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えひめサッカーフェスティバル2020取材レポート


 はるばる、愛媛県今治市へ。筆者は2015年夏に一度訪れたことがある。当時、FC今治は四国リーグ一部に所属しており、その前年の2014年11月に岡田武史氏がオーナーに就任。2016年には、吉竹博文氏が男子トップチーム監督に就任し、全国地域サッカーCLを制してJFLへ昇格。クラブにおいては、グローバル事業部が新設されて中国サッカー・スーパーリーグの杭州緑城と業務提携を結び、2月23日にJリーグ百年構想クラブとして承認された。
 そして2019年、FC今治トップチームはJFLを2位で終え、J3昇格を果たす。この間にありがとうサービス.夢スタジアム(2017年8月)、イオンモール今治新都市(2016年4月)がオープンするなど、クラブ開発、そして都市開発「今治新都市開発」が着々と進んできた。しまなみ海道の今治ICからすぐのところにあるイオンモール今治新都市には、H&M、GU、スポーツオーソリティ、JINS、スターバックスコーヒーなど、有名店が出店しており、フードコートも人気店で充実。人気レジャーのひとつ、「しまなみ海道サイクリングロード」を楽しむための自転車店、イオンバイク、観光インフォメーションセンターがそこに隣接している。

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 ありがとうサービス.夢スタジアムは、イオンモール今治新都市の真正面の今治市営スポーツパーク(高橋ふれあいの丘)の一角にあり、高台の谷地形を生かした構造となっている。いわゆる段々畑の構造で、夢スタジアムは最上段にあり、中段には16面あるテニスの人口クレイコート、人工芝サッカーグラウンド1面、バスターミナル、駐車場、そしてJ1リーグ基準の新スタジアム建設予定地で現在は駐車場となっている、市有地(57,373平方メートル)がある。

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 新スタジアム建設予定地(新スタジアムプロジェクトのコンセプトは里山スタジアム)はありがとうサービス.夢スタジアム同様、用地は市が有期で貸与する予定で、2020年の着工、2022年1月の完成を目指すという。また、空き地や駐車場は他にもあり、開発できる余地はまだまだあるのだ。

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画像左上は夢スタジアムから見て、手前が駐車場&イベントブース、奥の土地が新スタジアム建設予定地。
画像右上、左下はおそらく手付かずの空き地、画像右下はイオンモール今治新都市真正面にある駐車場。

 では、なぜ夢スタジアムがJ1基準のスタジアムにまで増築できないのか。実際に見てみると、「確かにこれは困難」という印象だった。写真でも分かるように、夢スタジアムはバックスタンドが存在しない。中段にあたるスポーツパークから階段を上って、南北ゴール裏を繋ぐ通路がある。そこは、公式戦時はパートナー企業のバナーがネットに掛けられ、立ち見の観戦はできない。

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 照明も四隅に一台、合計四台しか設置しておらず、これ以上の設置は周囲の木々の伐採や整地作業が困難なのだろう。メインスタンドにあるクラブハウスにはロッカールーム、放送ブースを設けているが、スタンド内にあるべき記者席は存在せず、夢スタジアムは実のところ、欧州ビッグクラブが所有する、ユースチームやⅡチームのホームゲーム開催規模といったところだ。
 だが、新スタジアムが完成すれば、夢スタジアムでユースチームやレディースチームなどのホームゲーム開催、イベントなどの一般開放など、利用法はいくらでもある。Wi-Fiもメールアドレスを登録すれば無料で接続できるので、SNS投稿も心置きなくできる。

 フェスティバルは11:00に、FC今治レディース(四国女子リーグ)対愛媛FCレディース(プレナスなでしこリーグ1部)がキックオフ。愛媛FCレディースは2019年シーズン、なでしこリーグ2部をはじめて制し、今季からトップリーグに初参戦する。ゲームは前半に愛媛FCレディースが三点先制し、後半もまずは愛媛FCレディースが追加点、その後、FC今治レディースがカウンターで一点を返すも、のちに愛媛FCレディースが追加点を決め、1-5で愛媛FCレディースが勝利した。

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 レディースチームのゲームが終了し、次の男子トップチームによるゲームは14:00キックオフ。続々と観衆がスタンドを埋めていった。南北ゴール裏はコンクリート造りだけで座席がなく、シートクッションは必須。加えてFC今治サポーターが陣取るホーム側は、木々で日差しが遮られてしまうため、冬場はしっかり防寒対策をする必要がある。一方、アウェー側は日差しが当たるので、快適な観戦環境にあると感じた。

 さて、ありがとうサービス.夢スタジアムの特徴はなんといっても、ピッチと観客席の近さだ。ピッチまで8mというのだが、ゲーム前のウォーミングアップで一つ気になることがあった。ネットによる防護はバックスタンド側のみで、それというのも、段々仕様になっているので、ボールが下に落ちないようにしているが、ネットは南北ゴール裏には設置されていない。(ネットはパートナー企業のバナーを掛けるためのものとしても機能している)そのため、シュート練習でボールが枠外にいけば観客めがけてボールが飛んでいくのだ。もちろん、それを承知でサポーターたちもゴール裏に陣取るわけで、蹴る側も観客席めがけて蹴るつもりはないのは当然だ。筆者はこの、ネットがないゴール裏を懸念点として挙げているが、同時に「気にしすぎ?」とも思っているのだが...。

 ゲームについては、公式戦の如く、ハイテンポな展開となった。愛媛FCはロンドを応用した、速く巧みなパス回しで今治の選手たちを剥がし、すかさずボールをゴール前へ入れていくが、肝心のシュート本数は少なかった。今治の守備陣がシュートまでは許さないよう、ピタッと体を寄せていたからだ。一方、今治の攻撃はカウンターが主だったが、ボールを縦に入れてもゴールラインを割ったりと、攻撃が完遂する回数はこちらも少なかった。ボールの競り合いは激しく、愛媛FCでは選手二人が負傷退場。選手たちがエキサイトするシーンもあった。最終的にゲームはスコアレスドロー。ゲーム後は記念撮影をし、フェスティバルは終了した。

 駆け足で、フェスティバルの模様をお伝えしてきたが、今治新都市はまだまだ開発が進んでいく。次に訪れた時に「あ、ここが変わっている。こうなっていくんだ!」と新しい発見が出てくるのでは?と思うと、楽しみが増えてくる。
 夢スタジアムやイオンモール今治新都市がある地区は今治新都市開発の第一地区で、産業用地・文化・交流施設用地・商業用地とされており、第二地区は住宅用地・体験学習施設用地とされ、今治西部丘陵公園(しまなみアースランド)がある。だが何より、J1基準の里山スタジアムが、今治市をどのように彩っていくのか楽しみで仕方ない。ウェブページ上のイラストではスタジアム周囲が詳しく描かれていないが、大型モニターがある方にイオンモール今治新都市があり、メインスタンド側にバスターミナル、夢スタジアムがあるのだろう。このイラストを見て、今治市に住みたいと思う方は大勢いるのではないだろうか。FC今治と今治市民の、スタジアムを中心とした街づくりから目が離せない。

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