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心打つ物語

  素晴らしい物語に出会った。

あひるの空というバスケ漫画(1~51巻)だ。

簡単にあらすじを説明すると主人公の車谷空というバスケ大好き少年が不良の溜まり場のような九頭高バスケ部に入り、その不良部員や他のバスケ経験者が主人公の熱くまっすぐな気持ちに動かされ、インターハイ(高校の全国大会)を目指し始める物語です。

アニメ化されたものを見て、これは・・・と思い、漫画を集め始め、どんどん引き込まれていきました。

  まずキャラクターの成長の過程がとても丁寧に描かれていると思いました。競技面での成長だけでなく、精神的葛藤を乗り越えたり、仲間との強い信頼関係が築かれていく様子もです。スポーツ漫画にありがちな初心者やブランクのある人があまりに現実離れしたスピードで強くなっていき、大きい大会で頂点に立つようなことはありません。

中でもバスケ部のレギュラー5人のバランスはとても美しいです。物語中でも「5人の出会いは奇跡」というようなセリフが何度か出てきますが、とても共感できると感じました。

1人1人は(いろんな面で)癖が強く、でこぼこしたパズルのピースのようだけど、5人がピタリとはまり、すごい力を発揮できるんだと思います。

 そのうちの一人に花園千秋というユーモアあふれるキャラがいます(真の主人公?)。

彼は基本ふざけていて冗談ばかり言っていますが、冷静で視野が広く、人の心の声なども敏感に察知します(特に自分への悪口(笑))。そして(お菓子の)カールと女の子と面白いことが大好きで、めんどくさいことが嫌いです。

真剣な場面ではビシッと力強い言葉を発します。ミスした人に対しても半端に慰めたりせず、「お前のせいだ」とはっきりいい、奮起させようとします。このキャラだけでなく作品全体にも言えることなんですが、シリアスさとユーモアさのバランスが絶妙だなと思いました。

バスケでは周りを生かすことに長けていて、一芸に秀でているふうな他の4人の力を上手く引き出します。

  *

 作者の物語やキャラクターに対するこだわりや愛が凄まじいなと感じていて、それをよく表しているのが、43巻の巻末にあるほぼ全てのキャラクターにかなり遠い未来のエピソードを用意しているということや最終回を迎えても、この物語をどこまでも掘っていきたいというところです(漫画カバーの端の作者のコメント欄もグッときます)。

そのこだわりや愛は作中からもひしひしと伝わってきましたし、それは主役も脇役も、勝者も敗者も分け隔てないものだと感じました。

それぞれのチームに濃密な物語があり、主人公のチームと戦っていても敵として見れず、勝ち・負けがどうでもよくなってしまうくらいそれに引き込ました。


 次の展開が気になる気持ちを抑え、一コマ一コマじっくり読みました。味わい深く、感じるものがとても多かったです。書けてないことも多いので、またの機会に。

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