見出し画像

半側空間無視の評価

一般的な机上評価
半側空間無視を評価するために最も一般的に用いられている机上の評価はbehavioral Inattention Test (BIT) 1)です。BITは通常検査と行動検査があります。通常検査は線分抹消試験、文字抹消試験、模写試験、線分二等分試験などが含まれます。また、行動検査は写真課題や電話課題、時計課題など日常生活場面を模した検査が可能です。
このBITは机上で容易に検査ができる一方で、机上検査では点数が良くても実際の日常生活場面になると机上検査の点数よりも無視症状が目立つといった、机上の点数と実際の日常生活場面との乖離が認められることがあります。また、机上検査のため麻痺でペンを把持できないことや検査に時間がかかるため集中力が必要であるなどの理由で検査が困難な場合もあります。さらに、筆記による検査では、症状の特性を捉えることが困難であることが言われています。
また、頭部や体幹の状態によっても机上評価の結果が異なると報告されています2)。論文では、図1のような5つのポジションにてLine bisection taskとReading taskを行いました。

スライド1

結果は、体幹が左回旋している状態(2番のポジション)と頭部が左回旋している状態(4番のポジション)で結果が左側へ偏移したと報告しており、他の3つのポジションでは右に偏移したままであったと報告しています。このように、BITなどの机上評価を行う場合は体幹や頭部の位置を整える環境設定が重要になってきます。

一般的な観察評価
一方で、Catherine Bergego Scale (CBS)という観察評価があります3,4)。このCBSは机上評価ではなく、セラピストが患者の機能を直接観察によって評価する方法です。この評価は10項目の日常生活場面で0点が無視症状なし、4点が重度の無視と4段階で点数をつける評価です。また、患者自身で自己評価を行い、セラピストが付けた点数と患者自身が付けた点数の差を計算することで病態失認の評価も可能です。
しかし、CBSは10項目の詳しい判断基準はなく、2点なのか3点なのかなど判断に迷う場面があります。そこで、CBSを使用するための前段階の評価とこれらを解決するためにKessler Foundation Neglect Assessment Process (KF-NAP)という評価が開発されています5,6)。この評価法はまだ日本語訳にはなっていませんが(2020年6月現在)、CBSの内容とほぼ同じで、腕の認識,身の回り品 (患者の身の回りにある3つの物の場所を尋ねて観察する)、着脱動作(シャツまたはコートを着るように頼む)、整容動作(洗面所にて歯ブラシ、タオル、くしなど3つの動作をしてもらう)、視線の方向、聴覚的注意(患者の左側と右側で音を鳴らして反応するかを観察する)、ナビゲーション(例えば、リハビリ室から自分の部屋までの行き方を尋ねる、空間認識の評価になる)、衝突(歩行または車椅子などでの移動時に物に衝突しないか)、食事、食事後の清掃の10項目から構成されており、4段階で評価します。1-10点が軽度、11-20が中等度、21以上が重度です。

以下では、自己中心座標と物体中心座標の無視の評価、近い空間と遠い空間の無視の評価、眼球運動の評価、タッチパネルやVirtual reality を用いた評価、身体無視の評価について説明してあります。

ここから先は

4,898字 / 3画像
この記事のみ ¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?