見出し画像

ベトナム拠点のオフィスデザインを通して変化した、「企業文化」の考え方。

こんにちは、マネーフォワードでコーポレートデザインを担当している金井です。

2019年1月にオープンしたマネーフォワードベトナムのオフィス。オープンまでの半年ほどこのプロジェクトを担当していました。その体験を経て、「オフィスデザイン」や「企業文化(カルチャー)」に対する考え方が変わったので、プロジェクトの流れとともに振り返ってみます。

画像2(左から菅藤、村橋、添谷、都築)

ベトナム拠点立ち上げメンバー
都築:マネーフォワード創業メンバー&マネーフォワードベトナム代表。
添谷:マネーフォワードベトナムCOO。
村橋:マネーフォワードベトナムCTO。
日本からの支援メンバー
菅藤:執行役員&クラビスCEO。拠点立ち上げの全体を監修。
金井:オフィスデザイン担当として声がかかる。
そのほかクラビスから2名、PM及び通訳として参加。

気軽に引き受けたベトナムオフィスプロジェクト

2018年の7月、ベトナム拠点立ち上げをリードしていた執行役員の菅藤から、「オフィス作りを手伝ってほしい」と誘われます。

オフィスプロジェクトは何度か経験があり、直前に関わっていた本社移転プロジェクトでは、コーポレートデザイナーとして「マネーフォワードの姿勢や思い」をどう反映させるかということに取り組んでいました。ただ、東京以外のオフィスに関わるのは初めての経験。海外拠点では何を大事にして作れば良いのか、最初はよく分かっていませんでした。

そんな中で、立ち上げメンバーとオンラインミーティングを行い、ベトナムのオフィスやエンジニア事情などを聞き、どんな拠点にしたいか話し合っていきます。

・ベトナムからイノベーションを起こしたい
・フラットでファミリー感がある組織にしたい
・人種と文化の違いが混ざりあう拠点にしたい

立ち上げメンバーの三人は、当時ハノイのオフショア拠点でベトナム人エンジニアと一緒に仕事をしていて、働きながら感じている課題や理想を元に色々意見を出してくれます。
一方、この時点での自分はふわっとしたイメージしか持っていません。いかに自分の想像が足りていなかったか、このあとベトナムに行って思い知ることになります(笑)

自分の視野の狭さに愕然とする、初回のホーチミン出張

8月中旬に菅藤とホーチミンに赴きました。菅藤は過去に開発ラボを立ち上げたり、現在もベトナムにオペレーションチームを置いていたりと、ベトナムには30回以上訪れている超ベテラン。ホーチミンを案内してもらい、ベトナムの戦争の歴史や、それによって生まれた人口ピラミッド、人生やお金や仕事への価値観などをレクチャーしてもらいます。色々見たり聞いたりするうちに、日本の感覚との違いが分かってきます。

画像11

1:日本のコンセプトはそのままじゃ伝わらない

まず感じたのは、ホーチミンの活気と勢い。すごい量のバイクがクラクションを鳴らしながら疾走しています。街にはおしゃれなホテルやカフェもたくさんあるけど、そのすぐ裏に廃墟ビルが建っていたりします。まさに高度成長真っ只中というような、カオスな中にものすごいパワーを感じました。

東京本社オフィスのコンセプトLet's make it!は、未完成な未来をみんなで作っていくというニュアンスが入っています。それを表す"作りかけのデザイン"を散りばめているのですが、ベトナムで同じようなデザインを取り入れたら、ただの工事中に見えてしまいそう…。当初は本社のコンセプトをベースにする予定でしたが、練り直す必要があると感じました。当時のメモには「日本と同じ感覚でオフィスを作ったらただの自己満足になる」と書いてあります。

画像1

(街中はところどころリアルに作りかけ)

2:進め方が全然違う!日本の"当たり前"は通用しない

施工をお願いするパートナー選定のために、現地の日系企業と顔合わせを行います。日本との違いや、オフィス作りで気をつけることなど色々と聞く事ができました。

・水平や左右対称のデザインは、ベトナムでは実現が難しい
・床の配線はドリルで溝を掘るため、後からのレイアウト変更は不可
・内装もビル側と要交渉、それ次第でスケジュールが大きく変わる
・調達できる家具は少なく、造作家具のほうが安い(日本と真逆)

ドリル!これは大変そうだ(笑)特に不安だったのはスケジュールで、オープニングパーティを予定しており、現地の方々も招待するし、日本から代表の辻も参加します。もし間に合わなかったら広範囲で迷惑をかけることになってしまいます。

3.再構築が必要な"マネーフォワードの姿勢"

"エンジニアにとって魅力的なオフィス環境"について議論している時に、菅藤がこんな話をし始めます。

ベトナムの外資企業のヒエラルキーは、最上位は欧米で次が日系という構図。その中で、ベトナム人のエンジニアに働きたいと思ってもらう必要がある。「英語がそこまで得意ではないから欧米企業はハードルが高いけど、グローバル思考がある」層を狙うために、マネーフォワードはメンバーの成長にコミットする姿勢を打ち出すのはどうか。ハードの充実も大事だけれど、本質的なソフト面を充実させることも大事。

これを聞いて、自分が「日本での感覚のまま」思考していることに気づいて衝撃を受けました。ベトナムではマネーフォワードという会社は知られていません。それなのに、単なるオフィスプロジェクトとして捉えて、俯瞰してグローバルという広い土俵の上で「自分たちはどういう会社か」をイメージしきれていない。「ベトナムにおけるマネーフォワードの在り方」という視点が抜けてしまっていたんですね。菅藤が常々言っている「思考を日本に留めちゃダメ」という感覚が少しだけ分かった瞬間です。

画像6

(ホーチミンのシェアオフィスの会議室に缶詰めでミーティング)

 一周回ってベトナム解釈の「Let’s make it!」に

その後何度かホーチミンを訪れながらディスカッションを重ね、あらためて「マネーフォワードベトナム」がどういう存在になりたいのかを突き詰めていきました。

・追い求めるミッションは日本と同じ
 
ただし長期的にはベトナムのお金の課題を解決する企業になる
・ベトナム文化を尊重したファミリー感(欧米企業との差別化)
・オフショアではないワンチーム感(
日系企業の中での差別化)

拠点メンバーがこだわったのは、いずれ自分たちのプロダクトを作ること。そして「オフショアではなく日本とワンチーム」であることです。そのためには社内公用語は英語で、日本人もベトナム人もフラットにコミュニケーションします。ベトナムは家族や仲間を大切にする文化。会社の仲間とも家族のように密接な関係を築けるようにします。

このように"自分たちの在り方"を考えると、一周回って「Let's make it!」がしっくりくる気がしました。日本と全く同じ意味ではなく、ベトナムとしての解釈を入れたコンセプトです。ワンチーム感という部分がとても大切になると思ったので、ベトナムのコンセプトには「Together」を加えて、「Let's make it! Together!」になりました。

ベトナム人メンバーに伝えるととても喜んでくれて、「Let's make it!」「Together!」という掛け合いが生まれました(笑)みんなの中での"お決まりの合言葉"になっていて、東京本社でも毎日オンラインミーティングの最後に「Together!」が聞こえてきます。

画像4

(Together!は全員で言うスタイル)

そして完成したマネーフォワードベトナムオフィス

プロジェクト自体は思い通りに行かないこともありました。コーポレートカラーの色が出なくて現地まで確認しに行ったり、施主検査のために出張したのに全然終わっていなかったり、入居後に天井の一部が落ちてきたり(笑)

とはいえ、ベトナムでは普通のこと。日本のサービスクオリティは高いと実感する一方で、このぐらいゆるくてもいいのかもなと思う気持ちもあります。毎回想定外のことが起こるので、段々それを楽しむマインドになっていきました。

画像7

(頭が真っ白になった施主検査当日の様子w)

苦労もありましたが、現地パートナーさんがクオリティ高く作ってくださったこと、これまで一緒にマネーフォワードオフィスを作ってきたシグナルさんが監修してくれたこと、拠点メンバーが交渉や契約などを推進してくれたこと、日本からも本当に色々とサポートしてもらい、オフィスをオープンすることが出来ました!

マネーフォワードらしさも踏襲しながら、ベトナム拠点としての意志も感じられる素敵なオフィスになったと思っています。

画像8

(Let's make it! Together!を描いたMeetup Room)

画像12

(みんなが集まれるRefresh Area)

画像12

(メンバーの成長に向き合う1on1 Room)

オフィスコンセプトは拠点文化の軸となる

オフィスオープンからもうすぐ一年。マネーフォワードベトナムの社員は30名を超えて、新たなチャレンジに向かっているところです。そんな中で「Let's make it! Together!」は、マネーフォワードベトナムを象徴する概念になっているなぁと感じています。

ベトナムメンバーは会社に対する愛を持ってくれて、ワンチームであるために様々なトライをしてくれています。日本メンバーはプロジェクトキックオフ時にベトナムを訪れ、みんなで開発やイベントを行っています。そして多くの社員がプライベートでベトナムオフィスを訪れてくれていて、私もGWに母親を連れて遊びに行きました(笑)

画像12

(誕生日や記念日などは必ずみんなでお祝い)

画像10

画像11

(日本メンバーが訪れたらチームで記念撮影)

これは「Let's make it! Together!」のおかげ....ではなく(笑)
「何を成し遂げ、どんな拠点にするか」という志を持ち、体現し続けている拠点メンバーの努力そのものだと思います。

ベトナムでの経験を経て理解したのは、拠点を作っていくメンバーたちの想いが存在意義となり、その拠点のカルチャーの軸になるものだということ。オフィス作りをトリガーに、コンセプトとして想いを引き出し、言語化してシンボルにする。ただ働く場所を作るだけじゃなくて、オフィス作りを通して、みんなでカルチャーの軸を作っているんだという発見がありました。

それに気付けたこのプロジェクトにはとても思い入れがあり、ベトナムのことも大好きになりました!マネーフォワードが世の中に価値を提供していくために、カルチャーをいろんな形でアウトプットしてみんなをひとつにする。これからもそんなことが出来たらいいなと思っています。

Special thanks to Tachy,Shawn,Zuck,Matt,Nancy,Energy


マネーフォワードベトナムのワンチーム感やオフィスについては、こちらもぜひご覧ください!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?