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警察学校封鎖事件


「でた!でた!」と叫び声をあげながら少年たちが廃墟から駆け出してくる。「ピエロがでた!」「ピエロがでた!」と言いながら息を切らし、青ざめ地面に崩れ落ちる。

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私はその姿を追いながら笑いながら言った

「ピエロなんてどこにいなかったよ?」と。

「違う見た!」「オレも見た!」同級生たちは口々にそう言う。

確かに私が最初に「あっピエロだ!」と言ったのだが、それは冗談。

本当は見ていない。ピエロがでると言う噂の廃墟だったのだが、当然ピエロなんてどこにもいない。みんな恐怖で幻覚でも見たのだろう。

....そもそも私は幽霊を信じていない、父がオカルト系に傾倒し過ぎてオカルトグッズの収集やオカルト話ばかりをするようになったその反動のせいだ。

学生時代、同級生たちは夏になると肝試しに行くんだけど、いつもそれを冷ややかな目で見ていた。くだらないって。

そしてまた次々と新しい噂がたちはじめる。深夜に焼け落ちたレストランを探索すると「ピエロの霊がでる」そんな話だった。

そして実際に深夜に探索に行った同級生たちが、口々に「ピエロがいた!ピエロがいた!」と吹いて回っていたけど。私は信じなかった。

だってレストラン跡にどうしてピエロがいる?まさか経営者がピエロだったのか?まったく支離滅裂。たしか当時は、ピエロがでてくるホラー映画が流行っていたからその影響だったんだと思う。

そして心霊体験をした同級生たちは地元にある大きな寺でお祓いをしてもらうのが通例だった。その和尚さんがとても子供好きの良い人で、善意で子供たちのお祓いをしてくれるのだ。

「ピエロの幽霊をみてしまいました!」と怯える子供たちを見て、笑いながら「はいはい」と言って、なんと1日寺に泊めて豪勢なメシまで出してくれるらしい。なんとも奇特な方だ。

その寺の息子が同じ部活に通っていたので、何度か祓いの話しを耳にした。「またピエロだって」「またピエロ?」「そうそうピエロを見たんだって」お祓いを希望する若者の多くが各地で「ピエロを見た」と言うのだそうだ。とんだ呆れ話だ、ここはアメリカじゃないんだぞ?日本の畑と工場しかないド田舎にピエロが出てたまるか。

だがしかし、見かたによってはちょっと面白い話でもある、だれかが「ピエロがいた」と言い出したせいで、他の全く関係ない地域の人間たちまでもがピエロの幻覚を見てしまう、それ自体が一種の怪奇現象のように思えるからだ。

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私も後学のために改めて「ピエロがでる」と言う噂の場所へ足を運んでみたのだが....当然ピエロなどどこにもいなかったよ。ほらね?幽霊なんていないじゃないかと、私はさらに確信を深めたのだった。

ときどき家に帰ると珍しく家に帰ってきた親父が母さんの機嫌をとるために得意の心霊話をしていることがあった。

同じ話を何度も何度も繰り返しているだけなのに、母さんは父さんと一緒に居られる時間が嬉しくてウンウンと楽しげに聞いている。

ここで少しフェイクを入れることを許して頂きたいのだが、父がよくする心霊話の中に私が幼い頃に起こした心霊現象の話があった。

それは私が「屋根の上に人が沢山いる!」と言った数日後に、その指さした納屋が潰れてしまった。というなんともあやふやな話。

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