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「個人の時代」はやってこない

アンドゲート田村です。
株式会社アンドゲートという会社の代表をやっています。

この記事では、個人タクシーやフリーランスなど個人事業主の価値提供構造を見て「個人の時代」と言われている現象はやってこないと思ったお話を書きます。

特定の個人タクシーやフリーランスの方を批判するものではなく、価値提供の構造に無理があると思ったお話ですので、特定のどなたかを傷つけるつもりはありません。予めご了承ください。

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個人タクシーは使わない

私は電車やバスに乗るのが好きですが、費用対効果・時間対効果が公共機関を上回る場合はタクシーを利用します。
家のすぐ近くにタクシー乗り場があるので迎車は使わず、並んでいるタクシーに乗り込みます。
しかし、乗り込むタクシーが個人タクシーだった場合は申し訳ないと思いつつ、一つ飛ばして日本交通やkmタクシーなどの法人タクシーに乗り込みます。

過去に個人タクシーで嫌な思いをした訳ではありませんが、交通系ICカードでの決済ができなかったり、車内が狭く感じたりと「少し不便な印象」があります。
最近では「GO Pay」「S.RIDE WALLET」などのアプリ決済が登場し、現金をあまり持ち歩かない私としては積極的に法人タクシーに乗るようになりました。

利用者としての個人タクシーの魅力と言えば、熟練された運転・高級で快適な車・人によって異なるオ・モ・テ・ナ・シ、更に交通系ICカードでの決済ができれば100点のタクシーです。
しかし、ほとんどの個人タクシーは交通系ICカードでの決済に対応していないばかりか、乱暴な運転・狭い車内・ぶっきらぼうな運転手と10点のタクシーも存在します。
(目的地には連れて行ってくれるので10点は加点しておきます)

対して、法人タクシーの魅力は、普通の運転(たまにハズレ)・広くて快適な車(トヨタ JPN TAXI)・マニュアル通りの接客、更にアプリ決済や交通系ICカード決済があり、タクシー広告で新たな情報のインプットまでできる90点のタクシーです。
たまにハズレたとしても、75点を下回ることはありません。

個人タクシーは10点~100点(平均点: 45点)
法人タクシーは75~90点(平均点: 85点)
と法人タクシーは安定的な品質で価値を提供してくれます。

最高得点は個人タクシーだとしても、平均点は法人タクシーに軍配があがります。
特にタクシーのような、一度乗ったら次に出会うことはない「一期一会」のサービスは「10点かも知れないし100点かも知れない」車より「安定的に85点の品質を出してくれる」車を選んだほうが心理的な負荷が少ないです。

市場(私)は「再現性」を求めている

私は「再現性」という言葉が大好きです。
アンドゲートの企業理念にも入れていますし、意思決定を行う際は「再現性」を最も重視します。
上記の個人タクシーは品質の「再現性」がないことから、私には相性が悪いと感じています。

また、私の仕事はIT業界ですが、フリーランスの方が多く存在する業界です。
しかし、私は「再現性」のないものと相性が悪いため、フリーランスの方よりも「再現性」のある法人にお仕事を依頼することが多いです。
(その「再現性」に本当に再現性があるのかはさておき)
(あくまでも「私は」であり、マネージャー判断でフリーランスの方にお仕事を依頼することもあります、現にお願いしています、ありがとうございます)

「再現性」がないと判断する理由は、技術力やコミュニケーション能力もありますが、もっと根源的な理由です。
それは「体調不良」です。

私、企業人も、フリーランスの方も、当たり前ですが、人です。生き物です。
風邪で体調を崩すときもあれば、バイオリズムによりパフォーマンスが落ちることがあります。

組織に属していれば、代替の人員を用意し品質の担保を行うことができ「再現性」を守ることができますが、フリーランスの場合はそうはいきません。
その方以外に代わりになる方はいないからです。

法人では代替の人員を用意してくれる、品質の保証をしてくれる保険料を込みでの支払いですが、フリーランスの方にはそういった保険がない状態でもおおよそ同じ金額をお支払いしています。
費用対効果で考えれば少し高くても法人に頼んだほうがリスクは少ないです。

発注側の我々も鬼ではないので、体調を崩したときは「ゆっくり休んでください」と言いますが、素直に「価値提供されていないな」とも思います。
その結果、次の仕事からフリーランスに頼むのはやめよう、という意思決定につながります。

猫の手も借りたいときは強力なパートナーですが、選択肢がいくつもある中では優先順位が下がってしまいます。
これはフリーランスの方個人が悪いのではなく、個人事業主の価値提供構造上のバグだと思っています。

「提携しているフリーランスを業務委託で提供できます」という営業を受けますが、残念ながら1bitも魅力に感じません。
「弊社で教育を行ったフリーランスを~」や「弊社のテストに合格したフリーランスを~」であれば再現性があるので少しは魅力に感じますが、結局は人です。体調不良からは逃れられません。

個タクのジレンマ

前述した個人タクシーのお話ですが、開業するためには(年齢にもよりますが)「タクシー会社に10年以上勤務」し「10年間無事故無違反」である必要があり、更に新規許可はほとんど行っていないため、個人タクシー事業者から事業免許を譲り受ける必要があるそうです。

なかなか高い難易度だと思いませんか?

そうまでして個人タクシーになって、収入が増えたところで、私のような利用者からは毛嫌いされることになります。
もしかすると、私は個人タクシーのターゲット外なだけかも知れませんが、身の回りにも「個タクには乗らない」という方は少なくありません。

フリーランスも同様で、せっかく技術力やコミュニケーション力を磨いて独立したのに、市場からは「使いづらい」と判断されてしまう。

この現象を「個タクのジレンマ」と呼ぶことにしました。

誤解されている「個人の時代」

昔は大学を出て、就職すれば終身雇用だったから安心だった。
しかし、終身雇用が崩壊した現代では会社は頼れない。
会社に頼らず個人の力で生きていこう。
そう、これが「個人の時代」だ。

よく言われる「個人の時代」は上記文脈で示されることが多いと思います。
そのために「副業」や「個人事業主」になる方が増えており、一つの会社に所属するよりも収入が増えたり、身につくスキルの幅が広がることで、結果的に社会に対して貢献しています。

この文脈も理解できなくはないのですが、私には「ちょっと自分都合過ぎませんかね?」という違和感があります。
仕事というのは市場があってのものですから、市場にとって使いやすい存在でなければ「時代」と呼べるほどのムーブメントは起こせません。

インターネットで見かけただけですが「アフリカのことわざ」に下記言葉があります。

早く行きたければ、ひとりで行け。
遠くまで行きたければ、みんなで行け。

やはり、世の中を大きく変えるムーブメントを起こすためには、ある一定の頭数は必要だと考えています。

なぜかと言うとシンプルで、1日は24時間しかないからです。
労働時間を社会通念上の8時間とすると
1人だと8時間でも、2人いれば16時間、10人いれば80時間、100人いれば800時間分の影響が1日に起こせます。

もちろん、コミュニケーションコストなどで「ひとりでやったほう」が早いことはありますが「みんなでやったほう」が絶対的な影響力が大きく、遠くまで行くことができます。

社会に対して大きな影響を与えるためには、ひとりの力ではなく、みんなの力が必要なのです。
そのために効率化された集団が会社組織です。

ちょっと小金持ちになるくらいなら個人事業主が一番手っ取り早いので「そんな生き方もあるな~」と思いますが
小金持ちになることが、あなたの生きる意味でしょうか?

本当の意味での「個人の時代」

では「個人の時代」は存在しないのかと言うと、私は別の解釈が本当の「個人の時代」だと考えています。

それは、仕事を「会社名の看板」ではなく「個人名の看板」で受注することです。

個人事業主と変わらないじゃないか!と思われるかも知れませんが、大きな違いがあります。
それは「一人で働く」ではなく「個人の名前を使ってみんなで働く」という点です。

例えば「田村謙介」というブランドで、このブログが本になったとしましょう。
私一人だけでは到底仕事を回すことができず、打ち合わせのスケジュール調整や編集作業、製本の手配や流通経路の確保、経費の計算、その他マネジメント業務は他のどなたかに依頼することになります。

それでは「田村謙介」業務を手伝っている人は「個人の時代」の対象にならないのか?
答えはYesです。
全員に対して「個人の時代」を適用することは構造上不可能です。

「個人の時代」とは「誰が価値提供をするか」ではなく「何を価値提供するか」であり、何をとは「個人名の看板」となります。

個人の働き方は自由ですので「副業」や「個人事業主」の存在は肯定しますが、それが「個人の時代」かと言うとそうではないと思います。

「個人の時代」はやってこない

個タクのジレンマ」を元に「個人の時代」について述べてきました。

よく言われる「個人の時代」は副業や個人事業主で働くことを指しますが、それでは社会を変えるムーブメントは起こすことができず「個人の時代」はやってこない。

私が定義した「個人の時代」は「個人名の看板」で働くことを指しますが、それでは全員を「個人の時代」化することはできず「個人の時代」はやってこない。

結局「個人の時代」はやってこない、と思ったお話でした。

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