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紺屋の白袴とウロボロス創立者-『えんとつ町のプペル』公開によせて

皆さんはこの男が誰かご存知だろうか。

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じっと見てると不安になってくる顔である。鼻の下のクシュッとしたところが妙にリアルで怖い。ギャグ漫画とかに出てきそう。あんまり偉人っぽくない肖像画だ。


顔を見ても全然ピンと来ないのだが、名前を聞けば一撃で何者か分かる。彼の名前はコペルニクスである。超ビッグネーム。中世に地動説を主張した著作を発行したことで、科学史にデカデカと名前を刻んだ男だ。


そんなコペルニクスだが、そういえば1つ気になることがある。彼は教会に迫害されなかったのだろうか?

なにしろ、地動説といえば、当時のキリスト教の世界観に真っ向から反する主張である。当時のキリスト教徒にとっては「こいつマジありえないんですけどぉ」的な主張だった。

マルティン・ルターも「こいつマジでありえないんですけどぉ。死刑にした方がいいと思うんですけどぉ」と言っていたらしい。コペルニクスは敬虔なキリスト教徒たちからの反感を大いに買っていたし、教会からも睨まれていたはずだ。

中世における教会はヒトラーも真っ青の絶対権力者である。少しでも歯向かえば、誰でも異端審問にかけられて殺される可能性があった。「死刑にした方がいい」という主張は誇張でもなんでもない。教会がアウトと判断すれば、誰でも簡単に死刑になった時代だ。

ではなぜコペルニクスはそれほど問題視されなかったのか。歴史家のウィリアム・バーンスタインはその理由について、著書の中でこう述べている。コペルニクスはラテン語で書いていたからである。

ラテン語というと、今も当時もインテリのための言語だ。庶民は誰も話せないが、インテリならばラテン語の読み書きくらいできて当然、そういう性質のものである。


全くの余談だが、僕も「インテリぶるためにラテン語の勉強をしてみよう!」と思い立ち、活用表を見てすぐにやめたことがある。

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(画像引用元:『基本から学ぶラテン語』

勢いで買ったラテン語の参考書はたまにペラペラめくるだけのオブジェと化し、数年の時を経て古本屋に売られることになった。「古代ローマ人と喋る機会なんて一生ねえよ!テルマエ・ロマエじゃねえんだから!」と捨て台詞を独りごちながら売った。インテリジェンスの欠片もない


本題に戻そう。ラテン語ができないのは僕だけではなく、当時の全ての庶民も同様だった。

要するに、コペルニクスの『天球の回転について』は、ほとんど誰も読めなかったのである。

読めたのといえば、ごく一部の聖職者・官僚・大商人くらいのもので、当然ながら世間にセンセーションは巻き起こらない。小難しいツイートがバズることはないし、ラテン語で書かれた主張が世間に響き渡ることもないのである。

であれば、教会も必死になって弾圧する必要はない。コペルニクスはそれほど教会に目をつけられずに済んだ。


一方、ジョルダーノ・ブルーノは違った。この男は見事に教会によって火炙りの刑にかけられてしまった。

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彼はコペルニクスより少し後の時代の哲学者だ。あちこちの大学で教鞭をとりつつ、その流れで地動説などの最先端(当時のキリスト教からすると異端)の教えをまとめたパンフレットを配布したりもした。

このパンフレットが英語やらドイツ語やらイタリア語やらの世俗語で書かれていたものだからさあ大変、ローマ・カトリック教会の怒りを買った彼は、異端審問官イチオシの処刑方法・火炙りによって一生に幕を閉じることになった。


このコペルニクスとブルーノのエピソードから、我々は何を学べるか。

それは、「怒られそうな話は皆が読めない形で書いた方がいい」ということである。地動説はラテン語で主張した方がいいし、訴訟リスクがある内容は有料noteで書いた方がいいのである。

そういうことで、僕は今年も訴訟リスクがある内容は有料noteで書き続けていこうと思う。これは火炙りにされないための自衛手段であり、僕はコペルニクスをやっているだけなのだ。

そういうことで、「人の悪口を書いて生計を立てる妖怪」という汚名は返上して、今年は「現代のコペルニクス」というカッコいい称号を獲得していきたいと思う。そんな感じで皆さん、2021年もよろしくお願いします。明けましておめでとう。


毎年恒例、キングコング西野さん界隈

年末年始といえば恒例行事である。大掃除、年越しそば、初詣、お雑煮、おせち……。暴力的とさえ言えるほど大量の恒例行事がある。

この辺りの恒例行事、面倒な気もするのだが、一年に一度やるなら悪くないものだ。しょっちゅうやってると飽きてくるが、一年くらい経つと「またやってもいいか」という気になってくる。


そういう物事は年越し行事に限らない。キングコング西野さん界隈とかについても同様である。

昨年の年末年始はキングコング西野さん界隈のイベント「天才万博」に潜入した話を書いた(めちゃくちゃバカにした)が、今年もキングコング西野さん界隈はホットだ。

2020年12月25日に、キングコング西野さんが手掛ける映画『えんとつ町のプペル』が公開されたのである。


本作はさすがに話題十分で、Twitterでちょっと検索してみるだけでも、ものすごい量の人が映画を絶賛している。

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(引用元ツイート:こちら


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(引用元ツイート:こちら


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(引用元ツイート:こちら


これだけ絶賛されるってことは、さぞ良い映画なんだと思う。そこについては疑いの余地はない

まあ、Twitter検索のサジェストが若干気にはなるものの、疑いの余地はない。とにかく疑いの余地はないのである。

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(この検索サジェストを消すためにえんとつ町は大騒ぎなのかもしれない、と想像したら、胸が熱くなるところだ)


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えんとつ町のプペル(主題歌) / 西野亮廣 -フル歌詞- Covered by 佐野仁美 より引用)


そういうことで、大騒ぎのえんとつ町を眺めながら「面白いなぁ」と思っていたのだが、えんとつ町のプペルの感想ツイートをアレコレ見ている内に、輪をかけて面白い人を発見してしまった。

だから、今日はその人について書いてみようと思う。前回の天才万博の記事から1年が経過していて、僕も「そろそろまたキングコング西野さん界隈に言及したいなぁ」というテンションになっているから、ちょうどいい。年越し行事をやるのは年に1回がちょうどいいし、キングコング西野さん界隈に言及するのも年に1回がちょうどいいのである。


ということで、以下、ばっちり実名を出しながら、発見した面白い人について書いていく。

当然ながら、ラテン語ではなく日本語で書くことになるので、以下有料である。僕は火炙りにされたくないので、ブルーノではなくコペルニクスをやる。気になる方は課金して読んで欲しい。

単品購入(300円)もできるが、定期購読(500円/月)がオススメだ。今月書かれた記事は全部読める。1月は4本更新なので、単品購入よりも2.4倍オトク。ぜひ定期購読を検討されたい。


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