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栗原康さん(アナキズム研究)✖️勝山実さん(ひきこもり名人)対談・2

言葉だけだとどうにもならない


栗原:ぼくもどちらかというと、ずっと部屋にひきこもっていても大丈夫なほうだったのですが、逆にオンライン授業をやったことで「あれ?」みたいな。いい意味でもわるい意味でも、変な出会いがない。おどろいて身体に震えが走るような出会いがないんですよね。


ーーやはり週一回東北に行くことが日常的なところから抜け出るいい日なんでしょうね。1日かけて授業をやって帰ってくるルーティン。でもぼくは、勝山さんはどうかはわかりませんけれども、ちょっと「コロナ疲れ」がきている気がします。


勝山:なんかね、言葉がだめだなと思って。自分は書くのも好きだし、おもしろい表現とかにこだわってる方ですけど、コミュニケーションとか、交流とかするときに、言葉だけじゃどうにもならんと感じています。やっぱ、その場にいて言葉以外の、臭いとかも含めて、目の間の食べ物をはさんでガチャガチャ飲食する、その部分で交流していていたんだなと、そういう部分が半分以上だったんじゃないかと思って。


栗原:空間ですよね。


勝山:そう、空間。しゃべったり書くのが好きだから、言葉だけでいけると思っていたんだけど、自分みたいにひきこもっている人間でも、けっこう言葉以外の部分に頼っているところが多かったかなって。


栗原:言葉というのはそもそもパフォーマティブなものなんですよね。抽象的ななにかではなくて、具体的な人との接触であったり、動きだったり、そういうのとセットだったんだなと。


ーーやはり物理的に一緒にいるとか、物理的に距離を感ずる部分……。


勝山:なんだろうね?逆に言えば黙って座っている人とも交流できていたわけでしょ。考えてみたらいつも来てるけど、あまりしゃべらないという人も、ぜんぜんOKだった。


栗原:だいたい「うん、うん」と、うなずいているだけでいいんですよね。


ーーわかってくれてるという感じですかね。それに息遣いとか、空気感とか。だから画面の正面を向くという、オンラインだと割とプレッシャーを感じる面もありますよね。お互いみんな顔を真正面から見ているのもちょっとストレスたまるし、横に人がいるとか、斜め横に座っている人のいる感覚ってけっこうやりやすいですよね。


勝山:その通りですね。


ーーよくカウンセリングなんか対面すると上手くしゃべれないから、なるべく斜め横とか、横とかに座ると少しずつボソボソとでも思いを語りやすいとか。


栗原:大学ではそれで顔出しをしなくていいというふうになったとおもうんですけど、ただ表情がわからないというのは、それはそれでけっこうキツイ。もっとキツイのはZOOMって、“いいね“👍←グッド を出せるじゃないですか?


勝山:ありますね、そういう機能が。


栗原:わかっているかどうかだけでも確認しようと思って、このボタンをポチッとおしてもらう。


勝山:それがさらに心を寒くさせるんですよ(笑)。


栗原:授業で20分くらいバア〜としゃべって、みんな「今のところ、わかった?」ときいて、この「いいね」を。


勝山:(笑)。


栗原:しかもそれがクセになっていて、去年一回だけ対面の授業をやりに行ったんですけど、「いまの、みんなわかった?」と言ったときに、自分で親指を立てて「いいね」をやっていたんです。身体感覚って恐ろしいものだなって。


ーーやはり空間と身体感覚なんでしょうね。そのあたり原口剛さんの話を聞いたときにすごく勉強になったというか。そういう観点で話をしてくれて。もちろん釜ヶ崎に長時間いられるか? というとムリムリなんですけど。すごく教わりましたね。原口さんから空間感覚のこととか、臭いとか、環境みたいなこと。そのときの話で、釜ヶ崎の70年代からのこっているドヤ。住まいですね。ああいったとところは個室にならないから、みんな外に出て普通に飲み食いしたり、交流していたんですと聞いて、「ああなるほどな。そういう場所だったんだな」と改めて思いました。確かに普通の人は入りづらいだろうなとは思いましたけど。


栗原:あのしょんべん臭さがいいんですよね。去年10月、大阪にいったついでに、かの女と二人で釜ヶ崎をぶらっとまわってきたんですよ。いま、みんなの集いの場だった「あいりん総合センター」が閉鎖されてしまって、さらにクリアランス(都市浄化)が進められている。それでも*『団結小屋』をつくってがんばっている人たちがいるから、その小屋だけでもみていこうと思って歩いていたら、ガードレールに青いプラスチックの小便器が括りつけてある。衝撃です。だけどもっとすごいのは、誰もそれをつかわないで近くでふつうに立ちションをしてるんですよ。


勝山:さすがですねえ。
  

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*『団結小屋』ー  こちらのリンク先をご覧ください。

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