米国株マーケット考察 2021.1.16

マーケットサマリー

米国株式市場は続落。ダウ平均は177.26ドル安の30814.26ドル、ナスダックは114.13ポイント安の12998.50ポイントで取引を終了しました。ニューヨーク証券取引所の出来高は前日比1億9478万株増の12億8838万株。

週間ではダウ平均が0.91%安、ナスダック総合が1.54%安とともに5週ぶりに反落し、S&P500も1.48%安と3週ぶりに反落しました。

下落要因は:
(1) 2020年10~12月期決算を発表したJPモルガン・チェース、ウエルズファーゴ、シティの大手金融3社は予想を上回る企業収益にも拘らず、コロナの状況や金利先行き低下推移から1-3月期の決算への懸念増

(2) 経済指標はまちまちな中、株式市場は12月の小売売上高に反応
・12月の小売売上高:前月比0.7%減( 予想: 横ばい)
・12月設備稼働率:74.5%(予想:73.6%、11月:73.4%←73.3%)
・12月鉱工業生産:前月比+1.6%(予想:+0.5%、11月:+0.5%←+0.4%)
・1月ミシガン大学消費者信頼感指数速報値:79.2(予想:79.5、12月:80.7)

(3) バイデン大統領が提示した1.9兆ドル規模で、失業給付の上乗せを週400ドルに増額し、期間を9月まで延長するほか、直接給付は現行の600ドルから2000ドルまで増額したい意向の追加経済対策を巡り議会での承認が困難になるとの懸念

(4) 米ファイザーの新型コロナウイルスワクチンが、ベルギー工場の改修のために欧州やカナダで供給が遅れるとの報道

(5) 新型コロナウイルスによる死者数の増加で期近の回復見通しが悪化したこと

(6) 3連休を控えた米株式市場は利益確定売りが出たこと
でした。

全体的な雰囲気に関して、バイデン政権樹立後の100日間のハネムーン期間は例年通り大丈夫かもしれないですが、ブルースイープと言っても、現実のハードルは結構高いことを示唆してます。今年の株式市場の先導役は金融、エネルギー、素材、資本財ですから、それらセクターが先導役を担わないとなると、株式市場にはマイナスのインパクトを与えることとなるでしょう。

また、追加景気刺激策の効果で夏以降のポジティブなシナリオを描けるものの、バリュー株なのかグロース株なのかも含めて、手前半年のシナリオを決める決定打に欠けているように見受けられます。

今週は好調な米国債入札や弱い指標で債券利回りは低下に転じましたが、米ドルインデックスは反対に上昇しました。ここからも投資家が相場の方向性を決めかねていることが窺えます。

用語解説


-米国小売売上高ー米国内で販売されている小売業・サービス業の売上高を集計したもの。米国の個人消費の動向を表しています。米国は個人消費がGDPの約7割を占めており、他の先進国より高い傾向にあります。その為、個人消費の動向が景気全体に与える影響も大きいため、注目度の高い指標となっています。

全体に占める売上高の割合が最も大きい「自動車及び同部品」部門は、販売店のセールなど景気と直接の関係がない要因による月ごとのブレが大きいこともあり、自動車を除いたコア部分の注目度が高いです。

-設備稼働率は、米国の生産能力に対する生産量の比率(工場、炭鉱および公益事業を含む)。
設備稼働率は経済全体の成長と需要を示しており消費者物価指数(CPI)の先行指標としての働きもあります。しかし、生産能力は測定が困難であるため、この数値は注意深く見る必要があります。80%を超えると投資が活発化すると言われています。予想より高い結果となれば米ドルにとって買い材料とされますが、予想より低い場合は米ドルにとって売り材料と解釈されます。

-鉱工業生産指数ー米連邦準備制度理事会(FRB)が 米国の製造業(米経済の20%)の鉱工業部門の生産活動状況を指数化したもので、景気全般の動きとかなり密接な関係を持っておりGDPの推移と強い相関があります。米国の製造業の生産活動の状況、設備投資の状況を反映しているため、生産動向を測る上で重要視されています。 3ヶ月に1度しか発表されないGDPと異なり月次で発表されるため、速報性に優れています。

-ミシガン大学消費者景況感指数ー米国の消費者マインドを示す指標。ミシガン大学の調査研究センターがアンケート調査を実施し、毎月300人を対象とした速報値、500人を対象とした確報値を発表しています。

現在の景況感を示す現状指数(約40%)と先行きを示す期待指数(約60%)で構成されています。調査会社コンファレンス・ボード(CB)の消費者信頼感指数に先行して発表されるため、市場関係者の注目度が高い指数とされています。

-ブルー・スウィープ( トリプルブルー)ー大統領が民主党で議会選挙でも上下両院を民主党が抑える状態。

-グロース株ーグロース株とは企業の売り上げや利益の成長率が高く、その優れた成長性ゆえに株価の上昇が期待できる株式のことで、「成長株」とも呼ばれます。革新的な商品やサービスを通じて市場シェアを拡大し、増収増益を続けているような企業が多く、一般に投資家の人気が高いという特徴があります。ひところのIT株のように、ほんの数年で株価が数倍~数十倍に上昇するものも珍しくありません。

-バリュー株ーバリュー株とは、売り上げや利益の成長がさほど期待できないなどの理由から、現時点の株価が本来的な企業価値を考慮した水準に比べて安いと考えられる株式のことで、「割安株」とも呼ばれます。知名度の低い企業が多いことから、堅実経営を続けているような場合でも、投資家の人気は低いのが一般的です。値動きも値幅も地味になりがちで、いったん売り込まれたまま放置されているケースも目立ちます。

-ドルインデックス(ドル指数)ーユーロやポンド、円など複数の通貨に対する、米ドルの為替レートを指数化したもののことを指し、米ドルの相対的な価値を表します。なお、日本では、ドル高と言った場合、通常、円安ドル高をイメージしますが、外国為替市場で円安ドル高が進んだからといって、必ずしもドル指数が高くなるわけではないのでご注意ください。


立沢賢一とは


元HSBC証券社長。
会社経営、投資コンサルタントとして活躍の傍ら、米国宝石協会(GIA)会員など多彩な活動を続けている。投資戦略、情報リテラシーの向上に貢献します。
・立沢賢一 世界の教養チャンネル
http://www.youtube.com/c/TatsuzawaKenichi


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