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赤字の時は売上拡大・投資回収・累損の概念は忘れて4つのことに集中しよう

[収載マガジン:カイシャノ経営企画]

ぼくの会社には赤字のグループ会社が結構ある。50ある海外拠点のうち約10社、日本では10ある会社のうち2社。すべて100%本社が出社した会社であり、単体の事業の会社もあれば2つ3つの事業を複合化したような拠点もある。

本来は各事業のラインでグループ会社各社の事業も責任をもって面倒をみることになっている。当然数名しかいない経営企画で全拠点見るわけにはいかないし、各事業はそれぞれに精通した人が見る以外に選択肢はない。

一方で事業部門は経営に関しては見切れていない。営業、開発、生産などの機能を回しながら顧客に対応することで手一杯であるので、会社経営の課題については経営企画部に持ち込まれる。

今の数名の経営企画のメンバーで海外を見れるメンバーは私ともう一人の0.5人分のマンパワーしかないので、よっぽど深刻になった場合に「その拠点を何とかしろ」という仕事が回ってくる。

そんなぼくがどういう観点でその課題に取り組むかそのままの流れを書き留めた。

まずやること:現状把握

だいたいぼくのところに仕事が回ってくる時点で、原因と対策が間違っていながら何年も同じやり方をしてきてしまっている場合も多いし、そうとう話がこじれていたり、社長が怖すぎて良い話しか上にあげていないので真実を誰も知らないという場合も少なくない。むしろそういったことの方が多いくらいである。

ぼくがそういった仕事がよくまわってくるので、だいたいひな形というか自分の中でやることのルーティンが出来上がっている。

まずはなによりも現状把握。見る資料としては、各種財務諸表の大枠での把握をした上で設立当初の投資計画や増資・新たな借り入れを申請した時の申請主旨や投資回収のための事業計画あたりをサラッとみる。あとは今までいろいろな対策会議がおこなれているのでそういった会議の議事録も読む。

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次に人からの状況ヒアリング。事業部門長やその会社の経営層、キーマンなどへヒアリング。一斉に集めて聞けば効率が良いが、そういった場でちゃんとした情報が出てきた試しがないので今はそんなことはやらない。

だいたいその組織の上層部が出てくるほど、雰囲気でしゃべっていたり曖昧な情報だったり、だれだれのせいといった話が多く、対策の打ちようがない。なので、上層部とは軽くヒアリングをしたあとで、現場の部門長に話を聞く。その際に同席したであろう担当者や若手についてはその部門長がいないときにもう一回ヒアリングしてもっと生の情報をもらう。

あとは財務部や法務部やスタッフ系の部門にもトイレに行く次いでだったり昼飯ついでにその拠点に関する課題や最近どんな感じか、気にしていることはあるかなどを聞く。

次に市場分析。過去のマーケティング資料や、新たにネットや金融機関の情報をもとに市場の景況感や海外であればマクロ経済の基本的なインフレや為替レートの推移などについても把握しておくようにする。

ほかにも具体的なその事業の顧客や、競合との競争状態などについても把握していく。概してラインでは意外にこういった情報を持っていない可能性も高いので、いろいろなツテを使って、その事業が顧客や競合といった外部の市場環境の中でどういった位置づけに置かれているかについても考える。

あとはよっぽど問題な場合は出張して現地にいったり、日本人のフィルターのかかっていない生の情報を集めたりする場合もある。

そうやって多面的に情報を集めたあとに情報を整理、分析し仮説を立てる。仮説を立てる段階でもさらにいろいろなヒアリングは細かな数字は財務に依頼してもらうようにしていく。

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財務や法務上がりの経営企画の同業がこういった作業をやるとテクニカルな専門分野の話がメインになってしまい、血が通っていない分析になってしまう。

幸いぼくは当時会社でもっともつらいといわれていた事業で営業などをしてきた経験もあり(おかげで病んだ時期もあったが)、分析はロジカルにしつつアウトプットはハートで押すような分析になるように心掛けていて、ただの現在の状況の分析ではなく仮説と提言の内容のほうを厚くするようにしている。

こうして分析をしたものを社内で展開していくのだが、社長に説明したりメールで提出したり、事業部門との会議で提案したりして、まずはベクトルを合わせながらやるべき改善策の優先順位と誰がいつまでにやるか?という点を決めていくのだがそれはまたの機会に書こおう。

イントロが長くなってしまったが、今日は「赤字の事業をなんとかしようと思ったときに考える順番について」振り返ってみたい。

[STEP 1] まずはキャッシュフロー黒字を目指す

キャッシュフローというのは会社のお金が減ったか増えたかということを示す言葉で、事業の赤字の改善よりも大切なことと考えている。

会社の価値を算出するときにも最も重要な要素であるし、その事業をやることでお金が減っているのか、増えていくのかということを把握することが最優先の数字上の課題といえる。

詳しい話は本やネットで検索すれば済む話なので省略するが、会社をやっていくうえで、会社は自分も含めた誰かが出資したお金や借金したお金で、会社を運営する資金を捻出して運営されている。

売上がなくても必要な費用は発生するので、そういった経費をまずはまかなっていくことが最優先になる。個人事業であれば家賃や人件費などが最たる例であって、赤字であってもお金が回っていれば会社はつぶれることはない。これは個人事業でもベンチャーでも大企業でもすべて同じである。

お金が不足したらドンドン追加でお金を入れる(増資する)ことで延命できるし、借りることができるのであれば借金を増やしてお金を注入していけば会社を維持することができる。

そういったことも何度も何度もできないものだし、投資をしてくれる側が自分以外にいるのであれば、彼らもボランティアではないので出資したり借金させてくれる相手は減ってくるので、まずはお金が減らずに増えていくようにすることが大切になる。

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お金が減らないようにするにはどうしたらよいか。まずはこのキャッシュフローを構成しているのは「利益+お金の出費を伴わない減価償却費」というのがすべてのベースになる(減価償却費:過去投資した分を分散して一定期間で費用として損益計算書に記載するもの)。

利益を上げるには売上ー経費が赤字にならないようにするしかないが、赤字でも圧縮することが対策。黒字にするには売上拡大だけでもなく、製造原価を低減させたり、利益が出ない製品からの撤退や利益が出るものの拡大などの施策に加えて販売・管理費を削減したり様々な手を考えることになる。

そして次にお金が出ていく最大の要因ともいえる運転資金の把握と改善。運転資金というのは会社を運営していくうえで発生する血液のような存在であり、売掛金、在庫、買掛金の3つで構成されている。

売掛金というのはカケで売るため売った瞬間にすぐ現金化することはできない取引であり前払いや即日払いとはことなる一般的なビジネス上の取引関連になる。ここは早めにお金が入ってくるのが望ましいので、売掛金の回転期間(回収までどれくらいかかるか)は短い方が良い。

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在庫というのは製品の在庫や原料の在庫などを指し、そういったお金をもの変えたものが現金化されるまでにかかる期間も短い方が良いということになる。

買掛金は購入する原料や仕入れる製品の支払いが主な内容となり、これは売掛金と在庫と異なり、支払いはなるべく先延ばしできる方が良い。売掛金が120日後の入金なのに買掛金(仕入れ)の支払いが前払いだと、売ってお金が入ってくるのと、仕入れの支払いの期間があまりにギャップが大きすぎることから、売れば売るほどお金が出ていくことになり莫大な運転資金が必要になってくる。

非常に簡単にキャッシュフローについて説明をしたが、ようはお金の入りと出を把握して、今以上におかねが出ないようにしようということが第一に重要になる。運転資金はなるべく圧縮(売掛金と在庫の早期現金化と、買掛金の長期化)し、利益を売上拡大やコスト削減で出していくという合わせ技をやることが先決となる。

[STEP 2] 単年度P/L黒字を目指す

キャッシュフローが黒字でまわるようになってきたら、今度は単年度黒字化を目指す。単年度黒字化にも順番があって、まずは限界利益黒字、粗利黒字、営業利益黒字、当期利益黒字といった順番で黒字化をしていく。細かい説明は割愛するが、P/Lでいえば上から順番に黒字化していくための対策を講じていくことになる。

ここで打てる手としては売上の拡大、原価(原料費や製造人件費、工場の運営費用など)の削減、販売・管理費の削減などがメインの施策となる。

単年度黒字化はキャッシュフロー黒字化なしでは成り立たないし、単年度黒字がないと次の投資回収についても達成することはできない。まずはSTEP2としては単年度、その年度に黒字で終えられることを目標としている。

[STEP 3] 投資回収の早期達成を目指す

キャッシュフローも黒字化し、単年度の損益計算書も黒字化した。その次に意識するのは投資回収の達成時期。企業は普段、投資をすることで事業拡大をしており、そういった投資(出資、出費)に対して、いつリターンが得られるようになるのか、という観点を考えていくことになる。

例えばどういうことかと簡単な例を作ると、まず自分が100万円を出資した。毎年10万円最終の利益が上がるので10年で投資回収をして、11年目から真水の利益を得られるというような計算だ(かなりざっくりだが)。

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投資回収というのは一言でいうと、投資した時から何年目に投資が回収できるかという視点で見ること。10万円のパソコンをかって年1万円の利益がでる仕事を自分でつくった場合に11年目から儲かるということである。こういった考えは、キャッシュフローが根本的に実現していないと達成はぐっと難しくなる。

累損というのは過去に損を出した額を積み上げたものとして考えればよくて、赤字を出せば出すほどバランスシートの資本の部分が減少していくことになるが、業績には影響は特にないのでこの段階では無視していいと思っている。

STEP4で利益を出して剰余金をプラスにもっていくには時間がかかるしここが縮小してもつぶれることはないので今は考えなくていい。

また、本来は時間的な価値がかかわってくるので将来の利益は割り引いて考えないといけないがどこまで専門的なことを書いていいか、読者のターゲットがまだ先鋭化していないので今回は割愛する(お金の時間的な価値については読まれるような気配があればまた別途書くかもしれません)。

[STEP 4] 企業価値の向上を目指す

上記3つを達成したら最後に会社の価値を向上させていくということに集中することになる。会社の価値の評価の基本はキャッシュフローでいくらお金を得られるかという点が大切であるし、そのためにはビジネスの拡大にいよいよ集中していくことになる。

売上を増やしていくと、運転資金が予想以上に必要になって、でかくすればするほどお金が足りなってお金が減っていくこともあるので、売上の拡大には注意をした方が良い。

売れば売るほどお金が減っていく結果として黒字倒産になる例もあると思うが、専門知識は専門書や入門書を参考にした方が効率的だと思うのでここでは説明しないが、このSTEP4の段階に入れば、定常的に利益が出るような状態になっていて、赤字は脱却しているので、あとは儲かるビジネスをドンドン作っていくステージに突入していくことになる。

以上が大まかな視点の切り替えのタイミングをSTEPをおって書いてみた。こんがらがった赤字拠点問題を見ていると、「とにかくまずは売上UPを考えよう」とかそういった間違った対策が行われていることも非常に多い。

あとは「頑張れ、根性、いつか報われる」という策でも何でもない気休めの言葉であって、みんなで敗戦試合を続けてきたような事業も多い。

そういった原因と対策のミスジャッジがあると、なおるものも治らなかったりするので、高い視座をもちながら情報は深堀して把握したうえで、上記のようなステップで改革をしていく流れを経営企画で働くものとしては作っていく必要があるとぼくはおもっている。

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まだnoteをはじめたばかりな中、ビジネス系の経営ネタを平易な言葉で書くことを実験的に試したくなったので上記のような記事を書いてみた。

書きながら思ったのは、案外難しいということ。

いったいどれくらいの前提の知識を読者の方がもっているかで書き方が全然変わるという点が難しいと感じた。

平易すぎるとよく知っている方はつまらないだろうし、難しいことばを使うとあまり詳しくない人にとってはマニアックな内容に感じられるだろう。

分かりやすくすることと、専門知識をどれだけ使うかという狭間でぼくの文体や説明の厚みがまだグラグラしていて安定していない。いろいろ書いていく中でビジネスネタあってもどれくらいの知識を前提とした書き方が良いかわかってくると思うのでこれから要改善だと思った。

どういった文章を作るかというのは難しくもあり、頭を使って伝わる文書を考えることになるので勉強のしがいがあると思えた。

それではまた明日お会いできれば幸いです。

Keiky.




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