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【10分で分かる】ベンチャー流経理の教科書

■「UFO」って何?

「UFOって何?」私が初めて経理に配属された最初の朝礼で思ったことです。実は上場企業が決算時に作成する有価証券報告書(”ゆう”かしょうけん”ほう”こくしょ=略してゆうほう)の事なんですが、丁度決算業務が始まったところでUFOという言葉が飛び交っていました。全く意味がわかりませんでした。とりあえず会議が終わってから調べようと思ってすぐ調べたのですが、どこにも出てこず、、、こんなことはネットのどこを探しても出てこないし、聞かないとわかりません。簿記も何もわからず、営業からたまたま経理になった私にとっては本当に何もわかりませんでした。

そんな経理になりたての自分を思い出し「そういえば、経理のリアルを教えてくれる本とか情報って無かったな」と思い「経理のリアルをあの時の自分に教える」気持ちで自分の経験と知識をまとめてみました。経理なりたての人、経理ってどんな仕事か知りたい人、数年経験したけどまだ全体像がはっきりわからない人等にとっては、多少役に立つことが書いているかと思います。

できるだけリアルな経理を経理未経験の方でも理解し易いように、経理という仕事を実際に基づいて構造として理解できるようにも書きました。また、本でよくみかける教科書的でわかったようなわからないような内容にはならないように、かつにならないように、YouTubeやTwitterで見かける経理で働いている人の気持ちの部分だけを切り取ったようにもならないようにも意識して書きました。
これは私の主観強めです。なので、専門的な部分で多少間違ったり、認識が違ったりすることがあるとは思いますがご容赦ください。あくまで経理未経験者が経理の仕事の全体像を体系的に理解することをイメージして書いています。

■経理って結局何?

会社の動きお金の面から記録、報告する仕事」が経理だと思っています。語源としては経営管理を略したのが経理のことらしいんですが、現代だと法務や総務、人事等も含むような意味になるため「経営管理=経理」はちょっと現実に即してないなと思います。要は「会社の記録員」です。甲子園でも「記録員」がメンバーに1人入ってると思いますがイメージあんな感じです。チーム(=会社)の動きを記録して監督(=経営者)に報告する。仕組みとしては同じ感じです。
ただ、ちょっと違うのが記録の仕方に決まり(簿記)が明確にあったり、報告する先が複数(経営者、税務署、証券取引所etc)あったり、報告する先によっては報告の仕方・期限が法律で決まってたり(税務署への申告、財務局への報告)というのがあります。
まあ、でも、要は「記録・報告」です。そう思うと意外と簡単じゃないですか?。

■経理の周辺図

「経理と財務の違いは?」「会計と簿記は何が違う?」「管理会計、財務会計の違いがなんとなくしかわからない、、、」なんてことがよくあります。本を見れば学問的、教科書的な回答は書いてるんですが、いまいちしっくりこない、、、で、結局明確にはわからない、、、私も全くわかりませんでした。未だにふんわりしている部分は正直ありますが、自分なりに整理して図解したものを作ってみました。 
長年それぞれの業務をされている方には「違う!」とご指摘いただくかもしれませんが、イメージすらない経理未経験の方は大体このイメージを持っておいて頂けると大きくブレることは無いかと思います。

ちなみに、経理周辺の違いがよくわからなくなる理由は、会社によって複数の役割を1部署がやってたり、部署名がどちらかによってたり、役割と部署名が統一されていないからになります。

例えば、小さめの会社だと経理と財務を1つの部署でやってたりします。そして部署名が経理部だったり財務部だったり、経営管理部だったりまちまちです。部署名は一旦置いておいて、担っている役割から考えてもらえるとわかりやすいと思います。

○役割の要約

経理=記録員・報告員
財務=お金の監督・GM
   お金を管理して動かす(入出金の確認・管理、お金を引っ張ってくる)
会計=記録・報告すること
簿記=記録のやり方
管理会計=経営者への記録・報告方法(元となる法律が無い。)
財務会計=税務署、株主への記録・報告方法(元となる法律がある。会社法、金融商品取引法等)
経営企画=中長期の戦略の立案・実行部隊
会計士:上場企業の記録が正しいことを確認する人。(株の市場の監視員)
税理士:税金を計算して報告する人。
会計監査:上場企業の記録が正しいことを確認すること。

○財務とは?

「お金を管理、運用する仕事」だと思ってます。
財務は記録・報告をしません。ただし、お金が出るとき入るときの確認や、お金をどこに使うか?お金をどこからもってくるか?などを考えて実行します。CFOは「最高財務責任者」のことなのでまさに財務のプロです。CFOになりたい方は経理ではなく財務を極めないとですね。
具体的な仕事としては、お金を銀行から借りて来たり、投資家から投資してもらったりします。会社はお金がなくなったら潰れてしまうので、とにかくお金がなくならないように未来の予測をして、対策を立てて実行します。

○監査とは?

監査とは要は「品質をチェックすること」です。例えば魚市場でイメージしてもらうと、魚市場(=証券市場)で売買される魚(=会社)におかしなものが紛れてないかチェック(=会計監査)する監視員(公認会計士)って感じです。
実は監査には監査法人が行う「会計監査」以外にもいろいろあるんですが、経理が「監査」というときは基本「会計監査」のことを指します。
ちなみに、監査法人で会計監査ばかりガッツリやってた公認会計士は、仕訳を切ったことがなかったりします。出てきた結果に対して合ってる合ってないの評価をするのが仕事なので、どうやってその情報が作られているか?正しい情報がでてくるようにするにはどうすればいいか?というのは全く未経験だったりします。監査法人から事業会社に来て経理をやる方は最初そこに苦労されたりするみたいです。

○税理士とは?

「税金を計算して報告する人」です。
税理士のお客さんに中小企業が多いのは、中小企業は報告する先が税務署だけでいいので、税金のことだけしっかり考えておけば問題ないからです。そして、税理士事務所は監査法人、会計士事務所に比べると激務で給料が安いとよく聞きます、、、お客さんが中小企業で、かつ1人が受け持つお客さんの数も多いからかな?

○IRとは?

「投資家とコミュニケーションを取る仕事」です。
基本的には上場企業でしか必要のない業務になります。IRというのは経理周辺の仕事でもかなり特殊な仕事で、投資家(今の株主、未来の株主候補)とのコミュニケーションをどうとっていくか考え、実行します。これから上場する企業であれば、投資家を何十社も回って投資頂くようプレゼンをしたり、すでに上場している企業であれば投資家に対して行われる決算説明会や、既存株主に対して行われる株主総会を取り仕切り、会社の状態、今季の結果をどう伝えるか?などを統括します。経理が記録、報告してきた材料を元に、投資家に対してどういった伝え方をしようか?と考えて話すイメージです。上場企業にしか必要の無い役割で、かつ人数もそこまで必要無いため、かなり特殊な業務になります。ただ、会社の株価や資金調達に直結する役割であるためとても重要な役割です。

○経営企画とは?

「会社全体の中長期の計画を考えて実行する仕事」です。会社全体について考える部署であるため、業務範囲は多岐にわたります。ざっくり言うと「3年後の目標を決める→達成のためのロードマップを作成する→1年毎の具体的な行動計画を作成する→具体的に実行していく」みたいな感じです。ただ、どこからどこまでやるかは会社の規模や社長のやり方、部署ごとの役割分担によって大きく変わってきます。小さい会社だと長期計画とロードマップはCEO、CFOで作成し、そこから先の毎年の行動計画は経理で全体統括をしつつ、各部署と議論して決めていき、実行し、進捗を経理が確認するみたいなことがあります。
ちなみに、経理の視点で見ると経理の人が、もっと攻めろよと言われるときは”経営企画的な仕事”を求められてることが多いです。

○事業企画とは?

「事業を作る仕事」です。Biz Devとか、新規事業開発とか言われます。私も経営企画と事業企画の違いがいまいちわからなかったのですが「会社全体を考える」のが経営企画で、「事業単体」を考えるのが事業企画です。

○総務とは?

「担当が決まってない仕事をする仕事」です。総務の仕事はこれ!という決まったものは特に無く、会社によって業務内容は大きく違います。ただ、ある程度こういう感じというのはあり、業務内容のイメージとしては的には経理、財務、経営企画、法務、人事、情報システム等のバックオフィス周辺の業務の一部を担っていることが多いです。具体的には、経理で言うと請求書の支払処理、法務だと契約書の管理、経営企画だと社内イベントの運用などです。

○人事とは?

人が「入る時」「中にいる時」「出る時」の3種類で分けるとイメージし易いと思います。
種類ごとの役割としては
 入る時=採用
 中にいる時=人事管理
 出る時=労務
みたいなイメージです。

■経理の業務

○全ては記録から始まる

「記録・報告」これが経理の仕事の根本的なところなんですが、報告するためには元の記録が正しくないと正しい報告ができない。なので、究極的には「記録」が経理の仕事だと思っています。この記録さえちゃんとしておけば、後でちょっと情報を加えたり、相手によって編集したりというのは意外と簡単にできたりします。逆に、記録をちゃんと行わないと後で2度手間3度手間になることは簡単に起こってしまいます、、、7年で15社程の会社で経理をやっていて、とにかく記録が大事というのは痛感しました。

○ポイントは「うまい・早い・安い?」

記録を行う際にポイントとなってくる点が3点あって「正確に(うまい)」「早く」「安く」です。全てを完璧にできればいいのですが、状況によっては3つのバランスを考えながら進めないといけません。経理は基本、コストがかかるだけの部署と思われているため、、必要より人員が限られていることが多いです。また各業務の期限が法律で決まっていたりします。そのため、状況を見てこの3つを調整します。
実際の例としては、月次の数字を7営業日で確定させないといけないが、6営業日目に2重計上が見つかった、ただこれを正しく修正しようと思うと7営業日に間に合わない、なのでこの修正は翌日に回した。みたいな感じです。この場合で言うと「正確に」を犠牲にして、期限に間に合わすため「早く」を優先しました。
「安く」を優先した例で言うとちょっと専門的ですが
全ての計上は入出金ベースで行い、税務申告時のみ差分を調整することで、11ヶ月分の仕訳の量が半分にできる。それにより、精度は極端に落ちるが工数が減り安く決算を締めることができる。
具体的な仕訳で言うとこんな感じ。
 <普通>
  売掛/売上:納品日
  預金/売掛:入金日
 <今回>
  預金/売上:入金日
  売掛/売上:年度決算のみ(未入金の売上を計上する)
普通だと売り上げた時と、入金があった時の2回仕訳を切るのに対して、入金があったときの1回だけ仕訳を切る。税務申告しか必要ない中小企業で、月次の細かな売上などは不要な場合はこのようにしたりします。

○経理の価値

とにかく記録が大事なんですが、最終的に経理が「価値」を発揮する部分は「報告」になります。どれだけ記録をちゃんとしていても、報告内容が雑だったり、期限を守れなかったりすると「価値」を残せていないことになってしまいます。価値を発揮するための土台が記録ですが、最終的な価値は報告であることもお忘れなく!
税務:税務申告、税務調査
監査:会計監査
社長:月次報告、管理会計

○他部署との違い

【積み上げ型】
営業なら月が変われば0になる。経理はマイナスになるとずっとマイナスが残る。数年前の処理が急に大変なことになることもしばしばあります。例えば、3年前に前任の人が行った固定資産の処理が間違っており修正しないといけなくなった、金額が大きいため過去に遡って税務申告の内容も修正しなければならず、税金の金額が変わり未納が合ったため余分に税金を支払わないといけなくなったという感じです。

【仕組みはシーソー】
こっちをたてればあっちが立たず、あっちを立てればこっちが立たずということがあります。特に「仕組みを作る」際によく発生します。他部署から「経費精算のこのやり方なんとかならへん?」と言われて変えようとするんですが、それを変えると別の場所で問題が起きたりします。
その中でも「できない人に合わせるorできる人に合わせる」のシーソーは結構難しく、できる人に合わせると処理ややることはとてもシンプルで楽になるのですが、できない人のミスがとても多く対応が必要になり修正作業に忙殺されることになります。逆にできない人に合わせるとミスは起きなくなるのですが、できる人から「この処理いらんやろ?」とずっと文句を言われるみたいな感じです。
他にも「会社の皆が入力した情報を最終の報告資料(報告財務諸表)までつなげないといけない」「法律というルールが決まっている」ことが原因でシーソーゲームが起こることがあります。


ざっと自分の考えを書き出して見ました!とりあえず書いたという感じなので、後日書き直したりするかもしれません。専門的な用語や考えがあってるか?ということは一切考えず、とりあえずあのころの自分が経理の全体像をイメージできることを優先しました。
他にも、経理のレベル別に求められることや必要な能力努力なども書いていこうかと思います。ご感想など気軽に頂けると嬉しいです。


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