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コミュニティの構造・戦略・KPI・あるいはネットワークについて

※このnoteは cmkt(カスタマーマーケティングミートアップ)Advent Calendar2020の20日目のエントリーです。Nagahashiさん、hoozmさん企画ありがとうございます!

カスタマーマーケティングにおける重要な取り組みの1つにユーザーコミュニティが挙げられます。

私自身も2018年頃からユーザーコミュニティの立ち上げに携わって参りました。このnoteは、そんな立ち上げ当時に記述した内部ドキュメントを、汎用的な形にリライトしたものです(※Reproユーザーコミュニティの話はありませんので気になる方は過去のイベントレポをご覧ください)

実際にコミュニティ運営に携わっている実践者の方々(B2Bコミュニティ, B2Cコミュニティ, オンラインサロン, 会社組織, など)を想定読者として、コミュニティのネットワーク構造、戦略、KPIについてまとめています。

謝辞

なおこの議論の基礎となる部分の多くは、小島さんのアウトプットから学ばせて頂きました。当時、本当に助けられました。改めて感謝をお伝えしたいです。現在は書籍化されており、本noteの内容もこの書籍の内容を前提知識として進めています。ぜひご一読ください。

また複雑ネットワーク(ネットワーク理論)についてはDeNAの鶴川さんにご指導頂き感謝しております。

最後に、私が最も尊敬し、信頼を寄せる弊社のコミュニティマネージャー孫さんからはコミュニティ運営の心構えや本質について本当に多くの事を学びました。心から感謝です。

それでは以下本題です。

1章:究極のコミュニティとは

「ユーザーコミュニティを立ち上げていこう!」と検討していたとき、そのその実態を掴むことができず困り果てていました。企業対ユーザーの1対1のマーケティングとは話が違うのです。「ユーザーとユーザー同士の関わり合いが発生するコミュニティって一体何なんだろう…?」解像度を高く保つことができませんでした。

そんなある日、散歩をしていたら、近所の小学校で子供たちが鬼ごっこをしていた姿が目に入ってきました。

Aくん「なぁ、鬼ごっこやろうぜー!」
Bくん「やろうやろう!」「みんなー!鬼ごっこやるって!」
その他大勢「やるやるー!」

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画像引用元:全校鬼ごっこを行いました

Aくんの呼びかけを発端に続々と仲間が集まり、集団が形成されていったのです。

そしてはじめは数人で鬼ごっこがはじまり、少し時間が立つと参加者の何人かが他のクラスの子に声掛けをする。そして他クラスの子も混ざり集団が大きく成長していく。。

鬼ごっこを終えた子供たちは疲れていたがなぜか目が輝いている。友達同士の絆がますます強固になったからです。いつの間にか他のクラスのはじめましての子とも打ち解けているのです。

そして翌日以降も同じメンバーで鬼ごっこが開催される。強い絆の集団に成長していく。。

そうか。「小学校の友達の輪」それがコミュニティだったのか!目指すべき姿は小学校の放課後だったのか!

謎に包まれていたコミュニティ。その姿は意外なほど身近なところにありました。

しかも「小学校の友達の輪」は強固で、持続可能性の高く、まさに理想系と言えるものだったのです。

2章:理想的なコミュニティが持つ2つの特徴

「小学校の友達の輪」に代表されるような強固なコミュニティには必ずと言っていいほど共通の構造、それも人間関係ネットワークの構造が2つ見られます。この2つのネットワーク特徴こそ強固なコミュニティの証と言えます。

1.ネットワーク密度の高いクラスタが数多く存在している点

4月の新学期といえばクラス替え。お互いの顔と名前を知らない子供たち同士が集まりクラスが誕生します。はじめはお互いの関係性がゼロです。しかし「鬼ごっこ」という共通の関心事を基軸に人が集まります。そして何度か鬼ごっこを繰り返すことで、相手の名前を覚え、絆が芽生え、鬼ごっこ集団の人間関係が強固に成長していきます。そして強固な人間関係で結ばれれば、鬼ごっこがなくても集まるようになるのです。クラスルームで仲間と会話を楽しんだり、バカ騒ぎをしたり、ゲームをしたり。もはや鬼ごっこがあるから集まる集団ではありません。友達だから自然と集まるのです。

またこのような友達の絆は鬼ごっこだけではありません。クラスでトランプを楽しむ集団、お絵かきが好きな集団、サッカーやバスケを楽しむ集団。そのような小集団が自発的に発生し、その小集団で繰り返し顔合わせすることで、強固な人間関係で結ばれていきます。

複雑ネットワーク(ネットワーク理論)の世界では、鬼ごっこグループのような類似性を持った小集団を「クラスタ」と呼び、クラスタ内の関係性の強さを「ネットワーク密度」と呼びます。*1

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強固なコミュニティには、ネットワーク密度の高いクラスタが複数存在しています。

例えば病院の医療組織において、成果を上げる外科医チームと成果を上げないチームの決定的な違いは、チームメンバー同士の相互支援量、つまり相互支援のネットワーク密度であることが知られています。*2

お互いを信頼しあい、絆で結ばれたドリームチーム(ドリームクラスタ)が数多く点在するコミュニティが理想形と言えるのです。

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ただし現実として、マーケティング目的のコミュニティがこのレベルに到達することは殆どありません。小学校のように参加者の100%が高密度クラスタに所属する状態を作れたら奇跡レベルです。おそらく「参加者の20%以下しかクラスタに所属していない」という状態が大半でしょう。

ほとんどのコミュニティはここに深刻な課題を抱えています。

コミュニティマーケティングにおいて「オフランファースト(トラストファースト)だ*3」「まず人からはじめよ。適切なリーダーと適切なメンバーを集めよ。(Choose right members and leaders.)*4」と叫ばれる所以はここにあります。

参加者同士の関係性がゼロでは何も始まらないのです。まずはクラスタを作りネットワーク密度を高めていく必要があるのです。

そうして人間関係のネットワークができてはじめて「集団」になりますし「コミュニティ」と呼べるようになります。

例外として、甲子園を本気で目指す野球チーム、強いビジョンを元に集まるスタートアップ企業の組織、人生の拠り所にしている宗教など、超強力なコミュニティであれば、小学校並の高密度クラスタ集団を目指せるかもしれません。

しかし、そうでないマーケティング目的のコミュニティの場合、この1つ目の「ネットワーク密度の高いクラスタをたくさん作ること」が解消されることのない永遠のテーマとして残り続けます。

2.クラスタ間を橋渡しする「弱い紐帯」が数多く存在している点

2つ目の特徴は、次のシチュエーションをイメージすることで見えてきます。

ある日、いつもの鬼ごっこメンバー内で大喧嘩が勃発しました。

「もうBくんの事は嫌いだ!」と叫ぶAくん。それに歯向かうBくん。主力メンバーの決裂です。

その日以降、鬼ごっこは開催されることなく、鬼ごっこクラスタは解散してしまいました。

これで小学校コミュニティは崩壊してお終い。。。になってしまうのでしょうか?

当然、否です。

想像がつくように、1つのクラスタが消滅した程度では小学校コミュニティは崩壊しません。

なぜなら鬼ごっこ以外にも集まり繋がれる場があるからです。鬼ごっこクラスタ以外にも、トランプクラスタ、ほかクラスメイトとのサッカー部クラスタ、クラス内の班グループ、そろばん教室クラスタ、と様々なクラスタに所属しているからです。

鬼ごっこ以外のクラスタの仲間とも繋がりを持っているため、鬼ごっこクラスタが消滅してもダメージは少ないです。

しかし、もし自分の居場所が鬼ごっこクラスタしかなかったらどうでしょう?

もし新しく転職した会社で他のチームメンバーの顔を知らないまま、自分のチームが崩壊したらどうでしょう?もし入会したオンラインサロンで自分の興味のある唯一のグループが過疎ってしまったらどうでしょう?

きっとその人はコミュニティから抜けてしまいます。

コミュニティ内にネットワーク密度の高いクラスタが複数点在しているだけでは不十分です。そのクラスタ間を橋渡しする人間関係が多数結ばれている必要があるのです。

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画像引用元:私たちはどうつながっているのか ネットワークの科学を応用する*5

このようなクラスタ間を結ぶ関係性ネットワークを「弱い紐帯(よわいちゅうたい)」と呼びます。(*5) 1973年にマーク・グラノヴェッターは一見弱そうに見えるこの弱いつながりこそ重要だということを発見しました。*6

弱い紐帯が本当の意味でコミュニティの根底を支えるのです。

「クラスタ間を橋渡しする『弱い紐帯』が数多く存在する状態」これが強固なコミュニティに観察される2つ目の特徴です。

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会社組織においても、とある現場チーム(現場チームクラスタ)内の人間関係性が悪化することで会社組織全体の崩壊につながるケースは稀です。それよりも複数の部署やチームと関係性を築く部長レイヤーが揉めたり去ることのほうが遥かに致命傷です。なぜなら現場メンバーよりも部長レイヤーのほうが各組織と弱い紐帯でつながり、橋渡しをしているからです。

もし盛り上がっていたコミュニティが収縮・崩壊してしまうなら、それは弱い紐帯が途切れてしまったのかもしれません。

反対に、コミュニティを盤石で強固なものにしたいなら「弱い紐帯」に目を向けなければなりません。

他部署との交流機会を提供する全社合宿や社内部活動制度。ユーザーコミュニティの参加者が一同に会する大感謝祭ミートアップ。いつものギルドメンバー以外で繋がりが生まれるゲームの全国バトルトーナメント。これらの仕掛けが重要になる背景に「弱い紐帯」の存在があるのです。

3章:成長戦略「コミュニティ・グロース・ピラミッド」

理想的なコミュニティは、

1.ネットワーク密度の高いクラスタが数多く存在している点
2.クラスタ間を橋渡しする「弱い紐帯」が数多く存在している点

という複雑ネットワークを形成している事がわかります。

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画像引用元:グラフ理論,複雑ネットワーク理論に関する研究

したがって理想的なコミュニティにするためには、この複雑ネットワークの形成を目指せば良いと言い換える事ができます。

目指すべき理想状態を具体的に定義するために、コミュニティに所属するユーザーを4パターンに分類していきます。コミュニティはこの4パターンのユーザーで構成されます。

【1.リーダー】何らかのイベントを企画したり、リーダーシップを発揮しクラスタをリードしてくれる人

※実例イメージ※
・「鬼ごっこやろうぜ!」と企画してくれる小学生リーダー
・B2Bユーザーミートアップを一緒に企画してくれるユーザーさん
・ギルドのリーダーを担うソシャゲのユーザーさん

【2.フォローワー】リーダーの企画に賛同し、クラスタのメンバーと共に活動を行う人

※実例イメージ※
・「鬼ごっこやろうぜ!」と呼びかけたリーダーに「いいね!」と賛同し、一緒に鬼ごっこしてくれる子供たち
・B2Bユーザーミートアップイベントに申し込み参加するユーザーさん
・ソシャゲのギルドバトルトーナメントに向けて、ギルド内で定期的にチャットコミュニケーションを取ったり、ギルドバトルに参加するユーザーさん

【3.アクティブオーディエンス】クラスタに所属せず、クラスタの活動を外から眺めている人

※実例イメージ※
・まだ入学したててまだ友達の輪の中に入ることができておらず鬼ごっこグループの活動を外から眺めている状態の子供たち
・B2Bユーザーミートアップイベントに参加するなどの交流活動はしないが、定期的に記事コンテンツや音声コンテンツを閲覧視聴しているユーザーさん
・ギルドに加入していないが、通常のストーリークエストを粛々と楽しんでいるアクティブユーザーさん

【4.ノンアクティブオーディエンス】・コミュニティに所属しているもののどのクラスタにも属さず、クラスタ外活動にも参加していない人。または、そもそも対象コミュニティに所属すらしていない人

※実例イメージ※
・不登校な児童/他校の児童/入学前の園児たち
・B2Bサービスを契約しているがアクティブにならずに休眠していたり、そもそもコミュニティプラットフォームに参加していないユーザーさん。またはB2Bサービスを契約していない未開拓のリード顧客。
・ソシャゲをインストールしているが非アクティブで休眠しているユーザーさん/またはダウンロードすらしていない未開拓のユーザーさん

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実際は上記のような複雑な図になりますが、このままだと考えにくいので、ピラミッドに簡略化して以下の図のように整理します。

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各階層の一般的なユーザー比率が、リーダーが0〜3%、フォローワーが5%〜20%、アクティブオーディエンスが10%〜40%、ノンアクティブオーディエンスが40〜80% (*7) と、ピラミッドの上層に行くほど対象ユーザーが少なくなるため、上層へのユーザー成長を検討する必要があります。

このようにコミュニティ・グロース・ピラミッドを自社の状況に沿って定義することで、「目標とすべきコミュニティの理想状態」を言語化して定義することが可能になります。

このように定義できればチームメンバーとグロースに向けたPDCAが回しやすくなります。

※注意※
ただし扱うコミュニティの目的、コミュニティコンセプト、コミュニティビジョン、コミュニティの存在意義といった初期条件によって、各層のユーザー比率の上限キャップはある程度決まってしまう側面があるため注意が必要です。まだコミュニティコンセプトが定まっていない場合は、コミュニティ・グロース・ピラミッドを作るのをストップし、コンセプトづくりに戻ることを強く推奨します。*8

4章:ピラミッドを活用した戦術

コミュニティ・グロース・ピラミッドが定義できたら、低階層から高階層への成長と各階層ユーザーの維持・活性化を考えます。論点は次の3つに集約されます。

・論点1.フォローワーからリーダーに転換し、維持活性化するためには何が必要か?
・論点2.アクティブオーディエンスからフォローワーに転換し、維持活性化するためには何が必要か?
・論点3.ノンアクティブオーディエンスからアクティブオーディエンスに転換し、維持活性化するためには何が必要か?

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様々なケースの事例を交えながら具体的に考えていきます。

論点1.フォローワーからリーダーに転換し、維持活性化するためには何が必要か?

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ここでは「興味の壁」「不安の壁」「継続の壁」という3つの壁を乗り越える必要があります。

1−1.興味の壁

コミュニティに参加したてのユーザーが「いきなりリーダーをやりたい!」と思うことは殆どありません。リーダーになることへの価値を認知してもらい、興味を持ってもらうことが必要です。

B2Bのコミュニティマーケティングでは何度かイベントを開催しリーダー候補のユーザーさんを発掘するアプローチが鉄板です。

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画像引用元:ファーストピンの見つけ方育て方*9

サムザップさんのゲーム、リンクスリングスではリーダー制度となるアンバサダープログラムを設計されています。アンバサダープログラムに協力するメリットを用意して応募をかけることで、積極的にコミュニティに貢献してくれるファン(リーダー候補)を集めています。

1stピン獲得アプローチとは異なり、制度設計的なアプローチです。

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画像:#MarketingLIVE Vol.4より

1−2.不安の壁

「ちょっとリーダーやってみたいな」と興味を持てても、一歩踏み出すにはとても勇気がいります。その心理的障壁を乗り越えて頂く必要があります。

チャネルトークさんではユーザーさんと共に「チャネルトークの活用記事」をテーマにしたアドベントカレンダーに取り組まれたそうです。このような素敵な共創型の企画があると興味がある方も、一歩踏み出しやすくなりそうです。

ゲーム実況配信コミュニティアプリのMirrativさんは、リーダーとしての投稿行動を促すために「言い訳の用意」に取り組まれています。定期的に「荒野行動を投稿しようキャンペーン」といったキャンペーンが定期的に開催されるのでユーザー心理としても「投稿するの怖いけど、まぁ、キャンペーン期間だしやってみよっか」という気持ちになりやすいと考えられます。

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ひとつ、重要だなと思っているのは「言い訳の提供」です。
観察していると「言い訳」ができることで配信に抵抗がなくなる人は多いんです。ミラティブの例で説明すると、まず配信を始めたい人って「わしの配信って需要ある?」とツイートしたりアンケートを取ったりするんですね。

つまり周りに「配信してほしい」と言ってもらいたいんです。そこで言い訳ができると「しゃあないな。ただし無言やぞ?」と配信をはじめます。すると、フォロワーとか友達とかが冷やかしにくるんだけど、「意外と何さんランク高いですね」みたいに褒めてくれたりもする。人が集まると人間って「もてなさなきゃ」って気持ちになるので、そうすると「次は声ありで配信します」って話になるわけです。それで、声ありで配信すると「イケボやん」と褒められたりする。気がつくと「今日もやっていくぞ!」と配信が習慣化されていく。

実はこうしたパターンが、典型的なミラティブ配信者への道のりなんです。

草の根から熱量を高めて配信者100万人。ミラティブが語る「灯火型」のコミュニティ立ち上げ論と、小さな配信の集合体が「視聴時間の80%」を支えてる話*10


1−3.継続の壁

せっかく勇気を持ってリーダーにトライしても「継続しない」という壁が待ち構えています。これを打破する鍵はフォローワーの存在です。なぜならリーダーがリーダーとして存続できるのはフォローワーの存在のおかげだからです。

コミュニティにおいてとても有名なTED動画ですが、これを見るとフォローワーの支持のおかげでリーダーがリーダーとして存続できるのだと理解できます。

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「今日は鬼ごっこ楽しかったよ!リーダーくんありがとう!明日もやりたいな!」と、そのようにフォローワーに支持してもらえるからこそ、リーダーは鬼ごっこの企画を継続してくれるのです。

クラスタのネットワーク密度を高めるにはリーダーの継続が不可欠です。しかしリーダーが継続するためには、逆説的ですがフォローワーの継続的な支持が必要です。

だからこそ熱量の高いリーダーとフォローワー同士を集め少しずつ熱量を高める焚き火戦略が重要になるのです。

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画像引用元:草の根から熱量を高めて配信者100万人。ミラティブが語る「灯火型」のコミュニティ立ち上げ論と、小さな配信の集合体が「視聴時間の80%」を支えてる話

例えばユーザーイベント開催後にアンケートを取りその結果をリーダーさんにフィードバックしたり、ユーザーさん同士でフィードバックし合えるようなチャット掲示板システムを導入することも重要な取り組みの一つです。

論点2.アクティブオーディエンスからフォローワーに転換し、維持活性化するためには何が必要か?

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見る専だった人が交流の輪の中に入る。輪の中で交流を継続する状態です。すなわち「一歩踏み出す」「安心できる環境がある」というステップをクリアすることを意味します。

2−1.一歩踏み出す

交流の輪の中に入ってもらうためには、その交流が楽しそうだと感じて貰う必要があります。リーダーやフォローワーの活動をイベントレポートにしてアクティブオーディエンスに届けるアプローチが効果的です。

またフィットネスバイクサービスのPelotonでは一歩踏み出すまでの動線が秀逸です。トレーナーによるトレーニングコンテンツに参加すると、他のユーザーも同時接続参加しているのです。サイクリング結果に他のユーザーの走行距離が表示されたり、SNSで連絡が取れるようになります。

このようなフィットネスは一人で継続するのは難しいもの。。自然とサイクリング仲間ができる導線になっているのです。

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画像引用元:Peloton公式HP

2−2.安心できる環境がある

熱量の高いコミュニティにするには「甲子園優勝するぞ!」というような熱いミッション・ビジョンが必要でしょうか?実は必ずしもそうではないところがコミュニティの奥深い点です。自分が自分のままで求められる空間がある。そんな安心できる環境整備が重要だったりします。

佐渡島
もっとも重要なのは、「安全・安心」を確保することです。「自分を認めてくれる人がいる」「発言することを歓迎される」「近い立場の人がいる」など、安全・安心の形は人それぞれですが、まずはその点を担保する必要があります。
僕は当初、「人々は熱狂によって動く」と考えていました。でも熱狂は、スタートダッシュには適しているけど、長くは続かない。それよりも安全・安心を確保してから、それぞれに適切な役割を与えると、人は自発的に動き始めます。箕輪
僕は2017年6月に箕輪編集室を立ち上げたんですが、もともとは「仕事が忙しいから手伝ってほしい」という動機でした。そのため「死ぬこと以外はかすり傷」というキャッチコピーを掲げて、全員に「走れ、走れ」とハッパをかけていた。
でもある時、佐渡島さんから今のような話を聞いた。
そこで、「別に走りたい人は走ればいいし、休みたい人は休んでもいい。参加している時点で貢献しているんだから、それぞれが自分なりのペースでやってほしい」というメッセージを発信したら、むしろ自ら手を挙げて動く人が増えたんです。【佐渡島×石川×箕輪】「1000年続く組織」の共通点*11

例えば「お互いの顔と名前を知らない」という状態では安心は生まれません。お互いに自己紹介できる掲示板がある。どうでもいい話ができる雑談スレがある。普段から何度も顔合わせをする場が提供され「いつものメンバー」ができる環境構築が重要かもしれません。

小学校ではクラス替えのタイミングでクラス写真アルバム名簿を配布したり、班を分けて常日頃から顔合わせる「いつものメンバー」ができる環境を用意したりと、素晴らしい取り組みが多数存在します。素晴らしいモデルケースです。


論点3.ノンアクティブオーディエンスからアクティブオーディエンスに転換し、維持活性化するためには何が必要か?

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コミュニティ内で休眠していたり、そもそもコミュニティに参加していない人にリーチして、コミュニティに新しいメンバーを呼び込むことはとても重要です。

第一に、新しいメンバーの参加がないコミュニティは、限界集落のように消滅の危機に瀕してしまうからです。

第二に、人の興味は永続的ではなく、移り変わるため、いつかはコミュニティを卒業してしまう可能性があるからです。マーケティング目的でコミュニティを運営する場合は既存ユーザーロイヤリティの維持だけでなく、コミュニティのバケツサイズを大きくする新規獲得にも力を入れる必要があります。*12 (※もちろん、マーケティングを目的としないコミュニティの場合はこの限りではない)

DeNAさんのゲーム「メギド72」では、熱量の高いユーザーさんの声を発見し、その思いを発信しやすいようにハッシュタグを提供し、プロモーション出向と連動させる取り組みを行われています。プロモーション効果はもちろんですが、ユーザーさんにとっても「自分の好きなゲームがトレンド入りしてる!!」とテンションが上がる素晴らしい取り組みです。

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画像引用元:【セミナー】非効率な施策が効率的なゲーム運営に繋がる…グリー・DeNAが明かすコミュニティマーケティングの考え方とその効果とは*13


以上のように、3つの論点を検討することで、コミュニティをグロースさせるアイデアを整理し、ピラミッドの各階層で提供する体験価値を定義できるようになります。

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これによりユーザーさんは、自分のニーズに沿った体験(ピラミッドの各層の体験)を"選択"できるようになります。

交流に興味はないが記事コンテンツで情報を得たいだけの人にはナレッジ共有価値を。ナレッジだけでなく他の参加者と交流したいユーザーには交流価値を。自分の好みに合わせてコミュニティを活用できるうようになります。

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画像引用元:The 7P’s of Community — A Simple Framework for Building Belonging*4

そして中には、各層の体験価値を経験することで、より上位層に移っていくユーザーさんもいるでしょう。はじめは見る専だったのが、交流の楽しさを実感し、次第にイベント企画の面白さに魅せられていくように、下層から上層へとコミュニティへのコミットメントが上がってきます。このようなコミットメントカーブが描けると理想的なコミュニティです。

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画像引用元:The 7P’s of Community — A Simple Framework for Building Belonging*4

5章:コミュニティのKPIとビジネスインパクト

コミュニティ・グロース・ピラミッドに沿って各層のユーザーを活性化できると、ネットワーク密度の高いクラスタと弱い紐帯により構成される複雑ネットワークが形成され「理想的なコミュニティ」に近づきます。

つまり理想的なコミュニティに近づくということは、人間関係ネットワーク資産が形成される事に等しいのです。そしてそのようなネットワーク資産は一夜では完成されません。最低数ヶ月以上かかるケースが一般的です。

コミュニティにはこのように”資産的な特性”があるため、アセット化されるまではインパクトが出ません。その資産的特性を加味したKPI整理が必要です。先行指標と遅行指標を切り分けて3段階で把握していく手法が効果的です。

1.CX:施策単位の体験の評価指標。イベント参加率、満足度など、定性情報含む(先行指標)
2.CE:ピラミッドの各階層のアクティブユーザー数(遅行指標)
3.Business Impact:コミュニティによって得られたビジネスインパクト(超遅行指標)

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基本的には1.CXと2.CEのモニタリングをしながらコミュニティ運営をしていく事になります。

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画像引用元:カスタマーエクスペリエンス(CX)とカスタマーエンゲージメント(CE)の違いとは?定義・歴史的背景から考える。

ただ、3のビジネスインパクトが鬼門です。

ビジネスインパクトは超遅行指標なのでこれの可視化は困難を極めるのです。Atlassianのように、ピラミッドのアクティブユーザー数に売上指標を掛け算して概算する方法が一般的です。

Atlassian Community Events (ACE) では、コミュニティイベントチームの重要なパフォーマンス指標として「総参加者数」を使用しています。ACE の参加者の行動を調べたところ、参加者の 81% が参加後 30 日以内に無料ライセンスをダウンロードし、34% が購入したことがわかりました。

アトラシアンの顧客 1 人当たりの平均収益は約 6,000 ドル、粗利益率は約 80% です。つまり、ACEの参加者1人あたり、0.34 x $6,000 x 80% = $1,632の増分収益が発生することになります。コミュニティメンバーの参加者1人を獲得するのに100ドルかかると仮定してみましょう。すると、CROIは次のように計算されます。

($1632 - $100) / $100 = 15.3倍のCROI

The Community Playbook for Founders*14

しかし、コミュニティはリーダー、フォローワー、アクティブオーディエンスの影響が相互に働く、複雑なものです。当然ながら影響は多岐に渡ります。扱うコミュニティの中にはAtlassianのようにビジネスインパクトの可視化ができないコミュニティも存在します。

その場合はどうしたらいいのでしょうか?

そんな時は、複雑な系をループシステムとして捉え直し、シミュレーションする手法「システムダイナミクス(SDモデル)」というアプローチを用いることがオススメです。いわゆるシステム思考です。各階層のユーザーの動きがどのように売上につながるのかシミュレーションできるだけでなく、「リーダーを増やすことによる全体への影響」「フォローワーを増やすことによる全体への影響」など予測が可能になります。*15

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画像:新規獲得マーケティング目的コミュニティにおける、システムダイナミクスのループ図一例

具体的な手法は割愛しますが、もしご興味ある方いらっしゃれば、以下記事の最終章でシミュレーション方法をご紹介しているのでご覧ください。


より詳細にコミュニティを分析する方法

KPIが整理出来たら、この3段階に沿ってコミュニティの状況をモニタリングしていきます。B2Bやオンラインサロンのような小規模コミュニティでは、1.CXの定性的な情報を重視しつつ、2.CEのアクティブ状況を見ていければ十分かもしれません。

しかしB2Cサービスなどの大規模コミュニティの場合は、時として詳細な分析が求められます。そんな先進的な分析事例をいくつかご紹介します。

DeNAさんではtwitterのtweetデータからコミュニティの抽出、コミュニティの時系列変化の可視化に取り組まれています。*16

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画像引用元:ネットワーク科学で挑戦するゲームマーケティング改革

他にはHR Techの領域では組織内ネットワークの可視化が可能なツールもあります。

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画像引用元:Quickly understand your team’s recognition trends with at-a-glance people analytics

一例の紹介でしたが、このあたりの分析に詳しい方いらっしゃれば是非教えて頂きたいです。

6章:コミュニティに携わる前に知っておきたかった2つのこと

最後にコミュニティに取り組む方向けに「もっと早く知っておけばよかった~」と思う心構えについてまとめていきます。

1.コミュニティの意思決定はやり直し不可能な一方通行であること
企業文化を作り直すことができないように、コミュニティも作り直しが困難です。例えばコミュニティの運営プラットフォームの選定はやり直しが効かない意思決定の一つです。一度根付いていしまったプラットフォームから別のプラットフォームに引っ越しを目論見て失敗した話をいくつかお伺いしました。現実世界でいうところの別の街にその市民まるごと引っ越しするようなものなのかもしれません。
そういう意味で右も左もわからないコミュニティ立ち上げ当時、外部からコミュニティの専門家を招き、相談できる状態にしていたらよかったなぁ。と強く思います。

2.言語化された論理よりも、言語化不可能な想いを大切にすること

これはコミュニティの運営に携わる中で気づいた大きな発見でした。ここまでのnoteでコミュニティの構造やらフレームワークやら論理的な整理を述べてきたのですが、コミュニティの運営にとってロジックドリブンに取り組むことは、全く本質的でないどころか、筋が悪かったのです。

ロジカルなフレームはあくまで整理と議論をするためのツールに過ぎず、「どうしたらユーザーさんに喜ばれるか」「どんな社会を作っていきたいか」という言語化困難な想いや違和感を大切にすることのほうが100倍重要だと学びました。

コミュニティコンセプト、コミュニティビジョン、コミュニティ価値、これらを考えることの方が本質なのです。

これは多くのコミュニティマネージャーの方から共感して頂ける話なので、やはりここに本質があるのだなと学びました。

以上、長文にも関わらず読んでいただきありがとうございました。

自分もコミュニティ立ち上げ当時は様々な方に助けて頂きました。そんな自分のnoteが他の誰かのお役に立てたら幸いです。

注釈および参考文献

*1:ネットワーク分析―何が行為を決定するか (ワードマップ) 安田 雪
「クラスター・ネットワーク密度」より

*2:人を助けるとはどういうことか――本当の「協力関係」をつくる7つの原則 エドガー・H・シャイン
「成果を上げる外科医チームの特徴」より

*3:withコロナ時代のコミュニティマーケティング考 ver1
「オフラインファースト・トラストファースト」より

*4:The 7P’s of Community — A Simple Framework for Building Belonging
「People: Choose right members and leaders. 」および「Participation: Take your members on a journey.」より

*5:私たちはどうつながっているのか―ネットワークの科学を応用する (中公新書) 増田 直紀
「グラフ理論・弱い紐帯」より 参考要約メモ

*6:リーディングス ネットワーク論―家族・コミュニティ・社会関係資本
より、マーク・S・グラノヴェッター(1973)「弱い紐帯の強さ(“The strength of weak ties”)」を引用

*7:様々なコミュニティ担当者への独自のヒアリング調査を基に算出。なお、コミュニティ・オブ・プラクティスによれば、以下のような比率が一般的とのこと

1.イベントを企画し、メンバー一人ひとりと密なコミュニケーションをとることで結び付けていく「コーディネーター」
2.積極的にコミュニティに参加し、コーディネーターを助ける「コア・グループ」(10~15%程度)
3.定期的にコミュニティに参加したり時折参加する「アクティブ・グループ」(15〜20%程度)
4.傍観者に徹し、自分たちなりに多くの学びを得ている「周辺メンバー」(60〜70%程度)
5.メンバーではないがコミュニティに関心を持つ人達「アウトサイダー」

*8:注釈
例えば小学校であっても、扱うコミュニティの位置づけによってリーダー比率の上限キャップが大きく変わります。先生のコントロール下で児童に学校運営を手伝ってもらうことを目的とした「学級委員制度」の場合は、その時点で自発的にリーダーが生まれにくい構造ですし、リーダーがフォローワーを巻き込む活発なクラスタも発生しにくくなります。他方、「児童同士が自分の好きな遊びでつながり仲良くなること」を目的とした「放課後の自由タイム」の場合は、「サッカーやろうぜ!」「ドッジボールやろうぜ!」と児童の自発的なリーダー転換が見込めます。コミュニティの位置づけ次第で各階層で享受可能な価値がある程度決まってしまうため、各層のユーザー比率の上限キャップもある程度決まってしまうのです。
またコミュニティのコンセプトはコミュニティの寿命を定めてしまう点でも重要です。ある数学者コミュニティはフェルマーの最終定理が解かれてしまったことで解散してしまいました。一方で仏教では「色即是空 空即是色」など、一生をかけても到達不可能な領域を目指す旅となるため、長期に渡って価値を享受でき、数世紀をまたいで繁栄する宗教コミュニティになっています。

*9:ファーストピンの見つけ方、育て方
「P.25 1stピン獲得プロセス」より

*10:草の根から熱量を高めて配信者100万人。ミラティブが語る「灯火型」のコミュニティ立ち上げ論と、小さな配信の集合体が「視聴時間の80%」を支えてる話

*11:【佐渡島×石川×箕輪】「1000年続く組織」の共通点

*12:ブランディングの科学 誰も知らないマーケテイングの法則11
「ダブルジョパディの法則」「自然独占の法則」より

*13:【セミナー】非効率な施策が効率的なゲーム運営に繋がる…グリー・DeNAが明かすコミュニティマーケティングの考え方とその効果とは

*14:The Community Playbook for Founders
「Measuring Community ROI」より

*15:システム思考―複雑な問題の解決技法 (BEST SOLUTION)
このシステムダイナミクスという手法に出会ったとき、とても感動しました。複雑に見えた現象をモデル化して捉える手法があったのかと!コミュニティではROI可視化できない問題は必ず直面します。その解決策の一助になる素晴らしい手法でした。ところで海外ではシステムダイナミクスでコミュニティを分析する手法が「Community Based System Dynamics」として体系化されているようです。15000円もするので手が出せないでいるのですが、折半してくれる仲間を募集中です笑

*16:ネットワーク科学で挑戦するゲームマーケティング改革

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このnoteでは日常で気になった事や、雑多な気付きをメモとしてまとめています