見出し画像

『MARY POPPINS(メリー・ポピンズ)』こっちは魔女のジジ・ストラレン

11/5 14:30
Prince Edward Theatre

ロンドン3本目。メリー・ポピンズである。「一番好きなミュージカルは何か」と聞かれるのは、「一番好きな食べ物は?」と聞かれるのと同様、ぱっと答えるのは難しい。しかし「海外発のミュージカル」と絞られたら、たぶん「メリー・ポピンズ」と答えるだろう。そのぐらい好きな作品。

ブロードウェイでは4回観た。

日本公演も、ブログあげてないけど相当観てる。特に、2022年の笹本玲奈メリーが国内マイベストメリー。

と、メリー・ポピンズ好きな自分が注目していたのが、ウエストエンド再演のニュースだ。主演はジジ・ストラレンが務めるという。その名を聞いてぴんと来なかったが、あの微妙オブ微妙だった映画『キャッツ』でタントミールを演じていた女優さんだ。

が、この公演は積極的にプロモーション映像を制作、公開しており、その姿があまりにもメリー・ポピンズ過ぎてずっと心惹かれていた。そしてようやく水際対策緩和。となれば、あのメリーに会ってみたいと考えるのが人情というもの。

プリンス・エドワード劇場は初めて来る劇場だ。

わくわくドキドキしながら開演を待ち、幕が上がってついに憧れ(?)のメリーさんが登場し、ジェーン&マイケルの求人広告を読み上げる。
「そこそこキレイ・・・問題ありませんわね?」

問題あるよ!そこそこどころじゃないよ!国が傾くレベルだよ!

容姿に負けず劣らず綺麗に伸びる歌声に、指の先まで華麗なダンス。もうメロメロ(死語)になってずっとメリー・ポピンズを追ってるうちにいつの間にか終演していたほどだ。

見た目の素敵さだけでなく、表情や全身で表現するメリー・ポピンズの内面もダイレクトに伝わってくる。もともと謎めいたキャラクターなので、その心情には解釈の余地が大きいが、凛とした佇まいは「孤高の魔女」といった雰囲気で、時折見せるキュートな笑顔はその孤独を逆説的に感じさせる。観終わっても心から離れない魅力的な存在だ。

この「メリーべったり」の目線が、バートの視点と重なったからか、何となくバートのこともいろいろ考えさせられた。バートについても謎が多く、一般的には「昔、メリーに育てられた経験がある」という見方がされている。しかし、この舞台のバートは、彼自身が少し不思議な力を持っているそぶりも伺え、メリーとは違った世界の異世界の住人――例えば「堕天使」のような――にも見える。魔女と天使、決して交わることのない世界の出身ながら、どちらもその世界に馴染めず人間界にドロップアウトしてきたことで妙な親近感、それ以上の感情が生まれている――そんな行き過ぎた妄想もちょっと広がる。

これほど何度も観ている舞台なのに、また新しい視点で楽しむことができた。本当に素晴らしい作品。このウエストエンド公演はすでに年明けのクローズが発表されているが、次はどこで観ることができるだろうか?

MARY POPPINSロンドン公演のウェブサイト





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?