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今後想定される収益悪化、倒産理由

足元の倒産件数が増加しつつあります。東京商工リサーチが発表した8月の全国倒産件数は492件と、前年同月比で6%増加しています。前年比プラスは5カ月連続で続いており、着実に倒産件数は増加しています。
 
原因として、コロナ禍対応として講じられてきた資金繰り支援策の効果が薄れ、コロナ禍の長期化、原材料・エネルギー価格の高騰により資金繰りが苦しくなっていることが挙げれます。
 
今回の経済トピックの中では、足元の状況を踏まえて、短期的・中長期的に分けて、今後の収益悪化、最悪の場合には倒産に至る要因について考えてみたいと思います。
 
(短期要因)
・コロナ禍の長期化による売上回復遅れ
これは、特に飲食店やホテルに当てはまります。現在のコロナ禍は外出制限を伴うものではないものの、コロナ禍前の稼ぎ頭だったインバウンドが戻ってくるには、まだ時間がかかりそうです。
そのような中で、過剰債務を抱える飲食店やホテルを中心に倒産が続いており、この流れはしばらく続くことが想定されます。
 
・原材料高やエネルギー高によるコスト増加
世界各国でのインフレによる原材料高や、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格高騰に加え、足元の急速な円安が大きなコスト負担となっています。
最終商品への価格転嫁が進んでいるものもありますが、中小企業を中心に価格転嫁が難しいとの声もあります。この状況が進めば、資金力が乏しい企業を中心として資金繰り悪化が懸念されます。
 
(中長期要因)
・金利負担の増加
コロナ禍における急激な売上減少に対応する為、企業の規模を問わず債務が膨張してきました。民間企業が抱える借入残高は簿価ベースで469兆円(22年3月末時点)にのぼり、不良債権問題が深刻だった2000年3月以来の高い水準にあります。
 
こうした中、海外においてはインフレ対策として金利の利上げが続いています。日本においては日銀が金融緩和を続けている為、低金利が続いていますが、今後については不透明な面があります。
もし、金利が上昇する局面となった場合、金利負担が増加し、収益や資金繰りの悪化要因となってきます。
 
・後継者難
後継者不在による倒産・廃業は今後増加することが想定されますが、既に足元でも倒産件数の5%相当の件数が「後継者難」を理由とした倒産となっています。
 
2021年の経営者の平均年齢は62.77歳と高齢化が進んでおり、70歳を過ぎても現役の経営者として活躍されている方も多くいらっしゃいます。将来的な企業の存続を考えるならば、後継者の育成や事業承継の準備は必須となってきます。
 
・人手不足
今後の人口減少の中で、企業における働き手も減少していきます。既に旅館やホテル、飲食店等での人手不足は深刻であり、人手不足が事業継続のボトルネックとなることも懸念されます。
 
以上が今後想定される収益悪化、倒産の理由となります。いずれも大きな問題ですが、対策が取れることも沢山あります。アメリカでは、多くの企業が倒産する時ほど、新しい産業、企業が生まれています。問題は問題として直視しつつ、前向きな取組みで次の時代を切り開きたいものです。

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