日本人は「たすけてください」が言えない「だいじょうぶ」と答えてしまうという話

2020年8月20日 05:20

最近、コロナの影響もあって仕事も貯金も無くなってしまった。
通帳を見ると４０万近く引き落とされている、保険料だ。

さすがに困り果てて役所に電話すると
「ハイハイ・・・」という冷たい感じで対応された。

困ってる人はたくさんいるのに。迷惑だよな。恥ずかしい。
という気持ちになったのですが・・・

「コロナの影響で仕事も貯金も無く・・・」という話を始めると、

突然、役所の人が「そうでしたか・・・大変でしょう」と言って
それまでと変わって、優しく丁寧に対応をしてくださった。

そして「もう大丈夫ですよ」と言われて。

妙な話だけど・・・あ、いいんだ。
だいじょうぶなんだ。とついつい感激してしまった。

助けを求めて良かったんだって。

・・・・そしてふと思い出したことがあった。

１０年ほど前、フリーターをしていた私はバイトに向かう途中、倒れている男性を見つけたことがあった。

（うわぁ・・・なんだろ・・関わったらバイトに遅れるかも）
（危ないことに巻き込まれるんじゃないか）と一瞬思ったが。

そこは勇気を振り絞って、
男性に「大丈夫ですか！？」と声をかけ駆け寄った。

そこまでは良かった。
もちろん正しい行いに違いない。

「ううっ」と顔をあげた男性は頭を少し切って血を流していた。
理由は不明だが、意識がハッキリしないようだ。

「大丈夫ですか？大丈夫ですか？」と繰り返し声をかける。

・・・・すると男性は震える声でこう言った。
「だいじょうぶ・・・・だいじょうぶです・・・」

「いやぁ・・・でも・・救急車呼びましょうか？」

「ありがとう・・でもだいじょうぶだから・・」

「えっ・・・・いや・・・」

「ほら・・・もう行って・・・・行って！」

男性は震えながら首を振って、
早く行きなさい！と促してくる。

その顔は苦しそうにひきつりながらも、
優しく微笑んでいる。

「あぁ・・・はぁ・・・・それじゃあ・・・」

そう言って私は、自転車でその場を去ってしまった。

・・・・だが・・・・
走りながらハッと思いだした。

そうだ、警察学校の救助訓練で、
教官からこう習ったはずだ・・・・

日本人というのは命に係わる危険な状態にあっても、
「だいじょうぶ」と、答えてしまう性質がある。

だから「だいじょうぶ」を鵜呑みにしてはいけない。

どんなに苦しくても「申し訳ない」「迷惑をかけられない」
「自分でなんとかしなければ」「恥ずかしい」
そんなことを思って助けを拒否してしまうらしい。

つまり「たすけてください」が言えないのだ。

・・・私はすぐにバイト先に「遅れます」の連絡をして、
急いで男性の元に戻った・・・・しかし・・・

男性の姿はどこにもなかった。

回復したのか？誰かが救急車を呼んだのか？
それはわからないけど・・「いない」ということは、
ひと先ずは無事に済んだのだろう。

時々、思いだして反省する出来事だ。

考えてみれば・・・
・・・幼い頃から親から先生からこう言われてきました。
「自立しなさい」「大人になりなさい」
「自己責任です」「自分のことは自分でしなさい」
「なんでも一人で出来るようになりなさい」

ほとんどの人はそうなんじゃないかと思う。

だけどこの社会でいう「自立」というのは、
より多くの人に甘えられることだと思う。

これは誰かが言っていたことだけど・・・・

助けを求められる『人間関係をたくさん作ること』こそが、
この社会で生きる上での本当の自立なんだと思う。

「なんでも一人で出来る」なんていうのは、
どう考えても現実的な話じゃない。不可能だよ。

出来るはずがないことを、当然のことのように教えている。
あの理想、あの教えは人を生きづらくしてしまう。

「困ってる人を助けなさい」という教えはあっても。
「困ったときは助けてと言って良い」という教えはない。

「困っている人を助けたら」褒められるけど。

「困って助けを求めたら」なぜか怒られてしまう。

「甘えるな！」「自立しろ！」「乞食！」「情けない！」