[無料]夏の低山を涼しく登るコツ
夏山は暑い!特に夏の低山は暑い!当たり前ですが、暑いのです。すると当然心配なのは熱中症。熱中症になってしまうと歩けなくなってしまいますし、悪化すれば命の危険さえあります。熱中症については以前まとめたものがあります。
このテキストは、上記リンク先から涼しく登るためのノウハウだけ抜き出したものです。涼しく登れば熱中症の予防にもなります。
涼しく登る方法
では、これから涼しく快適に登る方法について書いていきます。
冷凍プラティパスで背中を冷やす
私は登山初心者の頃から夏はこれをやっています。背中が冷えると体感の暑さがかなり和らぎます。
1.2リットのプラティパスに水を8割ほど入れて8割冷凍庫で凍らせる
満水まで入れると凍結の膨張でプラティパスが傷む可能性があります。完全に凍らせてしまうとなかなか融けず水不足になります。8割の水で8割凍らせるくらいがちょうどいいです。
100円均一のものだと膨張圧力に負けて穴が空いてしまうかも知れませんが、プラティパスなら今のところ破損したことはありません。
もし、朝になって凍らせすぎたことに気づいたら水を入れたペットボトルを別に持ってください。下記でやるように、サーモスに冷水を移した代わりに常温の水を入れると速く融かすことが出来ます。
2.タオルを巻いてビニール袋に入れます
タオルで巻いておかないと結露でザックの中がびしょ濡れになります。ザックの背中パッドが厚くて冷えが弱い場合はタオルを外してください。ザックの中は多少濡れますが。
3.ザックの背中側に入れる
ザックの背中側がよく冷え、自分の体温で氷が融けて冷水が手に入ります。背中が冷えると体温が下がり熱中症予防になります。もしプラティパスを凍らせすぎてしまったら、安定した道では腕に抱いて歩くと速く融けます。不安定な場所では危険なのでザックにしまって下さい。
4.氷が融けたら適宜サーモスに移してください
融けた水をそのままにしておくと融けすぎてしまうので、休憩のときなどにサーモスに移してください(こぼさないように注意!)。サーモスに入れておけばいつも冷たい水を飲めます。
凍らせたペットボトルもおすすめ
プラティパスを凍らせると傷みそうで嫌だ、冷凍庫にスペースが無い、もっとコンパクトにしたいという方は500mlのペットボトルに水を入れて凍らせるのもおすすめです。ザックに背中側に入れれば背中が冷えて快適です。2,3本あれば安心ですかね。コンビニでも凍ったペットボトル飲料が売られています。凍らせたボトルを忘れたら買いましょう。
肉などを凍らせて保冷バッグに入れると夏のテント泊で肉を焼いて食べることも出来ます。食材自体を保冷剤にする発想ですね。冷凍枝豆なんかも良い保冷剤になります。
ヒヤロンを持つといいかも
ヒヤロンとは、叩くと中で薬剤が混ざって冷える冷凍パックです。熱中症対策と、怪我をしたときの冷却に使えます。
ただし、ヒヤロンは圧迫で発動してしまいます。そのままザックに入れると潰れて冷えてしまうので、タッパなどに入れて保護してください。全員が持つ必要はありませんが、共同装備としてあるとよいでしょう。
濡らした手ぬぐい
汗を拭く時は、濡れた手ぬぐいなどを使って下さい。乾いた手ぬぐいを使うと汗を拭きすぎてしまいため体温が下がりません。水道や沢で濡らしておきましょう。手ぬぐいは綿素材ですが便利に使えるの装備に入れておくとよいです。
ちなみに、私が作っているジオグラフィカというアプリの手ぬぐいをネットショップで売っています。
売れると私が喜びます。買って下さい。
背中に空間があくザックを使う
背中とザックの間に空気が流れるので夏向きです。そのかわり冬は寒いし、雪が詰まってしまいます。
ハットなどで頭とうなじを直射日光から守る
首の後ろに直射日光が当たると疲労感が増しますし、日焼けすると痛いのでハットや首のうしろに覆いが付いているキャップをかぶりましょう。
森の中など、日が当たらない場所では帽子を被らない方が頭から放熱できます。場面によって使い方を変えて下さい。
風が弱い場所でなら折り畳み傘も日除けに有効です。雨具としても意外と便利ですよ。カッパを着込むと意外と暑いし蒸れるので、森林限界未満では雨が降ってもカッパは着ないで傘で済ませることが多いです。もしくはカッパのズボンだけ+傘とか。
真空断熱フードコンテナ
上手く使えばアイスやそうめん、冷凍肉の運搬に使えます。アイスなら7時間ほどは保ちます。
素麺は、前日の夜茹でて、水をよく切って具や薬味を載せて真空断熱フードコンテナに入れます。蓋をしないでラップを掛けて冷蔵庫へ。当日の朝忘れずにザックに詰めましょう。
麺つゆは、濃縮タイプを小さなボトルに入れて持ち、食べる時に冷凍プラティパスの冷水で薄めます。これで山頂で冷たい素麺を食べられます。
真空断熱スープジャーにアイスを詰めて、蓋をせず冷凍庫でしっかり冷やします。当日の朝蓋を締めてザックに詰めて山に持っていけば山頂アイスを楽しめます。最高かよ。
うちわ、扇子、モバイルファン
うちわや扇子など、風を起こせる道具も有効に使ってください。稜線や谷筋は風が吹いていることが多いですが、無風の斜面を登るのは非常にツラいものがあります。
うちわなどは仰ぐために腕の筋力を使い、発熱するのでモバイルファンを導入するのもアリです。例えばこういうやつ。
重さ133gで首掛けのストラップ付きです。
首の部分は角度を変えることが出来ます。
首に掛けて斜めに風を送ると、胸と首に風が当たって気持ちいいです。防水ではないので雨の日は使えませんが、暑い晴れの日にはかなり効果を発揮します。買ってから5回使ってますが、スタート地点が1000m以下の低山では必須装備となりました。特に、天気が良くて風が弱い日は必須です。無いと死ぬ。
バッテリーは3000mAh内蔵とのことですが、出力を測ってみると2500mAhくらいでした。風力は3段階で、無風の場所なら弱でも十分涼しく感じます。弱で6時間35分動きました。中で4時間43分、強で3時間32分でした。風が吹いて涼しい場所では止めたり、長時間使わなそうならザックにしまって充電したりすれば電池切れになりにくいです。
充電しながらも使えるので、行動時間が長くてバッテリーが切れてしまった時は、別のモバイルバッテリーから給電して動かすことも出来ます。充電ポートはType-BのマイクロUSBです。Type-Aの出力ポートもあるので電池が残っているなら、モバイルファンをモバイルバッテリーとしても使えます。ただし、容量は少ないのでアテにしないで別に大容量のモバイルバッテリーを持ちましょう。
注意点は、
少し音が出るので、周りに他の人がいる時は配慮しましょう。
汗で濡らさないようにすること。塩水は機械の点滴です。
木の枝や葉っぱを巻き込むと壊れる可能性があります。藪っぽいところでは止めましょう。虫が多い場所では虫を弾いてしまうことがあります。数匹なら問題ないでしょうが、あまり多いと故障の原因になります。適宜止めたり虫除けをしてください。
首にストラップを掛けると滑落などしたときにストラップが引っかかって首吊り状態になる可能性があります(コンパスなどでもよく言われることですが)。気になる場合は荷重が掛かると外れる仕組みのストラップを使ってください。または首掛け以外の使い方をしてください。
首掛けで使う場合、下りではブラブラして下方視界が遮られることがあります。適宜ザックに収納するなどして対応してください。ちなみに私は、状況によってシャツの中に入れています。こうすればブラブラしませんし、紐がなにかに引っかかるリスクも低くなると思います。
または、ちょっと高価ですが本体を首に掛けるタイプのモバイルファンもあります。ペルチェ素子の冷却プレートがなかなか良さそうです。
↑こちらの商品は持っていないので使い勝手などは分かりません。Amazonおすすめになってるので、そんなに酷くはないと思いますが。
その他の暑さ対策グッズ
涼感タオル、ウェットティッシュなど、街で使う暑さ対策グッズは山で使えるものもあります。工夫してみてください。
水分補給のコツ
スポーツドリンクがお手軽
水分だけでなく塩分などミネラルも必要です。ポカリスエットやアクエリアスなどのスポーツドリンクでも良いですし、他のメーカーの粉末スポーツドリンクを粉で持っていくという手もあります。
濃度は、以前は薄めて飲むとよいとされていましたが、大塚製薬によると薄めず飲んだほうがいいとのことです。甘すぎて嫌だというのであれば、お好みで薄めてください。他に塩飴などで塩分を補給してください。
私はスポーツドリンクの粉+クエン酸+ブドウ糖+BCAAを混ぜた粉を水とは別に持って、ボトルで混ぜて飲んでいます。
スポーツドリンクの粉末を持っていくのに最適な容器は、R-1の空きボトルです。
もちろんナルゲンなどでもいいのですが、R-1の空きボトルは実質タダですし口が普通のペットボトルより小さいのでペットボトルに粉末を入れやすいです。液体調味料の持ち運びにも便利。
カフェイン飲料やアルコールはNG
水分補給でビールを飲む人なんていないと思いきや稀にいるようですが、利尿作用があるのでNG。そもそも、登山中にアルコールを飲むのは転倒や判断ミスの原因になるので絶対NGです。行動を終えるまで我慢して下さい。我慢できないなら、あなたはアル中です。病院で治療してください。
カフェインが入っているコーヒーや緑茶も利尿作用があるので水分補給には適していません。お茶なら麦茶やほうじ茶にしてください。
塩飴なども有効
塩分が足らなくなると筋肉がつりやすくなります。汗をかいたら塩飴や塩分タブレットで塩分、ミネラルを補給してください。行動食に塩気があるせんべいなどを選ぶのも有効です。
出発前に飲む
登山をする前に準備運動をすると思いますが、その前に300ml程度飲んでおくとよいとされています(事前飲水)。飲みすぎるとトイレが近くなるだけなので300mlを上限とします。
飲んだら準備運動をしてトイレを済ませて、飲んだ分の水を補給できるなら補給して出発しましょう。
こまめに摂取する
こまめに水分補給をしてください。大抵は飲まなすぎになっているので、意識的には飲み過ぎと思うくらいでちょうどよいです。具体的には、真夏なら30分に1回程度(もっとこまめに飲みたければ飲んでもいいですよ)、真夏以外なら1時間に1回程度です。
残った水は登山後に全部飲む
登山が終わって、さぁ帰ろうとなったら残ってる水を飲んでしまってください。大抵の場合、登山中の水分補給は足りていません。オシッコの色が茶色なら緊急で水分補給が必要です。1リットル飲んでください。黄色でも500mlは飲んだほうがよいです。残った水は飲む、忘れないでください。
冷たいほうが吸収されやすい
水分は冷たいほうが速く吸収されます(※)。冷たい飲み物は熱中症の予防にもなります。サーモスなどに氷と冷水を入れて持っていくとよいでしょう。夏は冷たい飲み物が美味しいですよね。それはつまり、体が欲しているからです。
ただし、一気に大量に飲むとお腹が冷えすぎてしまいます。こまめに少しずつ飲むのがよいでしょう。冷たいものを飲んで美味しいと感じないのなら、それは飲み過ぎです。
※…出典:「登山の運動生理学とトレーニング学 P164」。温度は5~15℃程度。
ハイドレーションシステムは?
ハイドレーションシステムはこまめに水を飲めていいのですが、水以外を入れると洗うのが面倒だったりカビが生えたりします。残量も分かりにくく、多く飲んでいいのか飲み過ぎなのかわかりません。登山の場合は、ボトルから飲む方が簡単かと思います。
それでもハイドレーションシステムが便利だ、残量も分かるというのなら止めはしません。
ペットボトルにセットできるハイドレーションシステムなんてのもあります。お試しで使ってみるといいかも知れません。
私はこれを持っていますが、前述の理由で使っていません。
補足:飲み物のボトルはザックにしまいましょう
飲みもののボトルをザックのサイドポケットにさしている方をよく見かけますが、落としやすいのでやめたほうがいいです。装備は、ザックに入らないものやすぐ使うもの(※)を除いてザックの中に収納するのが基本です。
※行動中に使うピッケルやスコップ、ストック、ザックに入らない折りたたみマットなどは行動開始時に外付けします。カップやサンダルなど、幕営地まで使わないものもザックの中に入れるのが基本です。ゴミ袋も外付けはみっともないし穴が開いてゴミを撒き散らしながら歩く可能性があります。やめましょう。
なお、ピッケルやスコップなどは周りの人に当たると危険なので、公共交通機関を利用する場合はザックから外して手提げ袋などに入れましょう。またはザックの中に入れてください。
衣類の調整をする
当たり前ですが、服を多く着ていれば暑いに決まっています。出発の前に衣類を調整して下さい。出発する瞬間に少し涼しいと感じるくらいに調整するのがコツです。
私は、登山の時に一番下にドライレイヤーを着ています。肌から汗を吸ってウェアに移してくれます。夏も冬も快適さが違います。
ファイントラック以外、モンベルやミレーも同様の商品を用意しています。
我慢しなくてもよい
もし歩き出して暑いと感じたら、次の休憩まで我慢しようとか、今止めたらみんなの迷惑になるなどと思わず、「暑いので脱ぎたい!」と言いましょう。結果、適切なウェアリングで順調に歩けるようになるなら、パーティー全体にとっても良いことです。
同様に、喉が渇いた、お腹が減った、休憩したいなども我慢しないほうがいいです。ただし、休憩のときに水を飲んでおく、行動食を食べておく、衣類の調整をしておくなど、パーティーの行動に合わせるのも重要ではあります。休憩して出発して10分で「喉乾いた!」となっても、『さっき飲まなかったからじゃん…』となってしまいます。
それでも、我慢しすぎれば熱中症や、寒い時期なら低体温症、凍傷を悪化させてしまいます。登山は我慢しないことが大事です。我慢強いことは、登山においてはそんなに美徳ではありません。
なお、何かが足らずに我慢が必要なシーンになってしまった場合は、登山の前の判断が間違っていた事になります。そもそも技術、体力、メンタル、装備などが足りていないということです。反省して次回に活かしてください。
ゆっくり登る
速いペースで登れば当然体から出る熱が増えるので体温が上がります。汗がダラダラと流れるペースは熱中症の要因になりますし、汗が気化熱を奪う前に流れてしまうため無効発汗となり水分の無駄です。ペースを抑え、休憩して、冷水を飲んで体温を下げつつ登りましょう。
それでは登るペースが上がらず時間が掛かってしまう、日が暮れてしまうというのであれば、その計画自体が不適切です。もっと短い、余裕がある計画を作りましょう。
…または、速く歩いて体温がガンガンに上がっても平気で歩ける強い体を手に入れるのです。そのためにはトレーニングが必要なので、登山を繰り返して体を鍛えましょう(根性論)。
まとめ
冷凍プラティパス、サーモス、うちわ、センスなどを有効活用しましょう。
水分補給は、冷水をこまめに、塩分も摂る。
我慢せず衣類の調整をしましょう。
ゆっくりペースで登っても問題ないコースを選びましょう。
わぁい、サポート、あかりサポートだい好きー。