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工芸家を目指す若者が経験すること ⑥現代の表悦です。ちょっと閑話休題?

ちょっと休憩

曽祖父の箆(ヘラ)は癖がある。今まで教わった多くの先生とは違う癖がある。祖父のヘラもその癖を受け継いで、父もその癖のあるヘラを使っている。

曽祖父の作った道具を見ているとなんかわかるかと思ったら、めちゃめちゃ使い込まれすぎて、大きいヘラなんて一つも残っていない。
みんな小さなヘラばかり。ただ、見た瞬間に思う。
表悦のヘラ

癖があるので、今まで習った先生には全員にこんなヘラはダメだ!とか、変なヘラ使ってるな。とか言われてきた。
ちなみに、僕の場合は、父とも違うようで、父からもそんなヘラのくせに上手いこと作業できるな。と不思議がられる。

僕にとって幸いなことは多くの先生との出会いだと思う。みな、癖があって、変人で、頑固で、厳しくって、そのくせ子供みたいな顔をしながら漆の話をする。怖いくせに優しい。ぶっきらぼうなのに面倒見がいい。

あの人たちほど上手くはなれなくっても、あの人たちみたいに堂々と生きていきたいと思う。

このヘラの癖が万人に合うとは思わないが、それはそれでいい。

茶杓には作り手が見え隠れするということを証明するような展覧会を以前見た。

ヘラは、毎日その職人が使い続け工夫し続ける道具、そこにはきっと人が見える気がする。

綺麗なヘラが、全ての一番ではない。
美しくしっかりとした作業ができるヘラ。
それこそ大きなものを作る時には足先から腰、背中、腕、手首、指先、その流れを受け止めて漆に伝える物がヘラ。

そう考えれば、使い込まれたヘラには、何か風格がある気がする。

そんなヘラは・・・なかなか育てられていない。

またコツコツ、ヘラを削ろう。

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