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アメリカの美大で学んだこと04:オリジナリティってなに?

今回は絵を描く人なら一度は考えたことがあるトピック「オリジナリティ」について。

僕は今、自分の作品のオリジナリティ、そしてそれを絵を通して伝えることについてめっちゃ悩んでいます。悩みながら、過去に教授や周りのアーティストから学んだことを振り返り、大事なことを再確認できたのでその話をシェアしたくて今回の記事を書いています! 

目立ちたい(売れたい)と思うがあまり、、、

皆さんは学生の頃にアーティストとして目立ちたい(売れたい)って思っていましたか?

僕はめっちゃ思ってました。笑

作品作りの本当の目的ってシンプルで、「いいものを作る(描く)、そして伝える」ということだけなのに、ちょっと焦ってしまって、目的が「アーティストとして目立ちたい」に変わっちゃうことって今までありませんでしたか?SNSなどで他のアーティストの活躍が見える最近は特にそう思ってしまう可能性があるんじゃないかなーと思います。

「目立ちたい」ってことは活躍したいって気持ちの現れだと思うので、そんなに悪いことでもないと個人的には思います。でも、「目立つこと」が目的になってしまうと、オリジナリティの出し方を履き違えてしまうことがあると思うんです

大学が3年目に差し掛かったあたりで、ポツポツとSNSで目立つ同級生が現れてきました。彼らがTwitterやインスタに投稿した絵がバズりフォロワーが増え、個人的に絵の依頼がきてる人が、同じ教室の中にいる状況。みんな口には出さないけど、羨ましいと思ってたはずです。(少なくとも僕はめっちゃ羨ましかったです。正直嫉妬してました。気にしてないように振舞いながら、心では「いいなぁ、羨ましいなぁ、、」ってずっと思ってました。笑)

その結果こじらせる

さて、クラスメートが有名になり始めたところで、みんなに焦りが生まれました。そして、僕も含めてたくさんの生徒が間違いをおかしました。

目立つことを意識して(人によっては無意識的に)、「特殊なこと」をして自分のスタイルを確立しようとし始めました

具体的にいうと、珍しい画材を使ったり他の人が描かなそうなテーマで絵を描いたり絵の要素のいろんなところを無理やり強調して無理に目立たせたり、です。

どんな画材使っても、なにをテーマにしても、どんな風に強調しても、別に問題ないはずなんです。「自分の一番伝えたいこと」を伝えるためにそれをやっているんであれば。

ただ、この時の僕らは、そんなことそっちのけで「目立つため」にそれをやっていました。うっすらと違和感を感じていた人もいたんじゃないかな。

教授にビシッと言われる

僕らのこんな状態を知ってか知らずか、教授がこんな質問をしてきました。

「アーティストのオリジナリティってどこに存在するか知ってる?」

何人かの生徒が一応質問に答えましたが、当然誰も答えなんて知りません。というか、正しい答えなんて多分ありません。

あくまでこれは私の考えだけど、と前置きして教授は続けます。

「多分、オリジナリティってアーティストの頭の中に存在するものだと思うの。どんな画材を使うか、どんな技法を使うかっていうのは大した問題じゃない。だって特殊な画材を使うことにオリジナリティを求めるなら、例えばその画材メーカーが潰れたらそのオリジナリティはどうなるの?アドビがフォトショップから機能を削除したらオリジナリティも消えちゃうの?オリジナリティってそんなに安っぽくない。

グサッと刺さりました

じゃあ頭の中にあるオリジナリティって何?

すごく幸運なことに、美大に入る直前にピクサーに務めるアートディレクターの方と話す機会がありました。彼は「これから大学へ行き絵を勉強していく中で、安易に有名になるための絵を追い求めないで欲しい」と僕に伝えてくれました。

その時はあまり理解できていませんでしたが、今なら分かります。教授と同じことをすでに伝えてもらっていたんですよね。

頭の中にオリジナリティはあるっていうのは、自分の経験や意見がオリジナリティになるってことです。

例えば2人のアーティストが隣り合わせで座り、目の前の風景を描くとします。1人のアーティストは水彩絵の具で、もう一方のアーティストはみんながあまり知らない珍しい画材で描いたとします。きっと後者は面白がられますし、もしかしたら一時的に注目を集めることもあるかもしれません。でもそんなものオリジナリティじゃないと思うんです。

各々のアーティストが目の前の風景に対して思うことが必ずあるはずです。風景の中で高層ビルのシルエットが都会的でカッコいいから空とビルのコントラストを強調してパッキリとグラフィカルに描くかもしれない。もう一方のアーティストはその風景の夕焼け空から地元を思い出し、優しげな雰囲気の絵を描くかもしれない。同じものを見て描いているのに、アーティストの経験や意見が違うから違うものが描きあがる、その差がオリジナリティなんだと思います。

オリジナリティを深めるために人生を楽しむ

自分の経験や意見が作品のオリジナリティに影響するってことは、絵を描いていない時間ってすごく大事になってきますよね。普段一緒にいる友人、普段よく行く場所全部作品につながってきます。僕がアメリカに行って一番よかったなと思う理由がこれです。素晴らしい大学で絵の技術を学べたことも良かったですが、それ以上に色んな価値観をもつ人と触れ合えるカリフォルニアで20代を過ごせたことが、今大きな財産になっているなと感じます。
これからも興味を持って色んなものに触れ、体験して、自分の視野を広げていきたいなと思います。

ちょうどこの前Youtubeで写真家(兼カメラマン、兼フォトグラファー)の鈴木心さんも似たようなお話をされていました。
https://youtu.be/N2X9b263TO8?t=1285
動画の21:25〜がその話です。(この動画自体めっちゃ面白いので、時間があったらぜひ全部見てください!)

Ryan Langさんから学ぶ

皆さんはRyan Langというアーティストを知っていますか?
https://www.artstation.com/ryanlangdraws

彼はLos Angelsに住んでいるコンセプトアーティストでシュガー・ラッシュやベイマックスに参加しています。めちゃうまいし、僕もいつも参考にさせてもらっています(クオリティは足元どころか彼の姿が見えないくらい離れていますが、、、)

そんな彼の数年前のツイートがこちら。

この2体は彼がデザインした同一のキャラクターです。左のキャラクターを描いてから6、7年後に右のキャラクターを再度デザインし直したそうです。パッと見目を引くのは左かもしれませんが(派手さや極端な強調により)、よりどんな人物か伝わってくるのは右ですよね。

よりシンプルで、極端なことをしていない右のデザインの方がアーティストの考えがより伝わってくるのが面白いですよね。考えが伝わってくるということはこちらの方がオリジナリティが出てるということだと思います。

僕がオリジナリティを失った理由の自己考察

最後に今の僕の悩みを書いてみます。笑

2年前くらいからでしょうか、なんか自分の絵がつまらないなと思うようになりました。技術的には多少成長はしているものの、絵を通して思いが伝わっていない状態うっすらと気づいていながら見て見ぬ振りを続けてしまいました

先日尊敬するアーティストの方にそれをズバッと指摘される機会があり、それを機に考え始めました。

原因はすぐにわかりました(多分心のどこかで自覚していたから)。絵に関してはまだまだ上手ではないしキャリアも浅いのに、「周りからうまいと思われる絵を描こう」強く思ってしまっていたんです。

数ヶ月前に務めていたゲーム会社をやめたんですが、その会社では幸運なことに責任のある立場を任せていただいていました。しかし、気づいたら「周りをがっかりさせないように絵が上手くなきゃいけない」「後輩も見るんだから、よりプロっぽいものを描かなきゃいけない」、と思うようになっていました。今思えばそんなこと、全然思う必要なかったはずなんですけどね。

その結果、技術的な方法ばっかり考えるようになり、「自分の意見や思いを絵にのせる」ということが疎かになってしまいました。一番大事なことだったはずなのに。

今このタイミングで気づけたのは幸いです。このまま考えるきっかけなくもっと長い時間をこの先過ごしていたらと考えると、、、ゾッとしますね。本当に、指摘をしてくれた方に感謝です。

原因さえわかれば解決方法はいくらでもあるはず!なので改善してもっといい絵が描けるよう、ここから巻き返そうと思っています!

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