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2021年中学入試への心構え【受験を通して手に入れるべきものとは】

現在のこのような状況の中で、中学受験を控えているお子さんをお持ちの方は、大きな不安を抱えているのではないかと思います。

かつてない状況ですので私の経験と知見が完璧に活かせるわけではないでしょうが、そのような不安を抱えている親御さんに対して私ならどのようなアドバイスをするのか。その辺りについて書いていこうと思います。

不安の種類がいくつかあると思いますので、まずはそれについて整理していきましょう。


【2021年入試への不安点】

①塾の勉強が遅れていたり、オンライン授業を使ったとしても様々な要因で学習内容の定着率が悪くなり、入試問題に対応できないのではないか

②今後社会が大きく変化していくことが決定的になり、これまでの価値観が通用しなくなる可能性がある中で、各学校の非常事態への対応等も考慮に入れつつ、志望校の再検討が必要なのではないか

③ご家庭の経済的な不安が生じ、中学受験そのものを見送ったほうが良いのではないか

代表的な不安はこのようなものになるでしょうか。トータルの受験者の増減の予測は難しいですが、②に含まれる考えから私立中学受験を考える方は増え、逆に③のような不安から受験を見送る方が出てくることでしょう。

では、それぞれの不安について簡単に私なりの考えを書いていきます。

【3つの不安へのアドバイス】

まず①のような不安に対しては、「それほど心配はいりませんよ。」とお答えします。来年の入試の混乱は地域限定的なものではなく、全国的なものです。もちろん地域によって塾の再開時期等に多少のズレは生じるでしょうが、いずれにしてもほとんどの受験生が例年の受験生のような勉強をすることができません。

そうすると皆のレベルが例年より下がります。受験者平均点は下がり、合格最低点も下がりますので、元々の実力の序列通りに結果が決まるはずです。

ただ一点注意しておきたいのが、この騒動によって気持ち的に守りの姿勢になり、成績上位層が手堅い受験をしてきて、本来受けないであろうレベルの学校まで滑り止め校や本命校のレベルを下げてくる可能性があります。

また秋以降に過去問をやってみた際、昨年までの受験生とは仕上がり方が異なるにも関わらず、過去問の出来の悪さを見て、うちの子はこの学校に合格するのは無理だと判断して、やはり受験校のレベルを下げてくるようなケースもあるでしょう。

そうなってくると全体のレベルは下がったはずなのに例年以上に競争が厳しくなる学校も出てくるはずです。そう考えると、もし安全策をとるご家庭が増えた場合は、最難関の学校に限っては、やや競争が楽になるのかもしれません。


次に②の不安について。志望校の再検討については、やるべきことだと思います。このような緊急時にどのような対応をしているか。また社会が大きく変化した場合には学歴というものの価値もさらに揺らいでくるわけですが、その辺りの物差しだけで志望校を考えていた場合は、新たな物差しを増やしていった方が良いでしょう。志望校を考える時間はまだ十分にあります。

これだけの混乱期ですから、学校側も自分たちの持つ様々な強みをアピールしてことが考えられますが、各学校がアピールしてくる部分を比較しながら、各ご家庭が大事にしている部分、これだけは譲れない部分というものを整理して、幅広い難易度の学校から志望校の候補を挙げていくのが良いかと思います。

少し話は逸れますが、模試の偏差値表などで表される各学校の偏差値というのは、あくまでもその学校のその年における一般的な人気度だと思ってください。試験日や科目数によって、時代の流れやタイミングによって偏差値は大きく変動します。

私個人の意見としては、偏差値に惑わされることなく、お子さんが最も成長できそうな環境をお選びいただけたらと思っています。親御さんの目線はもちろん、実際にその学校で青春時代を過ごすお子さん本人の意見も考慮して。


そして③の不安について。経済的な不安から中学受験を見送ることについては、残念ながら各ご家庭の判断に委ねるしかありません。授業料免除の特待生を狙うとか、国立や中高一貫公立の中学に狙いを変えるという手もあるにはありますが、あまり多くの方に当てはまるようなアドバイスではないでしょう。


そこで③の不安も含めて全ての不安を軽くするための大きなアドバイスを1つ挙げることにします。

【中学受験のあらゆる不安を軽くするためのアドバイス】

「受験を通して勉強の型を作ることを目標にしましょう」

このアドバイスはこれまで私が指導してきた生徒達にも伝えてきましたが、やはり自分の「勉強の型」を作れた生徒は中学受験が終わった後も、長期的に伸び続けます。(私の教え子達の長期的な成長ぶりもいずれ別の記事でお伝えします。)

「勉強の型」を持っていない子は宿題以外で何をして良いかわからず、気が向いた時、ヤバいと思ったタイミングで、とりあえず教科書を読む、問題集の問題を解く、丸付けをする、この繰り返しになっていることと思います。

それもある意味で確立した「勉強の型」と言えるかもしれませんが、自分で工夫している部分がありませんよね?そこが問題なわけです。試行錯誤工夫の積み重ねのもとに手に入れた「勉強の型」こそ意味のあるものになります。

お子さんが「勉強の型」を手に入れ、自分で力を伸ばすことができるようになると、例年のように塾の授業が受けられなくても、家での自分一人での勉強が充実していれば、他の受験生より先に進んで行けます。これで不安①は軽くなります。

そして自分の力を伸ばすノウハウを持っているので、どこの学校に入学しようが勉強に関しては心配がいらなくなってきます。そうすると学校を選ぶストレスも軽減することでしょう。不安②が解消するわけではありませんが、少なくとも学校のレベルにこだわる必要は無くなるのではないでしょうか。

さらに、中学高校時代の塾や予備校をはじめとした教育サービスにかけるお金を節約することができ、ご家庭の経済的不安を軽減することにつながります。それでも状況的に不安③は解消しないこともあるでしょうが、仮に中学受験自体を見送ったとしても「勉強の型」を作ることを意識した勉強を家庭で行うことができれば、長期的にメリットが生まれるはずです。

【「勉強の型」とは】

さて、ここまで何度も出てきた「勉強の型」とは一体どういうものなのか。私が言う「勉強の型」というのは多岐にわたり、教科書や問題集の使い方、時間の使い方、休憩の方法やタイミング、教材や文房具のチョイス、勉強時の姿勢などなど、とにかく勉強にまつわる全てのものに、自分にとって丁度良いものがあるはずなのです。勉強は長時間、長期間行うものですから、それを見つけられるかどうか、作り出せるかどうかが重要になってきます。

またすぐに結果を出すための勉強、長期的に継続させる勉強などのように目的に応じた勉強法の引き出しを増やしておく必要もあります。

一番良くないのは何も目的を意識せず、授業を聞くだけ、課題を終わらせるだけの作業を「勉強」だと思ってしまうことです。勉強というスキル自体を日々磨いていくような姿勢があるだけで、成果はガラリと変わるはずです。

勉強というスキルの磨き方についてはまた別の記事で書くことにしますが、毎日やると良い具体的な方法を一つだけ挙げておきます。


それは1日の勉強時間の最後に、今日「できたこと」と「できなかったこと」を3〜5つ程度、ノートに日記のような形で書いてみることです。日記のような形と言っても文章ではなく箇条書きで構いません。

できたことの「こと」は正解できた問題、マスターした単元、暗記できたもの、勉強時間、集中力などなど、とりあえずは何でも良いです。できなかったことも同様に。

そういったことを整理するだけで、次の日への意識が変わってきます。「できたこと」がなぜできたのかを分析して、まだできていないことに応用したり、「できなかったこと」を分析してどうすればできるようになるのかを考えてみる。そういった思考の繰り返しが日々の行いに変化を与えてくれることでしょう。

また「できなかったこと」への具体的な対応策を3つほど考えて書いておくと、次の日からの動き出しが楽になります。

例えばその日の算数の出来が悪かったなら……

①間違えた問題と似た問題を探してやってみる

②出来た問題をより速くできるようにする

③理解しきれていない単元の内容を別の参考書等で理解し直してみる


その日の勉強の集中力が続かなかったなら……

①休憩の長さやタイミングを変えてみる

②休憩中にやることを変えてみる

③練習メニューによって1回の勉強時間を変える

といった具合に、毎日色々と勉強自体に手を加えてみるわけです。そうやって試行錯誤していく中で、自分にとってベストな勉強法に近づいていくはずです。

初めはなかなかうまくできないかもしれませんが、勉強自体にもレベルアップには経験値が必要です。ただダラダラと勉強っぽいことを続けているよりは、はるかに進歩しているはずだと信じて、このような工夫をコツコツ続けてみましょう。


【中学受験は塾に頼り過ぎない、大学受験も学校に頼り過ぎない】

塾も学校も学力アップのための様々なノウハウを持ち、うまく活用すれば大きな成果を得られますが、そのノウハウは決してその子にとって「ベスト」なものではありません。解説や課題やメッセージが多くの人に向けてのものである限りは。

その子が学力を伸ばすのにベターな塾、ベターな学校、ベターな先生というのは存在するでしょうが、ベストなものにはそうそう出会えません。試行錯誤を続けながら、自分の力のベストな伸ばし方を自分自身で見つけていくことが重要だと思います。

塾や学校側からしても、一人ひとりの生徒がより自立して勉強してくれた方が結果的に大きなメリットが生まれるのではないでしょうか。

塾や学校で先生から授けられたり、親や兄弟、友人等から耳にした方法、また本やテレビやネットから仕入れた方法はあくまでもヒントとして捉え、それを自分なりにカスタマイズして自分にとってのベストな方法論を構築していくと、想像だにしなかった成果が出るはずです。

やっと見つけたベストな方法も、状況によってはすぐに通用しなくなったりしますが、そんな方法を見つけられた人なら、またすぐに次のレベルのベストな方法を探し始めることでしょう。

そしてそのような習慣が学生時代に身につくと、大人になって社会に出てからも、自分自身で成長し続けることができるのではないでしょうか。


極端な話、勉強以外のものからも自分にとってベストな方法を見つけようとする習慣はいくらでも身につけられます。部活でも習い事でも趣味に関することでも。食生活や運動習慣などのような日常生活レベルのことでも。

勉強がどうしても苦手だという人は、勉強以外のことで何でも良いから何か自分で課題を見つけて改善していく練習をしてみるのも良いと思います。そこでうまくいった方法や、自分から何かを変えようという姿勢や習慣が最終的には勉強にも生きてくる、そんなことも大いに考えられます。

自分なりの「勉強の型」、時間をかけてでも手に入れる価値はありますよ。


来年の受験に関しては、今後も予断を許さない状況が続いていくことと思います。受験がどうなるのか不安なのはお子さんも同じことでしょう。

中学受験、高校受験、大学受験と大きな受験は人生の中で何度かありますが、親子が二人三脚のような形で臨む受験は、中学受験が最後です。

親子で受験に対する意見がぶつかったり、親の思うようにお子さんが勉強しなかったりとうまくいかない時期もあるでしょうが、ただでさえ難しい時代の受験です。親子で力を合わせて、この中学受験を実り多きものにしていただけるよう願っています。

不安を抱えている方、迷っている方に対して少しでもお役に立てるよう、私なりの考えをこれからも綴っていきますので、また別の記事も是非お読みになっていただければと思います。

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