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上場のリアル:上場して何が変わったのか?

今年の7月に東証マザーズに上場させていただいた。実際上場して約半年近く経過し、どんな変化があったのかを振り返ってみたいと思う。

なぜ上場したのか?

昔からインターネットが思想含め大好きだったし、インターネットを使うことで「会社」の在り方を変えることができると思っていた。また、それを自らの手で形にしたかった。
日本でいうと高度成長期からバブル期に作られた仕事観や働き方のモデルは、インターネット以降の環境変化に対応しきれていないし、もっと根本的に生産性を向上させられることができるはず。自らもテクノロジーを使った新しい働き方を実践しながらそれを実現することで、こんな(楽しい)やり方でもしっかり成功するんだ、というのを誰もが認める形で証明してみたいと考えていた。
わかりやすく言えば、「インターネットによる会社や仕事の再構築/再発明」ということだけど、これをプライベートカンパニーとしてではなく、社会の公器としてのパブリックカンパニーとして実現することに意義がある、と考え、上場を目指した。

具体的に上場することを決めたタイミング

会社を設立して、本格的に上場準備を始めるまでは結構時間がかかった。
最初は事業をなんとかするのに必死で、サービス運営の傍らでいわゆるラーメン代稼ぎのための受託などもやっていた。設立10年目くらいでようやくサービスからの売上だけで会社を維持できるようになり、組織の形も見えてきたこともあって、遅ればせながら上場準備に着手した。
そのタイミングで、CFOとして西山さんがjoinして、具体的に上場に向けた準備を進めていった。
上場に向けた欠かせない外部パートナーとして、監査法人と主幹事証券会社がいるが、監査法人は、準備前の1年前くらいからトーマツさんにショートレビューという形で入ってもらっていた。
主幹事証券は、選定に当たって4社の証券会社にプレゼンテーションしてもらった。それぞれの強みを活かした提案をしてくれたが、提案の内容もさることながら、個人的には両社のチームの相性が最重要だと思っていたので、その際の質疑応答のやりとりで一番相性が良さそうだった大和証券さんにお願いすることにした。
結果的にこの判断は間違っていなかった。本当に素晴らしいチームで、彼らがいなければたぶんあのタイミングで上場できていなかった、と思う。

上場する前は、良い話と悪い話の両方を聞かされていた

長く経営者をやっていると、上場にまつわる様々な話を聞くことになる。その大半は、上場するとしんどいことが増えるよ、とか、上場しなければ良かった、というネガティブな話だった。
具体的には、上場に向かう途中で無理な売上計画を立て現場が疲弊する、管理部門がいろんなルールを作るので、管理のための業務が増えて、これも現場の疲弊に輪をかける、とか、上場したらしたで、社内が殺伐としてくる、不要な争いが増えるとか、退職者が続出するなど・・・
その一方で、経営陣が株価に一喜一憂し、株主の顔色を窺って経営をするようになり、大胆な挑戦をしなくなるとか、経営の自由度がなくなってしまうなど・・・
もちろん、上場することによるポジティブな効果の話もあるのだけど、なぜかマイナスの話かなり多めで聞かされていたように思える。
今にして思えば、安易な気持ちで上場を目指す会社が増えると、証券市場の信頼性にも関わるので、そういった経営者に釘を刺す側面もあったと思えるのだけど、それにしてもネガティブな話が多かった。

実際どうだったのか?

さて、上場して約半年経過した今、振り返ってみてどうだったかというと、前に聞かされていたようなマイナスの影響というのは、今のフィードフォースではほとんど見られない。上場前と変わらず、浮つくことなく皆サービスと顧客に向き合って仕事ができているし、管理部門とサービス部門も協力しあってやれている。社内が殺伐とすることもない。(サービスの方向性を巡ってメンバー同士がぶつかることはあるが、それは健全かつ必要な衝突だと思っている)
その一方で、上場をきっかけに少しづつ会社のことを知っていただいたり、応援していただくことも増え、仕事がやりやすくなったことのほうが多いように感じる。
ちなみに、上場のタイミングで納会兼上場パーティを社内で開催し、その時のスピーチで、「フィードフォースは上場したからといって何も変わらない。今まで通り当たり前のことを当たり前のようにやっていくだけ」という話もしたのだけど、まさに、その言葉通りの状態を維持できている。

なぜ、マイナスの影響がなかったのか?

なぜ、上場前に聞かされていたような、上場によるマイナス面の影響と無縁でいられたのか?を考えてみた。

1.フィードフォースの管理部門がイケている
まずはこれ。フィードフォースの管理部門は現場のことを理解し、極力ワークフローを管理の目的で肥大化させないように様々な工夫をしてくれている。管理部門とサービス部門が対立することもなかったし、管理のための業務増みたいなのはほとんどなかったと思う。
(本当にありがとうございます!)

2.サービスと顧客、社会に向きあえている(自分達のためにやっていない)
経営層もメンバーも、どうすればよいサービスになるのか?価値を多くの企業に届けられるのか?良いチームを作れるのか?ということにほとんどの時間を費やせている。
フィードフォースの企業文化的に、他人と自分を比較して、損だ得だみたいな考え方をする人がいない。

3.「上場すること」への世の中的な見方が変わってきている
ここ数年でスタートアップが上場することへのイメージが変わってきている。テック系のスタートアップがIPOを経て、さらに大きな挑戦をしていくのは当たり前のこと、というコンセンサスが一般化したというか。
5年前くらいまでは、大きく成長することと自分達らしく会社をやっていくこととがトレードオフの関係にあるというムードも結構あった気がする。(なので上場には反対です、ということも社員から実際何度か言われた)

会社と株主は対立する存在なのか?株主との関係性もイノベーションしたい

あと、もうひとつのマイナス面として挙げられていた、上場すると株価に一喜一憂してしまう、とか株主の顔色を伺うようになってしまうという話。
これに関しては、これからの課題になってしまうが、フィードフォースが中長期でしっかり成長するということを丁寧に説明し、ちゃんと応援してもらえる会社になることで、乗り越えられるのではないかと考えている。

SDGsなど良い会社を応援することが正しい態度という風潮も出てきているし、コンプライアンスやガバナンスをしっかりし、丁寧な情報発信を通じて、中長期で応援してくれる株主と関係性を構築しながら、良い会社を一緒に創ることはできるのではないか。
この「株主と会社間の関係性」においても新しい会社の姿を模索していきたい。

我々にとって、上場は良いイベントだった

改めて振り返ってみて、我々にとって、上場は間違いなく良いイベントだったといえる。個人的にも視座が一段も二段も上がったし、会社としても挑戦できるステージが広がった。我々のサービスをより多くの人達に届けられる可能性も上がったし、知ってもらう機会も増えた。ネガティブな言説に惑わされず、上場を目指して良かった、と思っている。
もちろん、上場してたかだか半年しか経っておらず、今結論を出すのは早すぎるのかもしれない。これからいろんな困難に直面することもあると思う。上場していることで、その困難のスケールが大きくなることもあるだろう。だとしても、たぶん上場したことは後悔しないんじゃないかなーと思う。

自分たちの経験を踏まえ、改めて、上場することについてのネガティブな言説を打ち消し、これから上場を考えるスタートアップが臆せず上場を目指すことを心の底から応援したい。

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