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Co-Designとは?参加型デザインの概要、課題、適切な利用方法

こんにちは。イギリス(スコットランド)にある大学、The Glasgow School of Art(GSA)でサービスデザインを勉強している大倉です。

先学期にCo-Design(参加型デザイン)についてレポートを書き、さらにそれをアートで表現するという課題がありました。参加型デザインの定義については様々な解釈がありますが、この記事では、私の考える参加型デザインについてお伝えできたらと思います。

デザインリサーチや、サービスデザインについて興味がある方や、イギリスへのデザイン留学、GSAのInnovation Schoolに興味がある方のお役に立てば幸いです。

はじめに

参加型デザインは、全てのデザインプロセスに適用することができるデザイン手法です。主にシステムをデザインすることを目的としています。 参加型デザインは「共同でのデザイン」を広く指す言葉ですが、その中には、アクションリサーチや、参加型アクションリサーチ、参加型リサーチなども含まれます。また「Participatory Design」はCo-Design(参加型デザイン)と同義で用いられることが多々あります。

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※あくまで私の解釈です

参加型デザインは2種類あり、北米で用いられる参加型デザインは、デザインプロセスやプロダクト開発に焦点を当てますが、北欧で用いられる参加型デザインは、プロジェクトのステークホルダーとの民主的な関わりを重視し、最終成果物がプロダクトとは限りません。今回は、後者の北欧で用いられる参加型デザインをメインにお話をしたいと思います。

参加型デザインの価値

参加型デザインの最も大きな特徴は、メインユーザーとの共創を可能にすることです。つまり、ユーザーが直接デザインに影響を与えることができる点が他のデザイン手法と異なる点であると言えます。 また、プロダクトだけでなく、未来の経験、コミュニティー、文化など無形のものをデザインすることに適している点も大きな特徴であると言えます。

参加型デザインの欠点

参加型デザインを扱う上で難しい点もいくつかあります。

1つ目は、「全ての人がクリエイティブである」という考え方を受け入れるまでに時間がかかる可能性があることです。デザイナーがユーザーのクリエイティビティを信じられなかったり、デザイナー自身の立場がなくなるなど考えてしまうが故に、この考え方を受け入れることに抵抗がある人が一定数います。またデザイン経験のないユーザーや利害関係者などの非デザイナーにとっても、自身のクリエイティビティを信じることが難しい場合があります。これらの欠点を解消するためには、デザインに参加するデザイナーと非デザイナーのマインドセットを変える必要があります。

2つ目は、消費主義的な考え方には適していない点です。それは、「個人の幸せがモノの購買や消費によってもたらされる」という考え方を否定しているからです。参加型デザインは、ユーザーの願望を理解し、ユーザーのための価値を創造した上でプロダクトやサービスを創ることに主眼を置いています。

参加型デザインにおけるデザイナーの役割

デザイナーの役割は、デザインに参加する全ての人が平等の立場になるように配慮することです。そのために、非デザイナーがクリエイティビティを発揮しやすいように手助けをすることがデザイナーの主な役割となります。主には以下3つのことが必要であると言えます。

1つ目は、「ユーザーはその経験に関する専門家である」というマインドセットを持つことです。つまり、デザイナーがまずユーザーのクリエイティビティを信じることが大切です。また、デザイナーと参加者の上下関係をなくすためにも、デザイナー自身が非デザイナーの参加者からどうみられているのか?を認識することもその手助けになるかもしれません。(詳しくはこちらの記事の「バイアスと社会におけるポジションについて」を参照)

2つ目に、参加者のプライバシーを守り、ジャッジしない空間を作ることで、それぞれが意見を発信しやすくすることも大切です。具体的には、参加者に補助ツールをただ渡し、口出しせずに自由に発想させるなどにより参加者が考えを表現しやすすることや、同意書を渡すことで、プライバシーが保護されていることを伝えるなどがあげられます。

3つ目は、デザインツールの提供です。考えを視覚化することを補助するようなツール、例えばポストイットを使ったジャーニーマップのようなものを渡すことで、非デザイナーの参加者もクリエイティビティを発揮しやすくなります。

Artefact

以上が、私の考える「参加型デザイン」ですが、これをアートで表現しなさい、という課題があり、以下の作品を作りました。

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この作品では参加型デザインを「共同料理」というメタファーを使って表しました。様々な参加者が料理をしているのですが、そのうち小さいクマとダルマは踏み台を利用しています。この踏み台があることで3匹とも同じ目線、つまり同じ立場となり、また料理をすることが可能となっています。 この踏み台はデザイナーが提供するツールを表現しています。デザイナーが提供するツールを利用することで非デザイナーもデザイナーや他の参加者と平等な立場となり、デザインに参加できるようになることを表しています。また照明や植物は安全でジャッジメントフリーな空間を表現しており、毛糸は安全な空間だけでなく、クリエイティビティの広がりを表現しています。

まとめ

参加型デザインは非デザイナーがデザインプロセスに参加することを可能にする手法です。消費者主義には適していない手法ではありますが、ユーザーのための価値を創造することに適していると言えます。

ユーザーや利害関係者がデザインに参加するためには、デザイナー自身が彼らのクリエイティビティを信頼し、安全で平等な空間を作り、そして彼らのクリエイティビティを発揮しやすくするようなツールを提供することが大切です。

最後に...あまりアートで何かを表現するということに慣れていないのですが、普段と違う頭の使い方ができ新鮮でした。また、この課題を通して参加型デザインについてより深く理解でき、更に何かを創るという作業も経験することができたので、忙しいながらも楽しく課題に取り組めました。


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