廃墟に心惹かれるのは好奇心を掻き立てられるから

臆病で怖いものが苦手だが、実は廃墟が好きだ。ただ、好きとはいえ別にマニアでもないし、わざわざ廃墟を見に行くことはしないが、廃墟を見かけるとつい立ち止まって眺めてしまう。もちろん敷地に入ることは無く遠目から見るだけだが、見ずにはいられなくなる。

私が廃墟を好きな理由は、好奇心がくすぐられるからだ。廃墟を見ると「中はどうなってるのかな」と観察したくなるし、廃墟が辿った歴史を想像したくなるのだ。想像を掻き立てられて、自然とワクワクしてしまう。

廃墟とその周りは、そこだけ時が止まっている。周囲は時代に合わせて変わっていく中、過去と同じ姿を保ち続け、変化に取り残される存在が廃墟だ。今自分が生きている時代の中に、ひと昔前の時代が混在しているような、不思議な感覚に襲われる。そしてその感覚も私は好きだ。

ただ、廃墟なら何でもいいというわけではない。病院は怖すぎて無理だ。私が一番心惹かれる廃墟は、「温泉街にあるホテルの廃墟」である。なぜかと言うと、温泉街のホテルは時代を顕著に反映するものが多い分、今自分が生きている時代とのギャップを感じ取りやすいからだ。よく見かけるのは、バブル時代を彷彿とさせるホテルだ。ロビーだったと思われる場所には豪華なシャンデリアがあったり、外装も今の時代には中々ない派手派手しさだったりする。こういう分かりやすく時代を感じさせる物がホテルには多くあり、その当時の空気を感じやすいのだ。その分、過去を想像しやすくなるので、好奇心が掻き立てられて私は過去を想像し始めてしまう。

廃墟の過去を想像する時は、「一番栄えてた時」から「廃業に追い込まれて衰えるまで」の一連を経過する。というのも、廃墟は「栄」と「衰」のシンボルであるからだ。私たちの比較的身近にあるものの中で、「栄」と「衰」を感じさせるものは中々無い。だからこそ、心が惹かれてしまうのかもしれない。

繁栄してた時はホテルは豪華でピカピカ、そして中はたくさんの人で溢れ、人々の顔は輝いている。バブル時代特有の、浮き足立った人々が頭に思い浮かぶ。バブル時代には人々は豪華さを求めてたから、そのホテルもニーズに合っていたかもしれない。

だが、その後不景気な時代に突入し、人々のニーズとそのホテルはマッチしなくなり客足が遠のく。ホテルの印象も薄暗くなり、ホテルの従業員の顔も暗くなっていく。なんとか再起を試みるも時代の流れに乗れずに上手くいかず、最終的に廃業に追い込まれる。その後も解体されることもなく、建物が残されたまま。その廃墟だけ、時代の変化から取り残されていく・・・その様を想像するのは本当に楽しい。なぜか心がウキウキしてしまうのだ。

興味が無くなったら見向きもしなくなる人々の残酷さ、そして時の流れの早さと残酷さ。それをまざまざと見せつけてくれるのが廃墟なのだ。