米国株マーケット考察 2020.9.2

マーケットサマリー


米国株式相場は上昇。ダウ平均は215.61ドル高の28,645.66ドル、ナスダックは164.21ポイント高の11,939.67ポイントで取引を終了しました。絶好調でした8月のモーメンタムを引きずった雰囲気でした。

8月は何となくハイテク株主導で相場全体が引っ張られてきた感がありますが、実際には経済活動再開好感銘柄であるクルーズ船、航空、ホテルといったセクターも大幅に上昇していました。

例えば、クルーズ船のロイヤルカリビアンやラスベガスカジノのMGMリゾートの株価は共に40%上昇しましたし、物流サービスのFedExや衣料品のGapは30%上昇しました。

つまりグロース株が相場牽引の主要エンジンでしたが、バリュー株や景気循環株も追随して、全方位的に上昇機運だったのです。

これら上昇の背景には次々と発表されてきている経済指標が経済回復を示唆しているからです。昨日の相場上昇の一番の要因は、

8月ISM製造業景況指数が56.0と前回の54.2から上昇し、2018年11月以来の高水準となったことが好感されたことも同様の傾向です。

とは言え、肝心の雇用はまだV字回復が約束されたわけではありません。ですから、今後の相場動向を占う上でも、今週金曜日に発表される米国雇用統計はかなり注目されると言って良いでしょう。

ここは先週、FRBが平均インフレ率目標を導入することで物価安定よりも完全雇用をターゲットにするという姿勢を明らかにしたことからも窺えます。そういう意味では、ERBの舵取りは理に適っていると評価できます。

因みに、昨日の個別銘柄の動向を列挙しますと:

(1) アップルは第5世代(5G)通信規格対応の新型アイフォーンを7500万台以上生産する準備を進めているとの報道が好感

(2) ビデオ会議サービスのズームビデオ(ZM)は5-7月期の売上高が前年同期の4倍超増加する好決算や業績見通し引き上げが好感し、株価は29%上昇。

(3) 小売りのウォールマート(WMT)はオンライン小売りアマゾン(AMZN)に対抗する有料会員サービス、ウォールマートプラスを今月開始すると発表

(4) テスラ(TSLA)は足元の株価上昇を受けて株式売出しによる50億ドルの調達を発表し、株価は下落。

重要用語

グロース株ーグロース株とは企業の売り上げや利益の成長率が高く、その優れた成長性ゆえに株価の上昇が期待できる株式のことで、「成長株」とも呼ばれます。革新的な商品やサービスを通じて市場シェアを拡大し、増収増益を続けているような企業が多く、一般に投資家の人気が高いという特徴があります。ひところのIT株のように、ほんの数年で株価が数倍~数十倍に上昇するものも珍しくありません。

バリュー株ーバリュー株とは、売り上げや利益の成長がさほど期待できないなどの理由から、現時点の株価が本来的な企業価値を考慮した水準に比べて安いと考えられる株式のことで、「割安株」とも呼ばれます。知名度の低い企業が多いことから、堅実経営を続けているような場合でも、投資家の人気は低いのが一般的です。値動きも値幅も地味になりがちで、いったん売り込まれたまま放置されているケースも目立ちます。

景気循環株( 景気敏感株 )ー景気循環株( 景気敏感株 )とは鉄鋼、化学、紙パルプなどの素材産業や工作機械などの設備投資関連などの銘柄が該当します。好況時にはモノが売れるため、多くの素材や設備、工場が必要になりますが、不況時には在庫調整で需要が低迷し、生産が落ち込むことなど、景気の波によって受注が大きく左右され、業績に直結する銘柄群のことです。

ISM製造業景況指数ーISM(Institute for Supply Management)製造業景況感指数(Manufacturing Report on Business)とは、全米供給管理協会(ISM)が公表しているアメリカの製造業の景況感を示す指数のことをいいます。300を超える製造業企業に対して「新規受注、生産、雇用、入荷状況、在庫」といった項目に関するアンケートを実施して、回答結果から指数を算出しています。最新の状況を表し、しかも精度が高いとして信頼度も高いものになっています。一般に、数値が50を上回ると景気拡大、50を下回ると景気後退と判断されます。

米国雇用統計ー米雇用統計とは、米国労働省(U.S. Department of Labor Bureau of Labor Statistics)が毎月発表する、米国の雇用情勢を調べた景気関連の経済指標の事です。全米の企業や政府機関などに対してサンプル調査を行い、10数項目の統計が発表されます(失業率、非農業部門就業者数、建設業就業者数、製造業就業者数、小売業就業者数、金融機関就業者数、週労働時間、平均時給など)。雇用情勢の推移は、個人所得・個人消費などにも関係し、また今後の景気動向にも大きな影響を与えます。この統計の中でも「非農業部門就業者数」と「失業率」の2項目が特に注目されていて、FOMC(連邦公開市場委員会)の金融政策の決定にも大きな影響を与えると言われています。FXにおいては、最大の経済指標と言われており、数字の推移に関係なく変動する場合も多く、イベント化していると言えます。

株式売出しー株式売出しとは既に発行された有価証券の売付の申し込みまたはその買付の申し込みの勧誘のうち、均一の条件で、50名以上の者を相手方として行なうものです。「売出」とは、親会社や創業者といった大株主が所有する株式の一部を公募により同じ条件で50人以上の一般投資家向けに販売するもので、2つのパターンに分けられます。1つは、株式を新規公開(IPO)する際に、新規発行株と合わせて売り出すパターンで、もう1つは、すでに上場している企業の大株主が、証券会社を通じて売り出すパターンです。 株式分割は株式の供給量は変わらないですから株価にマイナスの影響を与えませんが、株式売出しは市場に追加的に株式が放出されますから供給が増え、株価にはマイナスに影響します。

立沢 賢一(たつざわ けんいち)
元HSBC証券社長、京都橘大学客員教授。会社経営、投資コンサルタントとして活躍の傍ら、ゴルフティーチングプロ、書道家、米国宝石協会(GIA)会員など多彩な活動を続けている。投資戦略、情報リテラシーの向上に貢献します。

・立沢賢一 世界の教養チャンネル
http://www.youtube.com/c/TatsuzawaKenichi

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