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『インテリ悪口本』予約開始-5回の推敲と、限界まで磨いた文章。それから、謎パワーストーン人間になりたくない話。


※本文は全て無料で読めます


今日、11月1日(月)、僕の初めての著書の予約が始まった。『教養(インテリ)悪口本』だ。


10歳くらいの頃から漠然と「作家になりたい」と思っていたので、夢がひとつ叶った形だ。

あの頃の僕に伝えてあげたい。「20年後の君は、無事に本を出してるよ。君の夢は叶うよ」って。

(※ただし、当時の僕が書きたかったのは『ハリー・ポッター』みたいな本であり、間違っても『インテリ悪口本』ではない


どんな本なのか?

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一言で説明すると、「イラッとした時に気の利いたことを言おう」という趣旨の本だ。

「あいつの企画書、マジでゴミなんだけど」と口にすると下品だし何も楽しくない。聞かされる同僚も「ただの愚痴か…」とテンションが下がる。それよりは「あいつの企画書、パリティビットが意味をなさない品質なんだけど」と言った方が楽しい話になりそうだ。(※)

「ゴミなんだけど」と言っているとイライラが増えていきそうだが、「パリティビットが意味をなさない品質なんだけど」と言っていると、素晴らしき情報処理技術に思いを馳せることができて、イライラは軽減されるだろう。

※「パリティビットって何?」という方はぜひ本書をご予約ください。この余白は解説を書くには狭すぎる。


Twitterを見ていると無限に流れてくる「こいつ無能。死ね」みたいな面白くない悪口が減って、気の利いた悪口が世界に増えてほしい。


売れてほしい。切実に。

執筆に、なんやかんやで半年かかった。

この半年の執筆期間、本当に色々なことがあった。

行動経済学者ダン・アリエリーのデータねつ造疑惑が浮かんだせいで行動経済学の怪しさが取り沙汰され、既に書き終わった章の価値が下がってしまったり。

どうしてもクリティカルな参考文献が見つけられず、「困ったなぁ」と思いながら図書館のレファレンスカウンターで「コーカサスバイソンの絶滅とアレクサンドル1世の関係について調べてるんですけど」と相談したら関連書籍を10冊見つけてきてくれて「有能すぎる」と驚いたり。(このサービスが無料だというのだから衝撃である。皆もっと図書館を使った方がいい)

不謹慎な内容を書いたら「倫理的にムリ」と編集者に全ボツを食らったり

そんなこんなを乗り越えて、なんとか予約開始までこぎつけた。

これで予約が入らずにすぐ絶版にでもなろうものなら、絶望して怪しいスピリチュアル集団とかに傾倒して、1個20万円くらいする謎のパワーストーンをジャラジャラつけた人になってしまうだろう。あなたが予約することで、謎のパワーストーン人間が1人救われる。人助けだと思って予約してほしい。頼むから。


インテリ悪口本のここがすごい

……とまあ長々と書いたけれど、ぶっちゃけた話、このマガジンでずっとやってた芸風なので、いつも読んでくれる皆さんにはあまり新鮮味はないかもしれない。

だけどそれでも、今回の書籍は予約して買っていただくだけの価値があると思っている。そんなアピールポイントについて書きたい。


①書籍としての体裁

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商業出版をしてみて、一番楽しかったのは「本のデザインが送られてきた瞬間」であった。

僕の仕事は原稿を書くところだけで、デザインは編集者やデザイナーたちの手によって決まる。

したがって、原稿を送りつけた後はアホみたいな顔をして生活しているだけでよかった。人に丸投げできるというのは、実にありがたい境遇だ。


原稿を送ってしばらく経った頃、突然「デザインが完成しました!」とPDFが送られてきた。開いた瞬間、「うわぁ~!!すごい!!本になってる!!!」とアホみたいな感想を漏らした。

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自分が書いた原稿が「本」になる経験は衝撃であった。「すげぇええ~!本だぁああ~!」とアホみたいな独り言を繰り返しながらページをめくった。人は自分が書いた原稿が本になると、偏差値が12になるらしい。


そういうことで、優秀な編集者やデザイナーにアレコレ協力してもらった上で一冊の本になっているので、本としての体裁がしっかりしている。

楽しい工夫もいっぱいだ。

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「初心者向け」とか「サイレント悪口」とかには、それと分かるようにアイコンを付してある。

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「こっそり使えるサイレント悪口を見つけたい!」などのニーズにもしっかり対応した、実用性バツグンの一冊である。これはもう実用書としてバカ売れ間違いなしだ。皆さんの職場にも最低1冊、場合によっては人数分常備されるに違いない。法律職にとっての『ポケット六法』みたいなものである。


②怒涛の推敲による、整った文章

僕はブロガーの中では比較的多めに推敲をする方だと思う。毎週のnoteでも、推敲にはたいてい1時間以上かけている。

しかし、書籍の推敲は比べ物にならない時間を要した

パッと書いてポンと公開できるWEB記事と違って、商業出版は確認作業の嵐だ。怒涛の推敲を強制させられると言ってもいい。

僕が今回たどった段取りはこんな感じ。


1. 初稿提出
2. 編集者チェックとフィードバック
3. フィードバックを受けて修正して第二稿提出
4. 編集者が更にフィードバック
5. 更に修正して第三稿提出。ここで校閲によるチェックが入る。
6. 確認用のゲラ(物理的な紙!)が郵送されてくるので、赤入れして返送する
7. 赤入れを反映しつつ、再び校閲チェック。
8. 再校ゲラが郵送されてくる。また赤入れして返送する


ということで、時間を置きながら5回の推敲を行った。本を出すとこんなにも推敲することになるのか、と愕然としながら。

更に、僕自身の推敲に加えて、編集者による提案や校閲によるチェックもあるので、とんでもない文章の磨き上げだと言っていいだろう。

校閲から上がってくる300個くらいの「この"ほしい"は"欲しい"とすべきでは?」みたいな小さな提案を「いや、漢字だと仰々しいので"ほしい"のままで」と却下したり、「たしかにここは漢字の方がいいな。そうしよう」と採用したりする作業を繰り返した。


「誰も気づかないような細部をこねくり回しているなぁ」と思う一方で、「これこそがクリエイティブだ」と興奮していた。誰も気づかないような細部を突き詰める方にむしろ本質がある。

昨年大ヒットしたアニメ『映像研には手を出すな!』に、僕の念頭を去らないセリフがある。


リアルなアニメーションに並々ならぬこだわりがあるアニメーターが、「チェーンソーの刃が躍動するアニメーションに迫力が足りない」と悩んでいる場面。

プロデューサーは「これで十分じゃん。これ以上どうしたいのか分からない。そんなにこだわっても誰も気づかない」と言う。

それに対するアニメーターの答えがこれ。

私はチェーンソーの刃が跳ねる様子を見たいし、そのこだわりで生き延びる。大半の人が細部を見なくても、私は私を救わなきゃいけない


心が震えた。今もセリフを書き起こしながらちょっと泣きそうになる。その通りだ。たとえ自分以外の誰一人気づかなかったとしても、クリエイターならばこだわりを持ち続けなければならない。自分を救うために生き延びるために

パッと見に不毛な作業をしているように見えても、実はそれは不毛ではない。それどころか、本質は不毛に見える作業にある。自分を救う「こだわり」は、他者からは不毛にしか見えないものだ。

今回の推敲作業をしながら、僕はひたすらにこの名セリフを思い浮かべていた。これは自分を救うこだわりなのだ、と思いながら、赤ペンを握った。


『映像研には手を出すな!』の話に戻ろう。この名セリフの後、アニメが完成する。いよいよ上映会が始まると、観客たちは皆、圧巻のアニメーションに夢中になった。迫力あるチェーンソーの動きに、皆が熱狂する。この熱狂は、アニメーターのこだわりがなければ絶対に生まれなかったものだ

ひとつひとつの作業は不毛に見えても、誰にも分からないような差に見えても、こだわりを最後まで注ぎ込んだ作品は、圧倒的に人の心を動かすのだ。

本当に良いシーンだった。号泣してしまった。誰にも分からないこだわりが、自分が生き延びるためのこだわりが、自分を救うためのこだわりが、最終的には受け手の心に届くのだ。


僕もそうありたいと思う。不毛に見えるこだわりも、いつか誰かに届いてほしい。その奇跡を信じたい。『映像研には手を出すな!』で号泣した気持ちを忘れないように、ひとつずつ推敲を重ねた。

だから、この本はまず間違いなく、僕の人生で一番整った文章のはずだ。皆さんのご期待に添えると思っている。


③あふれる参考文献・飛び交う言い訳

本書で紹介したインテリ悪口は41個である。41個全て入念なリサーチをしている時間はさすがになかったので、事実関係が怪しい部分を重点的にリサーチした。

たとえば、「黒田清隆は酔っ払って住民を誤射して殺した」という記述が『人生で大切なことは泥酔に学んだ』という本に出てくる。

この本、おもしろいのだがかなりいい加減だ。何しろ参考文献の記載がゼロである。メンタリストDaiGoさんの本でしか見たことない潔さだ。大学でレポートとか書いたことないん……???


この本や、他の曖昧なソースで読んだ記憶から、僕は「黒田清隆ばりだな(酒癖が悪い人に使えるインテリ悪口)」という章を下書きしたのだが、リサーチの段階でかなり躓いた。ちゃんと調べてみると、調べれば調べるほど沼が広がっていた。

各文献によって記載はマチマチだし、黒田清隆を好意的に見ている文献と否定的に見ている文献で書かれ方はずいぶん違う。

『人物叢書 黒田清隆』とかに至っては、この事件はなかったことにされていた


めげずに調べまくった結果、国立国会図書館に保存されている昭和16年の郷土史『高島町史』に当時の裁判記録が収録されているのを発見したので、それを最大の典拠とした。リサーチに丸2日くらいかかった。「酒癖が悪いヤツを黒田清隆にたとえようぜ」というふざけた提案のために2日も必死でリサーチするのを人生の無駄遣いと言わずしてなんと言おう。


そして、全てのインテリ悪口に対してここまでのリサーチはさすがにできなかったので、かなりいい加減に諦めた章もある。

特に、行動経済学関係の章などはそうだ。前述のダン・アリエリーの話もそうだし、『ファスト&スロー』にも「それ、再現性怪しいんじゃない?」と疑義が呈されている話が山ほどある。本書でも使った。

こういう部分に関しては、言い訳をいっぱいつけた。インテリ悪口を使って逆ギレしながら言い訳している。このあたりの塩梅も含めて、皆さんには楽しんでもらえればと思う。


1件でも多く、予約が欲しい

現代は、新宿紀伊國屋書店などの日本を代表する巨大書店も、Amazonランキングの予約数を見て仕入れる量を決定するらしい。

で、地方の小さい書店は、新宿紀伊國屋書店などの大きい書店の動向を見て仕入れる量を決定する

つまり、全ての書店は最終的にはAmazonランキングの傀儡なのである。小売店のDeath by amazonが叫ばれて久しいが、書店の自由意志もDeath by amazonなのかもしれない


だから、本をたくさん売りたいのならば、「まずはAmazonのランキングを上げろ。話はそれからだ」ということになる。


幸い、今日の夕方の時点で既に「ノンフィクション5位・総合19位」という結構良い順位まで来ている。

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この調子でもっと上げることができれば、新宿紀伊國屋書店でも面陳列にしてくれるだろう。こういうヤツ。

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(画像引用元:フライの雑誌社

そして、紀伊國屋書店で面陳列にしてもらえていれば、全国の書店でもそれなりに力を入れて売ってくれるらしい。


ということで、僕はまずAmazonのランキングをひとつでも上げたいし、そのために何でもやりたいなと思っている。例えば、大量の予約特典をつけるとか。


予約特典

予約した人がお得感を感じられるように、いっぱいつけている。

①インテリ悪口を使ってみた実例集-「インフルエンサーになる!」と会社を辞めて3年半経ってもまだフォロワー1300人の無職を相手にインテリ悪口を使ってみた対談レポート

②レポートのおまけ、対談動画(3時間)

③書籍に入り切らなかったボツ原稿のPDF(1万文字以上)


ちなみに、①と②についてはもう対談は終了済みである。正直、想像と違う感じになってしまってどのように料理すればいいのか頭を抱えているのだが、最終的にはなんとか形にしてみせる。(この頭を抱えている件については、また別途記事にしたいと思う。目下一番のストレス源である。胃に穴が空かないように頑張りたい)


予約特典の受け取り方法

Amazonで予約ができたら、予約完了画面のスクリーンショットを撮ってほしい。(「もう予約済みでそんな画面閉じたわ!」という人は、注文履歴ページとかで、とにかく予約したことが分かるスクリーンショットを撮ってください)

その後、スクリーンショット画像を添付して、以下のメールアドレスに送ってほしい。(※画像以外は、空メールで問題ない)

horimoto.dis@gmail.com


すると、受付完了のメールが送られてくる。予約特典が受け取れるのは発売当日なので、それまでじっくりお待ちいただきたい。

※一週間経っても受付完了のメールがこない場合は、Gmailからのメールを受信できる設定になっているかを確認してから再度メールを送ってほしい。


ウソを本当にしないために

突然の私事だが、3日後に引っ越しをする。

池袋あたりの割と良い物件を見つけて、「ぜひこの家に住みたい!」となった。

で、早速不動産屋で手続きを進めていたのだが、問題がある。僕は社会的信用がゼロである。インターネット芸人に社会的信用は全くなじまない。「水と油」という言葉があるが、アレを廃止して「インターネット芸人と社会的信用」にした方がいいと思う。そのぐらいなじまない。

だいたい、水と油は乳化剤を入れれば結構簡単に混ざる。ペペロンチーノを作る時はパスタの茹で汁を加えれば乳化が起きるけれど、インターネット芸人が家を借りようと思ったら「パスタの茹で汁を加える」なんて簡単な操作ではとてもムリだ。


茹で汁を加えるだけではムリだったので、やり手不動産マンの誘導にしたがって、ワケの分からない設定で入居申し込みをした。僕の職業は「売れない作家」である。

何の因果か、僕は「売れない作家」として諸々の手続きや説明を済ませることになった。

そして、売れない作家を演じたお陰で(?)、問題なく家は借りられたのだけれど、「売れない作家です!」を連呼してしまったせいで「嘘から出た真」になるのではないかという不安が湧いてきた。

言霊(ことだま)みたいなスピリチュアルな概念を僕は一切信じていないが、本が鳴かず飛ばずで終わってしまったら、言霊を信じ始めてしまうかもしれない。「本が売れなかったのは、あんなウソをついたからだ…言葉は現実になるんだ…」と思い始めてしまうかもしれない。

そして、怪しいスピリチュアル集団とかに傾倒して、1個20万円くらいする謎のパワーストーンをジャラジャラつけた人になってしまうだろう。あなたが予約することで、謎のパワーストーン人間が1人救われる。人助けだと思って予約してほしい。頼むから。



以上、今日の内容終わり。お読みくださってありがとうございました。



以下、マガジン購読者向け、おまけの裏話。


あまり表立って言うべきでもない話


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