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色を選ぶって重労働だ

こんばんは。グラフィックデザイナー、カラリストの藤田です。
今日は「色を選ぶのが、なぜ難しいのか」を考えていきたいと思います。

無難に白・黒・グレー

何か色を選択しようとした時、無意識に「白・黒・グレー」を選んでしまうという方は多いのではないでしょうか。

シチュエーションとして
明るい色を使ってみたいけど、どう使ったらいいか分からない。
組み合わせ方が思い浮かばない。
似合ってるか不安、ちょっと恥ずかしい。

白・黒・グレーなら組み合わせ簡単だし、人前に出ても大丈夫!

でも、白・黒・グレーを選びがちなのは、
「色の事がよく分からないから選んでいる」というだけではなさそうです。


とりあえず、色を構成する三要素をおさらい

白・黒・グレーは「無彩色」と呼ばれます。
一方、赤や青、黄色などの色は「有彩色」と言います。

有彩色には「色相・明度・彩度」の三要素が含まれています。

色相 = どういう色味か
明度 = どのくらいの明るさか
彩度 = どれくらい鮮やかか

対して、無彩色は「明度」だけしかもってません。

ということは…。


無彩色は、負担が少ない=簡単

無彩色は「明度」という1つの軸から、色を取ってくるだけなので、
どれだけ使うパーツが増えても、考えることは増えません。

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色を複雑にしている元凶の「色相・彩度」がないので、
割と適当に選んでもまとまります。
(4~5色以上になると、無彩色でもちょっとコツがいりますが)

考える事が少ないので、混乱しにくく、
どう切り取ってもまとまるから、思考の負担が少ない=楽ちん。
難しいより簡単な方が効率的なので、無彩色を選ぶ。

それが、白・黒・グレーを無意識に選びがちな、本当の要因だと思います。


有彩色は考える事が多すぎ!

一方で有彩色は「1つの色に見えて、実は3つの顔を持っている」という事になります。

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「1色を選ぶ」というのなら、有彩色でも簡単です。
三要素の結果を見て(上の例なら、出来上がった「山吹色」)、選べばいいだけです。

でも現実問題、有彩色を1色だけ選ぶシチュエーションは少ないと思います。
服で「全身まっ黄色」は、普通の生活では考えにくいですし、
家具を買う時は、壁や床、他の家具の色とのバランスを考えるはずです。

さらに厄介なのが、2色以上の有彩色で(美しく)配色する時、
使うすべての色で、三要素を整えないといけないという点。

1色増えるごとに、考えることが3つ増えていく。しかも全部の色で。

ややこしいのが、「A×Bの完成した配色」にCを加えた場合。
単純に(A×B)×Cにはならないのが重要なポイント。
A×Cは合っていても、B×Cが合わなければ、
その配色は合ってない事になってしまいます。

※ちなみにCが無彩色なら、(A×B)×Cは成り立ちます。

それはもう大変ですよね。
考えるの放棄したくなります。

有彩色を考えて選ぶのは、思ったより重労働です。
生活においてやらなきゃいけない事が多いこの世の中で、
「色を選ぶ重要度」っていかほどのものかと思うと、
ハードルめちゃくちゃ高いなと感じます。


それでも有彩色を使いたい

有彩色は考えるのが大変な分、その恩恵や効果も大きいです。
無彩色だけでは表現できない事を、無限に創造できます。
だから色彩好きとしては、「有彩色を使ってもらいたい」と思っています。

ですが、いきなり「有彩色同士の配色」を考えるのは危険です。
ピアノ初心者が、いきなりショパンやリストの譜面をなぞるような、
料理初心者が、フレンチのフルコースを作るような、
テニスラケットを初めて握った人が、初戦でプロ選手からストレート勝ちを狙うような、無謀な挑戦です。

なので、基本の順番を守って、

1. 無彩色の配色を完成させる。

2. 無彩色に1色だけ有彩色を入れてみる。
3. その有彩色と特定の無彩色がどういう風に変わるかを試してみる。
(青×白、青×グレー、青×黒 という感じで、意識的に組み合わせてみる)

4. 続いて2色+無彩色にチャレンジ。
(まずは2つの有彩色の間に、白や黒を置いてセパレートしてみる)
5. 慣れたら無彩色を抜いてみる。

6. 3色+無彩色にチャレンジ。
7. 3色で、無彩色を抜いてみる。(以下、色数増やしてループ)

という風に順番に試していくと、比較的すんなりと使う色数を増やしていけると思うので、ぜひお試しください。
(色を増やしていくにあたって必要なテクニックは、また次の機会に。)

「無彩色を選びがちなのは、重労働だから。でも、ちょっとずつ簡単になって、使える色が増えていくといいな」というお話でした。

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