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インタビューサイト・ユーフォニアム インタビュー・2020

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「インタビューサイト・ユーフォニアム」の2020年掲載インタビューの特設マガジンサイトです。 無料ですが、カンパも受け付けますよ(笑) また、インタビューを受けてくれる方も募集中… もっと読む
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記事一覧

森元斎さん(長崎大学大学院准教授) 『国道3号線』 インタビュー・1

               福岡での出会い 杉本 雑談もしたいところですが、早速、森さんが今年出された本書について伺いたいと思います。私はこの本をすごく興味深く読ませていただき、付随して他のひとの本とか資料とかDVDとかも観て、かなりハマってしまったんですよね。それは「何故かな?」と。何故こんなに自分の中でこだわっちゃったのか。自分でも実はイマイチ理由がよくわからない所があるんです。  考えるにおそらくひとつはコロナ禍で、自粛の要請があったりしたこと。もちろん僕は元々

森元斎さん(長崎大学大学院准教授) 『国道3号線』インタビュー・2

            西南の役に宿る豊饒さ       杉本 そうですね。だから地図を反転するような感覚でこの本を読むといいのかな、という気がしたんですよ。どうしても僕ら中央思考というか、僕も北の人間で、北海道ですから東京というものを中心に見てしまうんですけど、何回か読み直してみると、地図を反対にして国道3号線であれば、南九州から門司の方まで概観するのがいいと思ったんですよね。そこで、まずは鹿児島なんですけど。一番最初に、なぜ南九州なのかというのを先の形で捉えた上で、

森元斎さん(長崎大学大学院准教授)ー『国道3号線』インタビュー・3

三池炭鉱問題 森 あとは例えば、谷川雁自体が水俣出身というのもあります。水俣病の運動には全然関わったりはしないですが、この本の中でも論じたのですが、谷川と石牟礼の対決は重要です。石牟礼は前近代的な水俣を表現しています。かんざしとか、狐とか、妖怪とかがよく出てきて、美しくて不思議な、不可思議な場所として描かれます。谷川はそれを辛辣に批判するんです。そんな、チッソが来る前の水俣だって良かったのか?そうでもなかろう?みたいなことを言うんですよね。 杉本 そこはね。森さんが研

森元斎さん(長崎大学大学院准教授) 『国道3号線』 インタビュー・4

              嫌韓意識は未だ反抗期の感情 杉本 で、最初に話した通り、反対の地図というか、地図を反転させてみたらいいと思うんですけども。先ほども大陸、半島側の話もしましたけれど、確か平成天皇が自分たちの祖先は朝鮮半島の渡来人から生まれた、みたいなことを言われたことがあったと思います。それが谷川雁さんが言うように日本は朝鮮から来た王権なんだと言う話を裏付けているような気がしたんですよ。  あと僕のセラピストの先生が、結構厄介なことを色々、言う人なので(笑)。要

田中康雄さん(児童精神科医)インタビュー後編・4

生活を大事に 杉本:僕も社会的な能力という意味では何もないし、何て言ったらいいんでしょうね。ともかく、今の世の中ってどうしても社会的な能力があることが重視されているような印象がありまして。ここら辺のこともスムーズに言いにくいんですけど、生活というか個人としての魅力みたいな。僕のバイト先のリーダーさんは定時制高校すらきちんと卒業していない(笑)。  でも僕が思うにこの人とは話が通じるとか、センスがあってユーモアも通じるとか、別に本を読まなくてもビビットに響く言葉を持っている

田中康夫さん(児童精神科医)インタビュー後編・3

少年時代の田中さん 杉本:それで聞きたいと思ったんですけど、先生はそういう感じで学校に行かないことでプレッシャーを感じたりはしませんでしたか。 田中:全然なかったですね。 杉本:あ!私とそんなに世代的に変わらないと思いますが。 田中:ええ。58年生まれなので僕のほうが3つ上なんですけど。 杉本:うちの兄と同じくらいです。 田中:全然なかったですね。 杉本:確か栃木でしたか? 田中:栃木です。 杉本:そうしますと関東圏の中だから、そこそこみんな真面目な… 田

田中康雄さん(児童精神科医)インタビュー後編・2

どんな日常を送っているのだろうか 杉本:本当は行くべきなんじゃないかと。来てほしいよ、会いたいよっていう人に「会ったほうがいい」と、どこかで思っているとは思うんです。凄くアンビバレントな気持ちがあって、どこかで「拒絶されるんじゃないか」という思いも圧倒的に強くて、繋がりたい思いと、拒絶されるんじゃないかっていう思いの葛藤がもの凄く大きくて、やっぱり心が揺れるけど今のままでいいところに落ち着いてしまうっていう感じがきっとあるんじゃないでしょうか。 田中:そうですよね。 杉

田中康雄さん(児童精神科医)インタビュー後編・1 時の力を信じて、生活を大事に

自分自身と周りへのモニタリング 杉本:先ほどまで先生のお仕事とは離れたリーダーシップ論みたいなことを喋り過ぎましたけれど、でもやはり先生のお仕事というか、例えば僕自身のクライエント的立ち位置として思うことですけど、クライエントさんたちをみていくなかでは、仕事の役割上、どうしても意志とか覚悟とか姿勢というものを、考えざるを得ないというふうに思えたんですけど、いかがでしょうね。 田中:たぶんそうだと思います。 杉本:それぐらい、人が変わってもらうという、変わるというか…。何

田中康雄さん(児童精神科医)インタビュー前編・5

権力に対する諦め 田中:大義をどこに持っているかというのがきっとあるんだと思いますけれども。だから安倍さんがなかなか難しいのは彼が守ろうとしているのが最終的にこの国の繁栄ではなく、安倍さん個人の保守というか、そういうのが見え隠れしちゃうのがきっと彼が損する点なんだと思うんですよね。いさぎよくない、というかね。 杉本:哲学はあるんでしょうか?あのかたはポジティヴなことをやたらと言いたがってるんですけど。もはや癖のように、「私の責任において」と、ポジティヴらしきことを盛んに言

田中康雄さん(児童精神科医)インタビュー前編・4

アンビバレントな感情の行く末 杉本:そこで連想でお尋ねしたいんですけど、アンビバレントな感じっていろんな形があって、いま起きている現象って、「出たいけど、出れない」とか、「出なければいけないけど、外出できない」とか。例えば依存症などもそうですね。「やめなければいけないと頭では分かっているけれど、やってしまう」。覚せい剤とかをやってしまう、やめられないとか。それは昔からあるんだけれど、ひきこもりにしてもどうしたらいいのかわかるけど、やっぱり身体がそれに乗れない。それはやっぱり

田中康雄さん(児童精神科医)インタビュー前編・3

父による切断がない時代 田中:そうですね。あの…お母さんご自身が耐えつつも、父のいわゆる切断機能というのですかね。お子さんを家族から切断して社会に飛び出させる力というのが、お父さんの力。で、切断して社会に出たけれども、キツすぎて帰ってきたときに包み込むのがお母さんの役割というのが、かつての父的立場、母的立場なんだけれども、切断する力が弱くなったため、社会にとびだたせる力が弱まってしまったがゆえに包み込んでしまうというか、留まってしまっていいよという流れのほうが強くなってきて

田中康雄さん(児童精神科医)インタビュー前編・2

垂直関係の衰退と自己責任論 杉本:先生の講演録をすごく興味深く読ませてもらったんですけど、やはり後ろのほうで出てくる話で、いまひとつ難しい内容だなと思った部分をいまお答えいただいたような気がします。つまり「垂直な関係」に支えられて「水平な関係」がある、みたいな話ですよね。水平を支えるための垂直な支えということは、いったいどういう世界なのか、ということは僕もちょっと読ませていただいた限りでは分からない部分だったんですけど。これは本当に皆もなかなか気づけていないというか、じゃあ

田中康雄さん(児童精神科医)インタビュー前編・1 健全な垂直関係の衰退と私事化

「待っていても来ない」ということ 田中:ひきこもりの大会のような集まりとかは、それほど私は縁がなかったのですが、不登校の親の会などとはずいぶん前から縁があったので、今回のひきこもりの親の会の全国大会*(KHJ全国大会.2019)に関わらせていただきました。 杉本:そういったことの延長で、こういう基調講演もあったという感じでしょうか。 田中:そうですね。ひきこもりの分野はちゃんと一生懸命にやっていないので。申し訳なかったと思っているんですけど。 杉本:いえいえ。先生も児

作新学院大学人間文化学部教授 山尾貴則さんインタビュー 4

最初は「いつ卒業するのだろう」と思った 杉本 それでいま、話し合いを中心にした栃木の若者サポートステーションのミーティングには何名くらい来られているんですか? 山尾 いまはコンスタントに10名くらい。で、2か月にいっぺんくらい新しい人が来たりというか、新しい人が来るのは不定期ですから、「ここに行ってみたらいいんじゃないか」という形で紹介されて来るので、この間ひさかたぶりに新しい人が来たんですけれども。 杉本 一番上の年齢だと幾つくらいなんでしょう? 山尾 30代後半くら