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なぜレモンカレー🍋に感動するのか?店舗体験における「期待値ミート」のポジショニング

これは、日常で感じた事のメモ書き。CX(UX)に関する雑な仮説のメモ書き。

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とあるランチにて

先日カフェで「レモンカレー」を食べました。

「レモンのカレーって珍しいなー。どんなカレーなんだろうか?」と待っていたら、、

店員さんが運んできてくれたカレーに、私は驚きました!

まるで月のような綺麗な見た目だったのです!

青い皿もこのメニューのためだけに用意されているようでした。

凄い…!
お店の工夫に大変驚きました。

しかし、なぜ私はレモンカレーに驚いたのでしょうか?

カレーを食べながら思いました。

そして思ったのです。

「メニューに写真が載っていなかったこと」これがとても重要だったのではないか?

と。

その店のメニューには写真が載っていませんでした。見た目が分からなかったので「レモンカレーって珍しいな。どんな味がするんだろう?」くらいにしか思っていなかったのです。そんな月のような綺麗な見た目だとは…想像もしていなかったのです。

だからカレーを見た瞬間驚いたのでしょう。想像していなかったから。

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もし、あらかじめメニューに写真が載っていたらどうでしょうか?

きっとここまで驚くことはなかったでしょう。「メニュー通りのカレーが来た!」としか思わなかったはずです。

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「メニューに写真が掲載されているかどうか」

たったそれだけで、驚きや感動のレベルが大きく変わってしまうのです。

事前期待によって変わってしまう知覚反応

つまり、体験前の期待値によって、驚きや感動といった知覚が大きく変わってしまうのです。

したがって驚きを生むためには、体験時に事前期待を大きく上回る必要があります。そのギャップが大きければ大きいほど、驚きが大きくなります。


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これは飲食店に限らず、あらゆる体験で同様の事が言えると思います。

実際、顧客満足度を図る指標「JCSIモデル」でも、顧客満足度は期待値によって決まってしまう事が知られています。

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引用元:https://callcenter-japan.com/magazine/2887.html

いずれにしても、体験前後の期待値ギャップの大きさが、驚きを生むのです。

飲食店体験フローにおける「驚き」の設計

さて、当然のことながら「レモンカレー到着時」だけが重要ではありません。料理の味、店内の雰囲気も重要な要素です。

つまり、
・1.来店
・2.メニュー注文
・3.料理到着
・4.食事中
・5.会計・帰宅
といった飲食店体験フローにおいて、期待値をマネジメントすることが重要ではないでしょうか?

体験前後の期待値越えが、知覚刺激(驚き)を生むのです。

気を付けなければならないのは、期待値を下回ると、同様に知覚刺激が発生してしまうという点です。

そう、ネガティブな知覚が。

マイナス期待値ギャップは、負の記憶付けを行います。

「あの店は不味かったから、もう二度と行かないな~」と思われてしまいます。おそらく想起はされるでしょう。しかし、マイナスな想起となり、購買の選択肢(エボークト・セット)に入らなくなってしまいます。つまりお店はリピート顧客を逃します。

また、ギャップがあまりにも大きすぎると、クレームをもらったりや悪い口コミを流されたりしてしまいます。強い知覚刺激は、行動に転換されるのです。もちろんそれがポジティブなものであれば「その場で写真撮影しSNSでシェアする」という行動に変わります。

つまり店舗体験においては
・1.体験フローの、どのポイントで期待値越えを狙うのか?
・2.負のギャップ「期待外れ」を防げるか?
・3.総合的な知覚刺激を、どのようにマネジメントするか?

という点を考える必要があるのではないでしょうか。

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ケーススタディで考える

さて、イメージしやすいようにAさんが架空のカフェに訪れた例を考えてみましょう!次のようなステップを踏んでいきました。

もちろんそのカフェの看板メニューはレモンカレー🍋です笑

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・1.来店
私は街中でおしゃれな雰囲気のカフェを見つけました。窓を覗くと雰囲気も良さそう。「ここにしよう」と店内に入ると想像通り良い雰囲気の店内
・2.メニュー注文
さっそくメニュー注文しよう。本日のおすすめに「レモンカレー」と書いてある。珍しいなどんな味なんだろう?これにしよう。しかし、席について5分、、いつまでたってもお水が来ない。どうやら店員が忙しい様子。「すみませんー!」と声をかけても全然来てくれない…。店内が混雑しているならまだわかる。対して混んでないのにどうしてそんな忙しいんだ。半ばイライラしながら注文する。
・3.料理到着
メニュー注文してから数分。「おまたせしました^^」と店員がレモンカレーを持ってきた。メニュー注文は遅いのに、商品到着は早いんだな。おおおー!まるで月のような綺麗な盛り付け!色合いも素敵!これはインスタ映えする!そう思ってすかさず写真を取り、instagramにアップした。
・4.食事中
instagramからさっそくいいね通知が!益々テンションが上がる。いったいどんな味がするんだろう?ワクワク!・・・あれ?あんまり美味しくない。。。下手したらレトルトカレーのほうがおいしいんじゃ…?
・5.会計・帰宅
さてお会計。。え!!?電子マネー使えないの?え?クレジットカードも使えない?現金のみ!?そんなー。普段あまり現金持ち歩かないから…。今回は何とかなったけど。。

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さて、顧客はリピートしてくれるでしょうか?

リピートしなさそうですよね。

数多くの「期待外れ」に陥ったため、総合的にマイナスな印象を持ってしまったからです。

また、料理到着のポジティブな「驚き」はリピートの動機にならないからです。一度instagramに投稿してしまったら、二度目の投稿は不要でしょう。

以上のように、今回のケースでは別の新規顧客獲得に貢献します。しかし、マイナスの体験が多かったためリピートは見込めません。

飲食店体験フローのどこに注力するかで、ビジネスインパクトが変わってしまうのです。

店舗における「驚き」のポジショニング

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逆に言えば、驚きを意図的に設計することで、ビジネスインパクトを意図的に狙うことができると考えられます。つまり体験フローの中のどこに「驚き」のポジションを取るのかということです。

例えば、SNS口コミによる新規顧客獲得を狙いたい場合は、「料理到着時」驚きのポジションを取ると効果的でしょう。写真映えする見た目にすれば、instagramの投稿を狙えます。

マクドナルドも数年前から、口コミを狙った包装パッケージに切り替えています。

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引用:「プレバズのKPI化」「話題化を軸にした商品設計」マクドナルド足立氏が明かすマーケティングのツボ

また、最近だと動画映えの重要度が増しています。

動画映えする「動的な体験」を狙えば、ストーリーズやTikTokなどの短尺動画プラットフォームでのシェアを狙えます。

いくら丼盛り付けパフォーマンスが有名ですよね。単にいくら丼を出すのではなく、いくら丼を盛り付けるプロセスを見せ、完成過程を楽しんでもらえます。(再生時間10秒ほど)

最近の店舗ではこのような動画映えするパフォーマンスが増えています。

また、リピート顧客を狙うなら「食事中」に「驚き」のポジションを取ると効果的かもしれません。

例えば串カツ田中のチンチロは楽しいですよね。チンチロを回すだけで一緒に飲みに行った人とのコミュニケーションが活発になります。またランダム性があり、また来店して挑戦したくなります。

店内の雰囲気がよく、リラックスしてコーヒーと読書を楽しめるカフェは落ち着きますよね。また通いたくなります。

以上のように、驚きのポジショニング次第で、口コミに効くのかリピートに効くのか、ビジネスインパクトが変わってしまうのです。

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引用元:串カツ田中 自由が丘店

顧客ターゲットが変われば取るべきポジションも変わる

さて、すべての店舗に共通するポジショニングの勝ちパターンは存在しません。なぜなら顧客ターゲットごとに取るべきポジションが変わるからです。

観光地のようにリピートが狙えない立地の場合、効率的に刈り取る事や、次の新規顧客を呼び込む口コミ設計が重要です。

しかし、リピート顧客で生計を立てる地元密着型店舗は、リピート狙いの設計が重要でしょう。

したがって地元密着型店舗で、むやみにインスタ映えを狙うと危険です。

インスタ映え目的の新規顧客が大量にやってきて、店の雰囲気を壊してしまいます。リピート顧客にとって居心地の良い空間ではなくなってしまうのです。

リピート顧客を失います。

実際に閉店の検討を余儀なくされた店舗も報告されています。

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東京都内の下町にある、わずか4席の小さなカフェ。10年前から手作りのロールケーキを提供してきた穏やかな店が今、突如として閉店の危機に追い込まれている。
店主はある日、手作りジャムで余ったフルーツを、ちょっとした“サービス精神”で、ロールケーキの上に大量に乗せて提供したという。
ところが、これを提供された客が喜んで写真に収め、インスタグラムにアップ。すると後日、これを見た人々が、日本だけでなくアジア各国から大量に押し寄せるようになってしまったのだ。
だが、それでは終わらなかった。これまで常連がメインだった客層も一気に変わり、店内は毎日が「大撮影大会」の様相となったからだ。
中には、ガラス越しに店の外から撮るなど、近隣に迷惑となる行為まで横行。遂に閉店を検討するに至ったというのだ。

by #消費 ステマ相場は1フォロワー1円。撮ったら次「インスタ消費」の全貌

「驚き」よりも重要な事

さて、ここまで

・1.体験フローにおける期待値ギャップを設計し、総合的な知覚体験をマネジメントすることが重要であること
・2.どの体験で「驚き(ポジティブな期待値越え)」を狙うのかポジションを取ること
・3.また顧客ターゲットによって取るべきポジションが変わること

という考えを述べてきました。

しかし、ここまで読んでいただけたら、一つ疑問に思うはずです。

あれ?よくよく考えたら、事前に食べログで調べて雰囲気を知ったり、事前に口コミを見てから来店するのが一般的だよね?つまり、事前の期待値が高い状態で来店するわけだから、大きく期待値を上回ることってそうそうないんじゃない?だいたい期待値通りだよね?

と。。。

そうなのです。考えてみれば日常の体験で驚きや感動が生まれる瞬間ってそうそうないんですよ。驚きがなくても口コミをしてくれますし、リピートしてくれている事実に気づくはずです。

そう。散々「驚きのポジションを取ろう」と言ってきた主張ををひっくり返すようですが、私は「驚き」は最重要な要素ではないと考えています。「驚き」よりも重要な要素があると。そう考えています。

それは「期待値にミートする」ということです。

人はなぜ旅行に行くのか?

未知の体験がしたいからではありません。「すでに誰かが体験して満足度が保証された外さない体験」を追体験することを多くの人が望んでいます。つまり大半の人は事前の期待値を満たしたいのです。期待を上回ればそれはそれで嬉しいですが、期待通り満足することの方がはるかに重要です。

人は期待すると同時に「本当に期待しても良いのだろうか?ドキドキ」という不安を抱えます。期待にミートすることで、そのような不安の鎖から解放され「良かった!期待通り美味しくて雰囲気のいいバーだ!」と満足感を得ることができるのではないでしょうか。

つまり、①期待値越えを狙うことよりも、③期待外れを防ぎ、期待にミートすることがはるかに重要だと考えます。

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・店員が忙しくてメニューの注文が取れない
・料理がいつまでたっても来ない
・店内が混雑して騒がしくてリラックスできない
・料理がおいしくない
・電子マネーで決済できない

このような期待外れを解決することが最も重要でしょう。

これは「おもてなし幻想」でも語られています。本書に掲載された調査によれば、顧客の期待を上回ることを目指すよりも、顧客の期待を満たすことがロイヤルティに影響を与えることが分かります。

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とはいえ、「期待値にミートする」ことは想像以上に難しいことではないでしょうか。なぜなら、顧客の環境が変われば期待値も変わってしまうのです。電子マネーが普及すればするほど「電子マネーで支払えないこと」が深刻なペインになってしまいます。
例えば、スマホで店内混雑状況をリアルタイムに確認しワンタップ予約ができるようになったり、移動中にスマホで商品注文することが当たり前になると、そこに対応しない店舗は期待にミートできなくなってしまいます。

まとめ

さて、まとめです。

・1.「驚き」は事前期待値とのギャップで生まれる
・2.負の期待値ギャップはネガティブ評価を生んでしまう
・3.ギャップが大きいと知覚刺激も大きくなる。記憶に残りやすくなったり、行動転換につながる
・4.単一の体験ではなく、店舗体験フロー全体で「驚き」「期待外れ防止」を設計し、総合的な知覚刺激をマネジメントする考えが大事
・5.マネジメントするうえでどこの体験にポジションを取るのか考えよう。体験フローにおける「期待値ミート」のポジションを変えよう。「期待値ミート」は「驚き」よりもはるかに重要!
・7.ポジションを変えることで、口コミや記憶記銘率と言った、可変可能なドライバーにアプローチでき、ビジネスインパクトをある程度コントロールできる
・8.どこにポジションを取るべきかという戦略は顧客ターゲットによって変わる

こんな感じの妄想をレモンカレーを食べながらしていたのでした笑
レモンカレーは凄い!🍋

そして、これはただの仮説です。検証できていませんし具体論も欠けています。ぜひこの領域に詳しい方にご教授頂きたいです!「実はこういう手法体系化されてるよ~」とか、「記憶に関する論文はココがオススメだよ~」とか、「現場のこと何も分かってないよ。現場の実情はこんな感じだよ!」などなど、情報頂けると喜びます。

余談:ポスト店舗体験を見落とすな

店舗での総合評価がマイナスでも、挽回できる余地はあるかもしれません

例えばインスタに投稿したレモンカレーの写真が想像以上にバズり、500いいね突いた場合、承認欲求が満たされドバドバと脳汁が出ることでしょう。良いイメージにすり替わると考えられます。

なぜなら記憶は文脈に依存するからです。エピソード記憶と言われるように、文脈と記憶は強く関連付けられます。一見するとSNSという単体体験の知覚が、店舗体験の記憶としても保存されると考えられます。

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つまり重要なのは、店舗体験終了後の「ポスト店舗体験」も店舗体験としてみなされることではないでしょうか。

例えばディズニーでは「ポスト・パーク体験」に取り組んでいます。お土産を買って持ち帰る事で、帰宅後もディズニーの余韻に浸れますし、購入したお土産を見ることでパークの思い出が思い起こされます。(エピソード記憶)

またグリーティング(キャラクターに会えるアトラクション)に参加すると、ディズニーのキャストさんが一眼レフカメラで写真を撮影してくれます。キャストさんに紙を渡され、そこに書かれたウェブサイトに飛ぶことで、オンラインで写真が注文できるのです。パーク終了数日後であっても注文した写真を受け取る感動体験が待っているのです。

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引用:ディズニーウェブサイト

ポスト店舗体験も取り組みましょう。手法は難しいですがデジタルなタッチポイントで顧客接点を作り、顧客との関係性を保つ方向性は一つの解だと考えられます。

まさに顧客との強固な関係性を保つ、カスタマーエンゲージメントの取り組みです。

手前味噌で恐縮ですが、カスタマーエンゲージメントの具体手法は当社発信の情報がオススメです。先日もCustomer Engagement Conference Tokyoを開催しました。

余談:直前の体験に引きずられてしまう期待値

体験前の期待値は、直前の体験に引きずられると考えられます。月のような綺麗なレモンカレーの見た目の感動が大きいほど、味への期待も大きくなるケースがあるのではないでしょうか。

「見た目の期待値が高く無ければ、味の期待値はミートしていたはずなのに…笑」というケースはあるかもしれません。

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余談:色彩を考えられたレモンカレーの配色比

レモンカレーの葉っぱ。これが絶妙です!

葉っぱがどれだけ重要か、試しに葉っぱの有無で画像を比較してみましょう。

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一目瞭然ですね。このように色彩のバランスが整っており、葉っぱがアクセントカラーになっているのです。そこも感動ポイントでした笑

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引用元:デザインは3つのテーマカラーを使うべし!配色の基本テクニック 

余談追記:サイゼリヤの事例から考える

このnoteを公開した後に、ふと正垣さんのサイゼリヤ本を思い出しました。

過去の読書メモを引っ張り出して読み返してみると改めて腹落ちする事が多かったです!大変な良書


余談:フレームワークのダウンロード

さて、別の店舗でも妄想できるように、自分用にフレームワークを作成してみました。もしご興味あればダウンロードしてご活用くださいませ!m(__)m

PowerPoint ver: フレームワーク「顧客体験フローの知覚マネジメント」

PDF ver: フレームワーク「顧客体験フローの知覚マネジメント」

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参考文献

JCSI(⽇本版顧客満⾜度指数)について:公益財団法人 日本生産性本部サービス産業生産性協議会

顧客満足[CS]の知識

確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力
⇒エボークト・セット

「プレバズのKPI化」「話題化を軸にした商品設計」マクドナルド足立氏が明かすマーケティングのツボ

#消費 ステマ相場は1フォロワー1円。撮ったら次「インスタ消費」の全貌

おもてなし幻想
⇒期待値とロイヤルティの分析調査
⇒※ロイヤルティの定義

【顧客ロイヤルティの定義】
・再購入
顧客があなたの企業から引き続き購入すること
・顧客内シェア
顧客があなたの企業から購入する割合が増えること
・アドボカシー
顧客があなたの企業のことを周囲(友人等の身内やネット上など)にまで褒めること

エピソード記憶と文脈依存効果(静岡産業大学 漁田武雄)

デザインは3つのテーマカラーを使うべし!配色の基本テクニック

サイゼリヤ おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ

最後に

最後まで読んでいただきありがとうございました!m(__)m
twitterもやっています。感想頂けると嬉しいです!

Special Thanks!
このnoteは@spiritoso1617 さんにアドバイスを頂きながら作成しました!本当にありがとうございました!

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ありがとう…
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B2B SaaSのカスタマーエンゲージメントプラットフォームReproにて、カスタマーサクセスを担当しています。このnoteは日常で気になったことをまとめたメモ帳です。
コメント (1)
なぜKengoIwataに僕は感動するのか。。。 😋
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