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「アイアンマンVR」に学ぶ、現実(リアル)と非現実(アンリアル)の間のUX

ゲームから学ぶUI/UXシリーズ第3回は、PlayStation VR専用ゲームタイトル「MARVEL アイアンマンVR」をプレイして感じた「リアルなUXとは何か?」という学びをお伝えしたいと思います。
(先日開催されたUX JAM Online 05にて発表した内容です)

ちなみにすべて、個人の感想です。

「アイアンマンVR」について

アイアンマンはアメリカンコミックMARVELのキャラクターで、近年ではロバート・ダウニー・Jr主演の単独映画作品やアベンジャーズシリーズでご存知の方も多いかと思います。

プレイヤーは、天才科学者にして億万長者の実業家トニー・スタークとして、自ら開発したパワードスーツを身に纏ったスーパーヒーロー、アイアンマンになりきって、高速で空を飛んだり、搭載された数々のハイテクウェポンでヴィランと戦うVRアクションゲームです。

プレイした感想

僕はアイアンマンに関連する映画作品はすべて所持している程度のファンなのですが、このゲームをプレイした感想を一言で言うと、

I am Iron Man.
わたしはアイアンマンだ。

です。それくらい画面の中のアイアンマンと、それを操作する自分がシンクロするリアルなユーザー体験だと感じました。

「アイアンマンVR」のここがリアル

あのポーズで自由に空を飛べる

もうこれに尽きます。
アイアンマンと言えば、あの独特のペンギンスタイルでの飛行シーンが浮かびますが、なぜあのポーズになっているのかというと、足に搭載されているリパルサージェットで飛行しつつ、同じく掌のリパルサーで姿勢を制御しているからですね。

映画でも最初トニー・スタークが飛行訓練で四苦八苦しているシーンがありましたが、プレイヤーもまさに初期のトニーになった気持ちで、慣れない飛行体験から始まり、最終的には高速飛行からの急制動ホバリング、からの両手のリパルサーレイですかさず攻撃、という流れるようなアクションを体感できました。

アイアンマンは現実(リアル)なのか?

さて、「アイアンマンVR」というゲーム体験を、リアルに感じるのはお伝えしましたが、ここで一つ疑問が生じます。

ゲームの外、すなわちこの現実世界においてアイアンマンは現実(リアル)なのか?

ジェットパックを使った単独飛行の例もありますが、


完全な人型ボディでマッハを超える速度で飛行しつつ、圧倒的な戦闘力を持つスーパーヒーローは、残念ながらコミックや映画の中にしか存在しません。

リアルとは何か?

現実に存在しないものを、ゲームを通じてプレイヤーは「リアル」と感じました。
では、その「リアル」とは一体何なのか?

コミックや映画の中のアイアンマンのスペックを、ゲーム内の物理演算や流体力学などのシミュレーションエンジンで再現することは可能かもしれませんが、あまり厳密にすると、時速数百キロで飛行中にちょっと手首の角度を動かしただけで、あらぬ方向に吹っ飛んだりするでしょう。

いわゆる「空想化学」をゲームで再現する場合は、現実世界の動きをシミュレートしつつ、プレイヤーの記憶と想像からなる脳内の「リアル」をいい感じに再現するために、あえて現実を歪ませたアンリアルなチューニングが必要になってくるのではないかと思います。

Webデザインにおけるリアルとアンリアル

さて、似たような関係は、Webデザインの世界においても目にすることがあります。
皆さんご存じの「マテリアルデザイン」は、「紙とインク」という物質をメタファーとして、画面の中での物体の重なりや影の付きかたなど、現実世界の物理法則に基づいた表現を取り入れて、直感的な操作をできるようにしています。

さらに、Webならではの表現として、ユーザーのアクションに応じてスムーズに変形移動するようなアニメーションで、情報の連続性をわかり易く伝えられるようになっています。

例えば、現実世界で、物体が移動するときは、基本的にイーズインアウト、すなわちだんだん加速して、だんだんゆっくりになって止まる、という動きになります。画面の中でも、このような現実世界の動きを取り入れることで、自然に受け入れやすくなるでしょう。

しかし、ときにはユーザーのアクションに対するフィードバックの感度を優先して、即座に最高速で反応する、イーズアウトのようなインタラクションが望まれる場合もあります。

リアルはあなたの心の中に…

このように、「リアルなUX」を考えるということは、単なる現実の模倣だけではなく、ときに現実を歪ませたり、拡張したりしながら、ユーザーの求める「心の中のリアル」に近付けること、ではないかと思います。

リッジレーサーみたいな体験を望んでいるユーザーに、いくらリアルだからといってグランツーリスモを薦めてもちょっと違いますよね。

リアルとアンリアルの間にあるUXに思いを馳せながら、ゲーム、もといクリエイティブに励んでみるのも良いのではないでしょうか。

おしまい。

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