366日/HY〜君への返信〜
全てを無くした今
50歳となった今、僕は全てを無くした。
今やデジタル社会となり、会社であぐらを掻いていた僕のサラリーマン人生は突如終止符を打った。
同時に、家族までも失ってしまった。
今思うと、世間の波についていけず、上司とは揉め、部下や家族には会社での愚痴しか言わなかったなと、沸騰するヤカンの音を聞きながら、そう思うのである。
今僕は、人生の中で最も孤独な瞬間を生きているのかもしれない。
そして、そんな辛い時には、必ずあの人が恋しくなる。
思い過ごし
今さらだけど…
手紙、本当にありがとう。
僕はずっとイズミの気持ちを分かってやれなかった。
今、この手紙を開いて、自分の後悔が溢れて、涙が止まらない。
あれから20年。
正直、あの頃はイズミのこと…好きではなかった。
あの頃の僕はというと、全てを追い求めて走っていた。
イズミとの時間も作ろうとしなかった。
そして、都合の良い恋愛しかしてこなかった。
忘れられないあの日
イズミに、別れを告げたのはバレンタインデーの翌日。
本当に残酷なことをしてしまったと、深く後悔してるよ…
あの時のイズミの頬が赤く震えた顔は今でも忘れない。
出来ることなら、あの頃のバレンタインデーに戻って、今の気持ちを
伝えたい。
「また、一緒にやり直せないか」
そんな空想を繰り広げてばかり…
本当に都合の良い男だよ。
恋はいつだって後遺症
イズミと別れてからの僕はというと、波瀾万丈な日々だったよ。
リストラもあったし。
だけど、そんな落ち込む日には、必ずイズミの言葉が自然と浮かんでくる。
「離れてても、恐いくらい覚えているの…あなたの匂いや仕草や全てが」
イズミの言葉が、今になって痛いほど胸を締め付ける。
こんなに僕を想ってくれる人はいなかった…
恋がこんなに苦しいなんて…
恋がこんなに悲しいなんて…
今、本気でイズミを思って知ったんだ。
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