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新人 1-2  北池袋に進路を取る

先輩が出て行くと、所属するMRは全員出払っていて、所長と新人だけが取り残された。所長は相変わらず誰か、外国人と思しき人と電話で盛り上がっていた。

靴を履いたままの足をデスクの上に投げ出し、禁煙オフィスではあるが、タバコをふかしながら一頻り話が終わって電話を切るや否や、新人に話しかけてきた。

「おい、新人君、わりーけど乗っけてくれねーか?」

聞き治すと、北池袋まで営業車で乗せて行って欲しいと言うことだった。定時にはまだ1時間半ほど早いが、営業所には何も監視カメラがあるわけでもなし、本社が勤怠管理をしているような会社でもなかった。

何が起こっているのか、勝手がよくわからないまま、本社研修上がりで、営業所出社初日に新人は、営業車に所長を乗せて言われるがままの進路にアクセルをふかした。

池袋に着いた。

「おい、そっち右曲がっとパーキングあるから、そこに止めろよ。領収証とっとけ。」

「お前、飯食ってくか? 寿司でも食うか?」

所長に言われるがままに、新人君はコインパーキングに車を止めると、足早に所長の後を追った。

・・・寿司奢ってくれるなんて、満更でもないな。

新人君が期待半分、不安半分で所長の後を歩くと雑居ビルの汚いエレベーターのボタンを所長は押した。こんなビルの寿司屋は、嫌だな。。新人がそう感じると、所長はエレベーターを降りて、ドアを開けた。

「いらっしゃーい!!」

場所は北池袋の香港バー。ホステスはみんな香港人で、ロングスリットのスカートから膝上25センチくらい露出。まだ午後6時前。冷たいオシボリを笑顔の若いホステスから受け取ると、促されるがままにソファーに腰をかけた。

「きゃー! 若い人来た!」

中国語訛りの黄色い声でホステスに持て囃されて、為す術もない新人君。おしぼりで顔拭くと、黄色い声が露わになった太もものまま密着してきた。

「そうだよ、うちのエリート若手のホープ連れてきたぞ。あははは。」

所長はそう言うと、勝手を知った一際美人で異彩を放っているホステスを隣に座らせた。おそらく所長の女である。

ここまで、何が何だかわからないまま、時間が過ぎた。

「ママさん、新人に寿司取ってくれよ。」

「な、寿司でいいだろ。」

ママさんに寿司の出前を頼んで、所長は新人に話しかけた。まさかこんなところに来るなんて。

「カンパーイ!!」

ウイスキーの水割りを渡された新人だが、

「あ、所長、あの、車なんで。。。」

と言いながらそれを躊躇うと、

「ああ、いいよお前。明日の朝取りに来いよ。な。パーキングの領収証とっとけ。今日はタクシーで帰れ。それも領収証とっとけよ。」

そう言いながら所長は1万円札を3枚新人渡して、乾杯をし始めた。

・・・て言うか、明日は火曜日だけど

白い太ももと、大きく開いた胸元で、新人君の隣のホステスが密着してきた。聞いたら20歳らしい。まじかー、空きっ腹なので、酒の回りが早いのか、新人君もはしゃぎ始めた。

・・・ま、いっか!!!

「おい、お前、歌えよ。スマップ。あははは。」

所長にマイクを渡された。

ようやく午後6時になろうとしていた。


【注意】この物語はすべてフィクションで全く想像の世界です。


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1992年に新卒でMR。ゴルフ、麻雀、接待が仕事の時代。2002年に突然全てを辞めて渡米。NYで大学に通いながら、ヤフオクでビジネスを始める。NYの大学で出会った日本人彼女と結婚。帰国後製薬会社の本社に復帰。2007年から全く別の仕事を今も続けている。
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