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未経験分野のプロボノでも、成長できるの?

「プロボノ」ってご存じですか?社会人が職能を活かした社会貢献活動をすることです。

もともとは、弁護士など普段は有償で仕事をしている方が、支払い能力が低い社会的弱者のために無償で支援をするなどの社会貢献活動を指す言葉でしたが、最近は単に「社会人のボランティア」の意味で使わる場面も増えた印象です。

例えば弁護士が民事法律扶助を行う、デザイナーがNPOのチラシを作るなどは「職能を活かした」ボランティアです。一方、コールセンターのオペレーターがチャリティーイベントを運営する、営業マンがNPOの経理作業を手伝うなどは「職能を活かさない」ボランティアです。

本業の職能を活かさない活動をプロボノとしてしていると、「普通のボランティアと何が違うの」と言われることもありますし、ご自身で「プロボノと呼べるほどのことはしていないただのボランティアなのですが…」などと説明される方もいらっしゃいます。

なんとなく、職能を活かす=高度でキャリアにつながる、職能を活かさない=誰にでできてキャリアにつながらない、という風潮があるような気がします。

私は、未経験分野の無償のプロボノも、キャリアアップにつながると考えています。

理由の1つ目は、「無償だからこそ、未経験分野でも挑戦させてもらえる」から。

noteのマガジンでも何度か書いてきたように、仕事は実績がある方に集まります。

「実際にやったことがないけれど、多分これができると思います」という人には、なかなか依頼は来ないものです。

それに引き換え、無償の場だと実績がない方でも歓迎される傾向にあります。

NPOや地域活動は、慢性的に金銭的なリソースがが足りていない団体が多いです。予算がなければ、内製化して外注費を抑えて対応もできますが、その人材もいないので、「何か手伝いたい」という方が現れるととても助かるのです。

たとえば、「広報」は人気の職種ですが、未経験の中途採用では門戸が狭いのが現状です。もともとの職種の人数が狭いうえ、人気の職種かつ中途のライバルも多いので倍率は高くなりがちです。

ところが、NPOや地域活動の団体では、情報発信に関するプロ人材がおらず、「無償でいいので広報にチャレンジしたい人」が参画する余地があるケースが多いのです。

おそらく、使える予算はかなり限られます。ゼロかもしれません。

それでも、予算ゼロでできる広報だってたくさんあります。

プレスリリースをプロに頼めば外注費がかかりますが、自力で書けば無料です。それをPR会社に配信してもらったらお金がかかりますが、自分でメディアを探して個別に送れば無料です。

ポスターやチラシをデザイナーに頼んで印刷会社で刷ったら数十万円かかりますが、自力でパワーポイントでつくってPDFで配信すれば無料です。

SNSも無料で始められるし、ドメイン費用や外注費のかからないLPサイトをつくれるサービスもたくさん登場しています。

予算がなくても、できるPRの方法はたくさんあります。「誰に何をどう伝えるか」というPRの根本の部分は、予算の多寡にかかわらず実戦経験を積めます。

予算がないからこそ、「予算がないときの選択肢」について引き出しが増えます。

会社だと、そんな「手作りの広報」なんて認めないと言われてしまい、すでに広報職として経験のある人しか広報に関われないかもしれません。

プロボノだからこそ、未経験の人が身一つで飛び込んで、最初の実績をつくることができます。

(あ、もちろんどの程度で歓迎されるかは団体によるので、自分で感触を確かめてくださいね!)

2つ目の理由は、「ポータブルスキルはどんな場でも発揮できる」からです。

ポータブルスキルというのは、業種や職種が変わっても持ち運びができるスキルのことです。

「課題を明らかにする」「計画を立てる」「実行する」などの「仕事のし方」や、「社内対応」「社外対応」「部下マネジメント」など「人との関わり方」などがポータブルスキルにあたります。

このようなスキルは、社会人経験を積めば積むほど、気づかないうちに伸びていくものです。

ただ、それを実感して、言語化できている人はかなり少ないです。

本当は、折衝力や調整力、マネジメント力があるのに「取柄が何もない」「わかりやすいスキルがない」と自分を過小評価している人は多いのです。

そして、会社の中でも「できて当たり前」と思われやすく、評価してもらいにくい側面もあると思います。

社外で活動をはじめると、そのようなポータブルスキルを客観視することができると思います。

たとえば、NPOや地域活動のWEBサイトをつくろうとするとき、「プログラミングができない」「デザインができない」「撮影やライターのスキルがない」なんて思う人にもできることはたくさんあります。

スケジュールの管理、各担当の調整、意見集約など、プログラミング以外にもやることは実はたくさんあります。

そして、そのような全体の進行を管理したり、内外の人とやりとりしてマネジメントする場面では、ポータブルスキルが必要とされます。

「テクニカルなスキル」では未経験な分野でも、これまでの社会人生活で培った「ポータブルスキル」を再発見して、さらに伸ばせる可能性があります。

このようなポータブルスキルは、プロボノのような多様な人材が集まる場での方が高いレベルを求められます。

会社だと、ある程度は命令できたり、ハウスルールや阿吽の呼吸でなんとかなる場面も多いです。

それが、有志のプロボノだと、足並みや前提を揃えるだけで一苦労。給料も出ない場に熱意だけで集まっている方には、命令も通じません。

「こんな感じでやっといて」と言って会社だと通じるところが、「こんな感じ」を詳しく伝える必要もあり、命令ではなく相手をモチーベトして行動してもらう必要があります。

ポータブルスキルについて詳しく知りたい方は、厚生労働省がミドル層のキャリアチェンジを支援するために研修資料を用意しているので、こちらを一度読んでみるといいかもしれません。

無償のプロボノは、「お金をもらえない活動」ではなく、「未経験でも挑戦でき、ポータブルスキルを伸ばせる場」だと思います。

「無償」をネガティブにとらえず、「無償だから未経験の自分にもチャンスがある」「無償だから人の心を束ねる訓練が積める」とポジティブにとらえる人が、プロボノで成長していけるのではないでしょうか。

パラレルキャリア研究所代表 慶野英里名

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