Blog_アイキャッチ_from_PC__27_

美味しいモンブランとマーケティングの間にある密接な関係をカフェで考える

アンジェリーナのモンブラン。

ぼくはこのモンブランをたまに食べるのだが、食べるたびに経営戦略に関係があるエピソードを思い出す。濃厚なマロンクリームと生クリーム、一番下のメレンゲ層の全部で三層が折り重なって口の中で広がる味は他では味わえない味だ。そんな至福の時を味わいながら経営戦略のことを考えるなんてぼくはどうかしているかもしれない。

アンジェリーナはパリに本店がある100年の歴史をもつ洋菓子店。

そんな洋菓子店を作った男も知らず知らずのうちにマーケティングの世界に足を踏み入れて市場をセグメンテーションして事業を切り開いたのではないかと勝手に想像して楽しんだりするのだ。

—— 〻 ——

このアンジェリーナというお店、オーストリア人の創業者が始めた喫茶店で死後奥さんの名前をとってアンジェリーナと名付けられた喫茶店だ。シャネルの創業者などそうそうたるデザイナーや著名人が集う店として有名になり繁盛して現代にいたるお店だ。

そんな喫茶店がマーケティングと何の関係があるのか。

そもそも喫茶店(カフェ)というものは17-18世紀にコーヒーを飲む文化が広がるとともに主にイギリスやパリで大流行したといわれている。今のようなカフェとは全く異なり、どちらかというと社交の場という意味合いが強く、一人で行ってリラックスする場ではなく、コーヒー片手にいろいろと情報収集をしたり、熱い議論をする場だったといわれている。

いろいろなビジネスマンが集まり市況や、現在手掛けているビジネスについて情報収集をしようとする場であったり、政治や思想に関する議論をする場であったりオジサンたちが集まってワイワイ熱い思いをぶつけあうような社交の場として喫茶店は繁盛したらしい。

当時は喫茶店ではコーヒーだけではなくアルコールもふるまうようだったのできっと男どもが集まるむさ苦しい場だったのかもしれない。

—— 〻 ——

そんな男たちのたまり場となったカフェとは別のビジネスを考えつく夫婦がいた。

それはマカロンを作ったことで有名なラデュレさんとその奥さん。それまでのカフェとは異なり超豪華な内装のお店で最高級のお菓子を楽しむ貴婦人たちのためのお店を作ったのだ(家族がマカロンを発明したことでも有名)。

それはサロン・ド・テ(SALON DE THE)”という新しいビジネスで、フランス語で「喫茶店」という意味だがそれまでのカフェ(cafe)とは異なり、おいしいケーキなどの食べ物をメインにお茶をして優雅なひと時を過ごす場として大繁盛させたのだった。

サロンドテと聞いて女性やフランスに精通している方はすでにご存じでわかるかもしれないが、そうではないと一度お店を訪れてみないとカフェとの違いは歴然としているということがわかる。カフェはどちらかというバーのようなイメージだが全くコンセプトが異なるところがある(イメージがわかるように末尾にリンクをいくつか貼っておきます)。

アンジェリーナもそんなトレンドにのったサロンドテの一つだった。冒頭に書いたようにシャネルなどのデザイナーに愛されたお店として今もパリで本店は繁盛している。

—— 〻 ——

アンジェリーナを食べると欧州に住んでいたこともあってあの豪華なサロンドテという場所の何ともいえない中世に戻ったような感じを思い出す。

このサロンドテというスタイルはターゲット顧客として貴婦人という今までにない顧客層を狙い、それまでのカフェとは異なるサービスをそのターゲットに提供し新たな市場を作り上げた。市場をセグメンテーションすることで自分がまだ勝てる市場を探して、その市場のニーズを掘り起こし具体的なターゲットイメージに対して価値を訴求していったのだ。

この話は三谷宏治という元コンサルタントの方が書かれた新しい経営学という本にもエピソードとして出てくる。

市場はいつまでも固定されているわけではないということを思い出させてくれるモンブラン。

既存市場、既存事業とぼくらが仕事で使っている市場区分もずーっとそのままではなく、新たなプレイヤーが出てきて市場を細分化して新たな価値を提供して以前の市場は無くなったり、市場規模が小さくなったりするのだ。

誰もが知恵を絞って自分のビジネスを作ろう、他社と異なる道を歩もうとしている。

—— 〻 ——

そういう意味ではブルーオーシャン戦略が言っていることも、ランチェスター戦略が言っていることも、ドラッカーやコッターが言っていることも、このサロンドテというビジネスを考えたフランスのラデュレという男も変わらないのだ。

同一の市場でシェアNo.1になる戦いではなく、「差別化」という今までのプレイヤーとは異なる価値を提供し、ただ単に規模や物量でとにかく低価格を戦う商売から脱却していこうという点は共通しているとぼくは思っている。


今、自分の会社のビジネスがイケていないとしたら、もっと違う視点でビジネスを変えられないか、もっと違う価値を出して差別化したり今までと異なるターゲットに対して何かビジネスはできないか。

そんな可能性を前向きに考えるためのモンブラン。「そんなこと考えていたらおいしくない」と言われそうだが、何を考えていてもおいしいものはおいしいのである。

モンブラン、うまし。

keiky.

[参考]



いただいたサポートは、今後のnoteの記事作成に活かさせていただきます。ますます良い記事を書いて、いただいた暖かいお気持ちにお返ししていきたいと思います☆