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いまいるお客さんを大事にできているかを点検するのはとても大切 [ロイヤリティマネジメント]

なじみ客が多い居酒屋やコーヒーショップに入ってしまうときが時々ある。なんともいづらい雰囲気というか「何しにきたんだ」とはいわないまでもお店側もなんとなくそういう雰囲気を出す店というのがどこにもあるものだ。

だいたいこういったお店は特定のお客さんに支えられていて、地域でお金をまわしたりコミュニティの形成に一役を買っているというプラスの面がある一方で排他的な雰囲気があるものだ。

色々な交流会や趣味のサークルやファンクラブなどもそういった雰囲気はあるがこちらは商売ではないので特に人に迷惑をかけない限り自由でよいと思うが、やはり商売になると特定の顧客に依存している関係というのはリスキーではあると思う。

これは理想論でしかないがぼくがコーヒーショプをやるんだったら2、3割常連さんがいて7、8割の普通の通りがかりの人がきてくれるようなお店だったらいいなと思ったりする。

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一方でぼくらの仕事ではどうだろう。既存顧客での実績拡大と新規顧客の獲得というのがだいたいどこの会社にも二つの大きな活動といえる。

どんなビジネスも売上がまず立たなければビジネスは始まらない。そのトップラインを広げながら、収益性の高い事業の中身にしていくという継続的な活動が連動することでぼくたちの働く会社は成り立っている。

営業が偉いとかコストセンターがどうだというのははっきりいってどうでもいい話して、一つの組織体として自分たちの費用を賄って利益を出していくためのただの役割分担の話でしかないのでセクショナリズムの話はぼくはとても苦手としている。

それはさておき新規顧客の獲得の方をなんとなく重要視していることはないだろうか。

■新規顧客獲得を重視しがち

会社としてよくありがちなのは新規顧客をいかに獲得するかというところで、どちらかというと既存顧客の対応については「すでに獲得した会社」としている場合も結構多い。

会社によっては限られた既存の大口顧客からの利益が大半の場合はその会社に対して全力投球しているような会社や業界はあるかもしれないが、たいていは既存顧客はフォローするだけだったり予算をつけて担当者にまかせて新企獲得部門を分けているような場合はそこを花形部門のように扱うケースが結構ある。

実は既存顧客の維持こそとても重要だということを忘れてしまった場合に、ある日突然、優良得意先が他社にサービスを切り替えるという話をしてきて大問題になることもある。そのときに騒いで謝っても後の祭りで、もうお客さんが自社を向いてくれることはない。

新しいお客さんは確かにとっていかないとビジネスのパイは増えないので重要な活動であることは間違いないのだが、売り切り商売ではなくて継続的な商売の場合は既存のお客さんこそウェイトをあげた対応が必要な場合も多い。


■顧客のロイヤリティを上げる大切さ

既存のお客さんは日々ぼくらの会社の製品を買ったりサービスを消費してくれることでぼくらの給料や会社のコストは賄えている。

そんなお客さんがいなくなってしまったらぼくらのビジネスはとたんに崩れ去ってしまというリスクをしっかりと考えて既存のお客さんを離さないようにする努力がある面では新規獲得よりも重要であるという認識をする必要がある。

既存のお客さんの需要が今以上に伸びないのであれば確かに新規顧客の獲得に重点をおいていかなければならないが、既存のお客さんが逃げたときのダメージの大きさについても同じく認識してしっかりと対応する必要性が高いのだ。

自分の会社は売り切りの商売だから維持する必要が無いという会社であれば確かにあまり気にしなくてもいいが、そういった売り切りビジネスも最近はいろいろなサービスやメンテナンスなどをサブスクリプションモデルという形で展開している会社も多いはずだ。

そういった会社は売り切りモデルに慣れすぎてしまって、お客さんをいかに維持するかという努力がおざなりになりがちなので、より注意が必要かもしれない。

■ お客さんを維持する=ロイヤリティアップ

端的にいえばお客さんを維持するには満足してもらって、自社を好きになってもらって使い続けてもらうという顧客ロイヤリティを上げていく必要があるといえる。

サービス業では消費者だし、BtoBでも競合に対して自社の製品をより長く使ってもらえるようにアフターサービスだったり感謝祭だったり継続するメリットを出すなどいろいろな業態でいかにお客さんのロイヤリティをあげるかということが考えられている。そういった意味では営業担当者というのはとても大切な存在だ。

自分が自社のインターフェースとなり、会社を代表してそのお客さんと付き合っているということを考えて仕事をしている人と、相手への貢献よりも単に予算を達成するために仕事をするかでは雲泥の差がでやすい。

例えばお客さんを維持できる確率が50%、つまり半分のお客さんは1年で解約したり他社に変わってしまうとする。もしそうだと、今あるビジネスは2年後に25%、5年後には3%しか残らない計算になる。今あるビジネスを100とすると3しか残らないのだ。それだけ新規顧客を多く獲得しないと今のビジネス規模は維持できないということになってしまう。

お客さんを維持できる確率が95%だとしたらどうだろうか。この場合、2年後90%、5年後77%のお客さんが残るという計算になり、新規獲得で伸ばさなければならない労力は少なくて済むと考えられるし、もっと新規事業獲得をやれば今の土台を維持しながら伸ばせるので伸びるスピードがもっとアップするということもできる。

このようにいかに顧客ロイヤリティをあげて維持するかというのはどの会社にとっても大切ということがわかる。

ところが僕の会社でもそういった視点がいつの間にかなくなってしまい、新規の活動が最重要視され、既存事業はただのフォローとなってしまいがちな場合も多く、意識してお客さんを大切にすることを社長や役員から現場に伝えていかないと、現場は新規ばかりやるようになり既存のお客さんの対応を怠ることになるので経営層はより注意してメッセージを現場に発信する必要があるのも事実だ。

■お客さんを極力維持する最大のメリット

上記の何年後に何%になるという事例だけでもお客さんを維持できる大切さというのは普通わかるものだが、さらにそれを社内で徹底させたいとか、社員にその大切さを話したいときには以下のような点を伝えるとより響きやすい。

もしくは現場から既存のお客さんへの対応で会社で損をしなければならない時や、新たな費用を既存のお客さんにかけたいときに以下のようなことを経営者や承認者に伝えると話は通りやすくなることは間違いないので、交渉する際のポイントとしても使えるのでぼくは手帳にメモをしている。

メリット1:顧客獲得コスト

新たにお客さんを獲得するコストが発生しない。新規のお客さんには既に自社のことを知っている見込み客と全く知らない認知してもらうところから始めなければならない完全新規顧客の2つがあるが、どちらもとても労力がかかる作業で新たなお客さんにしないといけない。

メリット2:ベースとなる利益を得られる

いまあるお客さんがどれだけ自社の事業に貢献しているかということを認識しなければならない。たとえそのお客さんからの利益が赤字であっても限界利益が取れているのであれば会社のコストを負担出来ているということになりこのお客さんがいなければ他の製品が大幅にコストアップしてしまう。

そのセグメントなり製品群の利益に対する貢献という視点で考えて重要性を理解する必要がある。


メリット3:購入増で利益を押し上げられる可能性がある

そのお客さんを獲得するコストがかからない代わりに、今売っている製品以外のサービスや製品も買ってくれる可能性がある。

今あるお客さんに複数のサービスを提供したり、自社の関連会社の製品やサービスも提案することで、(それがお客さんのためになることが前提だが)その会社との取引を増やすことができる。サービスの充実を図っているAmazonもこの例で、囲い込みという手段を縛ることではなく、より多面的にサービスを提供することで離れられなくしている(Amazon Prime,Music, Kindle unlimited、配送料無料、当日配達などなど)。


メリット4:価格プレミアムによる利益

当然その製品やサービスが好きという感情があるほど、値段に対する許容力はアップする。

好きなものには財布が緩むというのはよくある話で、多少の原料高騰などの影響をお客さんに転嫁しなければならない場合でも理解を得られる可能性が高い。

もしロイヤリティが低ければ、価格を変えた瞬間他社に切り替える可能性が一気に上がるが、ロイヤリティには愛着というような感情も含まれるためある程度価格に対する柔軟性がある。そうなると多少コストをかけてもいいものを作る→それをさらに好きになってもらうという良い循環ができやすい。

他にも口コミでファンを増やしてインフルエンサーとなって自社の代わりにその製品やサービスを増やしてくれるというようなメリットもあるし、とにかくロイヤリティを上げて既存のお客さんを維持することで得られるメリットはたくさんある。

こういった既存のお客さんを大事にしましょうという話をするときに、具体的なメリットを話すほど聞き手は腹落ちすることが多いので、そういった場面ではこのメリットのリストをぼくは説明するようにしている。

もしこういったことを体系的に勉強したいのであればフレデリック・ライクヘルドというコンサルタントの書いた「ロイヤリティセ略論」という顧客ロイヤリティに関する本なんかは読みやすくて勉強になるのでおすすめだ。

■お客さんを維持するのって難しい。

お客さんを維持する大切さというのは改めて振り返ることで認識できるものだが、じゃあどうやってあげるの?という点については万能な方法な残念ながらない。

「離れづらいように囲い込む」という手段は結構あるが、こころの距離が離れてしまうケースが多いのであまりお勧めはできない。また機会があれば記事にしたいと思うが、売上には「良い売上」と「悪い売上」というものがあって、お客さんを解約できないようにして、しぶしぶ使わせるような囲い込みの手段というのは身近に結構多いのではないだろうか。

例えば行き過ぎたNHKのBS勧誘(僕も経験がある)や最近ではかんぽ生命の勧誘。他にも全然つながらない問い合わせ電話、たらいまわしの対応をされる役所、解約したいが解約申し込みページまでたどり着けないウェブサービスなど、色々な囲い込み作戦がされている。

解約するのがめんどくさいから続けているというサービスも少なからずあるもので、そういったものに対して消費者はとても悪い感情をいだくので、とった魚をリリースするときも気持ちよくリリースして、また反省してサービスをつかってもらうようにする方向の努力が大切だったりする。

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定番の方法としては会員向けの割引サービス、交流会や会員限定の特典など付随的な価値を提供するというのが多いかもしれない。

他には情報開示も重要になる。その消費者に買っているブランドではこんなこだわりをもって製品を作っているということが分かる情報だったり、社会貢献につながっているとか、作り手の顔が分かるとかそういったブランドの価値を上げて所有欲を満たすような活動もとても重要だったりする。

ブランディングはこういった顧客ロイヤリティを上げる意味でもとても重要であり、ぼくは専門外だが色々なメーカーが起用するタレントやモデルを見ていて、強くこういった点を意識しているメーカーがあることも何となくわかる。

BtoBではどうだろう。

お客さんのスイッチングコストを上げて切り替えがしづらくするのはとても大切ではあるが、あまり露骨にやるとそれこそ嫌がられる。自社のサービスや製品を使っていることの満足度をあげるにはまずは、直接その会社の事業にしっかり貢献することが重要になる。

消費者と違って気分で買うことはほとんどないはずなので、まずは提供する製品とサービスでしっかり満足度を上げること。さらにそれに付随する価値として有償無償のサービスを提供したり、心地よい営業担当者をつけてよい関係を築くといったことが重要だ。

もし、自分の会社が既存のお客さんを大事にしていないと感じることがあったら一度立ち止まって考えるときなのかもしれない。

Keiky.


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