツをより多くの人に楽しんでもらいたいと思っているかたにぜひお読みいただきたいです!

総合型地域スポーツクラブのマネジメントをしている著者が、東京から長野県喬木村(人口6000人)へ移住して悪戦苦闘した軌跡や、総合型地域スポ…

総合型地域スポーツのマネジメントを仕事としています。定期購読マガジンでは、総合型地域スポーツのマネジメントに関して突っ込んだ内容を毎日配信しています。ぜひご覧ください!https://note.com/kenta_manager/m/mf43d909efdb5