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 3回目のnoteでは、改めてOOHメディアの基本的な特徴について振り返ってみます。日常の生活動線上に溶け込み、公共空間でメッセージを届けるOOHは、その主な特徴として”4つのR”で表されることがあります。それぞれ、Reach、Repeat、Recency、Realの頭文字を取ったものになります。それでは1つずつ見ていきましょう。

1.Reach(リーチ)

 1つめの特徴はReach(リーチ)です。不特定多数の人に半ば強制的に見せることができ、マスメディアとは違った形で多くのリーチを達成することができます。通常のメディアは1スクリーンに対して、1個人もしくは1世帯のリーチになります。例えば、1つのテレビや新聞であれば1世帯。1つのスマホであれば基本的に1個人といった具合です。それに対しOOHでは、1つのポスターや看板は、公共空間にいる多くの人の目に触れるものになります。いわば1toN、1つの面に対して複数人が見るメディアです。さらに露出面が個人用端末ではないため、自分の意志で広告をブロックしたりスキップすることは基本的にできません。嫌な言い方をすれば、外に出ている限り常に視界に入ってしまう(それを意識するかは別にして)という特徴があります。特に1日の利用者数が数十万~数百万人いるような首都圏の路線やターミナル駅では、マス媒体に匹敵するリーチを確保できます。特に日本では鉄道ネットワークが発達していることもあり、世界と比べても駅の利用者数は群を抜いています。このように、「1toN」×「強制視認」×「超大人数」によって、多くのリーチを獲得できるのがOOHの特徴です。

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不特定多数の人の視界に半強制的に入るOOH

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世界の鉄道駅利用者数ランキングの上位を日本の駅が占めるというデータ

2.Repeat(リピート)

 2つめはRepeat(リピート)。人は日常生活を送る上で、どこかに「通う」のが基本です。学校への通学や会社への通勤など、もちろん毎日違う場所に行ったり、逆に1つの場所にとどまっていたりする人もいますが、多くの人が(少なくともコロナ禍までは)毎日どこかに通う生活を過ごしている(いた)のではないかと思います。OOHメディアは、この「通勤」「通学」といった日常の生活導線に設置されていることで、1つの媒体で繰り返しの接触が期待できます。心理学の言葉にザイオンス効果というものがあります。これは、同じ内容を何度も繰り返し言うことで相手を説得しやすくなるというものです。広告界の3ヒットセオリー(消費者に買ってもらうには広告に最低3回は接触してもらう必要がある)も有名です。いずれにしても広告を繰り返し見てもらうことは、マーケティング活動で人を動かす上で必須の要素です。例えば週5日、行き帰りの1日1往復といったリピート接触の行なえるOOHメディアは、効率的に行動喚起を促しやすい媒体と言えます。例えば、なかなか知人に相談しにくい「転職」「婚活」「薄毛」「自己啓発」など私生活に関わるものやコンプレックス商材などは、このOOHのリピート訴求ととても相性がよいです。他にも、駅の中に必ずと言っていいほど掲出されている病院の看板なども、地域住民への認知獲得に効果的です。

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日々の電車利用で繰り返し目に入るステッカー広告

3.Recency(リーセンシー)

 3つ目の特徴はRecency(リーセンシー)です。リーセンシーとは、特定のユーザーが広告に接触してからの期間(時間)を言いますが、特に購買行動の直前に接触した広告が与える影響を「リーセンシー効果」といいます。OOHは、外出中の購買場所に最も近い場所にあることから、購買直前の行動を喚起しやすい効果があります。購買行動を行なった消費者に対して行なった過去の調査では、購買直前に接触したメディアではOOHのスコアが最も高いという結果が出ました。このことからも、日々の外出や移動の中で消費の起点もしくは最後の一押しとなりやすい特徴があると言えます。例えば、競合商品を買おうとしてお店に向かっている生活者に対して、購買直前で自社商品をアピールできれば、うまく乗り換えさせることができるかもしれません。購買地点からの物理的距離の近いOOHは、ある意味お店の「表札」であり商品の「POP」です。自店や自社ブランドを利用する人がどのような動線でコンバージョンを達成するかを想像することで、来店や販促につなげることができるでしょう。


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購入直前の接触メディアではOOHが最も多いというデータ
(参照)交通広告におけるリーセンシー効果

4.Real(リアル)

 そして最後の4つ目はReal(リアル)です。前回のnoteでも触れましたが、次元的な制約が少なく、アイデア次第で人間の様々な知覚に訴えられるOOHは、他メディアと比べて非常に「手触り感」のある表現ができます。街全体をキャンバスと捉え、クリエイティブの自由型演技として企業メッセージを存分に表現できるのが特長です。リアルについては、ここでは多くを語りませんが、コロナ禍以降のニューノーマルの時代に変わったあとも強く残り続ける特徴だと個人的に思います。また、あえてローカライズされた期間限定の展開を行なうことで、「今ここだけのリアルな体験」を生み出すことができます。情報の希少性が増す程、それを誰かにシェアしたくなる気持ちが強まり、ソーシャルメディアを中心とした拡散(バズ)を生み出す起爆剤にもなります。

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建物の壁面と目の前の公園の配置を巧みに利用し、インタラクティブな映像コンテンツを投影した4次元的なOOHの使い方の例

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駅構内でプリンの新しい食べ方を訴求した事例

ニューノーマルのOOH

 上記で4つのRを掲げてきましたが、一方でコロナ禍を経験して人々のライフスタイルが今大きく変化しています。テレワークやオフピーク通勤が常態化したり、混雑や密集を避けて外出をしたりなどです。もちろんコロナが終息すればまた以前のような生活に戻っていく可能性はありますが、「わざわざ人の多い電車に乗って通勤しなくても意外と家で仕事ができてしまう」「混雑や行列を避けて行動することがとても快適だ」といった便益を多少なりとも感じてしまった面もある以上、従来の生活に100%戻るのは難しいかもしれません。特定の場所やタイミングに人が集中していたこれまでの生活様式に対し、今後は空間的にも時間的も人々の動きが分散していくことが予想されます。OOHの視点で見ると、1つの媒体だけではこれまでのようなリーチを獲得するのが難しく、狙ったターゲットやシチュエーションに合わせた緻密なプランニングをしていく必要があるでしょう。もちろん、今はコロナ禍で従来の生活スタイルからニューノーマルへと人々の行動様式が変化している最中ですので、最終的にどのようになるかは誰にもわかりません。しかし、まずは基本原則を理解することで、ニューノーマルにおけるOOHの在り方を探るヒントになるのではないかと思い、OOHの4つのRを紹介させていただきました。

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