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[BOOK]「損する顔得する顔」レビュー/今すぐ誰かに言いたくなる小ネタが満載

ひとそれぞれで明確な答えがないもの、例えば美人の基準。そういうものを研究や実証結果を踏まえて傾向や見えざる背景を知り、思いを馳せるのは知的好奇心をくすぐる良い題材なのではないだろうか。

半分ジャケ買いしたこの書は、程よい専門性と人間らしさを感じる著者の主観的意見が絶妙に混ざりあい、気にはなっていたけどあまり会話の話題になる事がない、容姿、ひいては顔について色々な方面からアプローチしている。


第1章:美男美女は得をするのか

この近代的で文化的な環境下においても容姿における生きやすさの差は依然としてあるのだろうか、そんな疑問を幼少期に抱いたのが著者を顔の研究に導いたと記されている。

「あの子は美人で良いよね。」誰しも一度は聞いたことのあるセンテンスの裏側には容姿が整っているからこその苦労もあるという。

その一方で美男子、いわゆるイケメンには相手を警戒させない性質があることも述べており、交渉などの場面ではそういった側面を活かしてきた歴史の史実が残っているのも事実だ。

(中略)日本から中国へと派遣された遣唐使はイケメンで有名だったという逸話があります。 −本文より

容姿が整っている=得するのではなく、相手に良い印象を与えることの出来る容姿が"得する顔"であり、印象は工夫次第で変えることが出来る。それを第2章で見ていこう。


第2章:顔の"印象"は何で決まるのか

性格や内面性を抜きにして、容姿で人が判断される場面に「写真」がある。分かりやすい例えは履歴書に貼る証明写真。更には面接の場においてもその風貌からの情報が与える影響は大きい。

そこで効果的なのが認知の効果。人は見知った既知感のある対象に好感をよせる、という性質だ。著者は面接官は親しい人に似た人を選ぶか?という点にも触れている。これには社風にあう・調和を重んじる日本の考え方も拍車をかけている。


また「妹は姉より美しい」は真実か?という非常にデリケートな議題にも触れている。これには自分自身姉妹のいる私も妙に関心した。

後から生まれた妹は(中略)先に生まれて親との関係が確立している姉から両親の愛情を分けてもらうべく、その姉ともうまくやるという、なかなかの対人的なプレッシャーを学習し、目上の気を引くことに長けている (中略) 一方で、「姉が美しい」事例に反論が見られないことは、姉が美しいのは不満にはならない証拠にも見えます。一番に生まれたしっかりものの長女を尊重しよう、そんな気持ちが働いているとも考えられます。  ー本文より



第3章:社会における"顔"の役割

第3章では表情を読み取る時の日本人と欧米人の違い、その文化的背景が書かれている。相手の表情を読み取る日本人は目元、欧米人は口元に注視しているという。これは日常生活におけるマスクやサングラスに対しての認識にも通じていて、すっぴん隠しのマスク着用が容認されるのに、仕事や授業の際にサングラスがなんとなく失礼な感じがされるのはその影響であるいうのは確かに頷ける。



第4章:"好かれる顔"の世界標準は存在するか

文化的な価値観の違いを述べた前章を踏まえて、好かれる顔=得する顔は世界共通になりえるのかを問うた第4章。容姿が整っている指標として良く使われる顔の左右対称性も、好かれる要素となると一概には当てはまるとは言えないようだ。

それはなぜか。視覚と脳のメカニズムに原因がある。相手を顔を見る時に働く脳の部位は脳の右側にあり、視覚交差により視界の左側に入る顔で相手の印象を作り出しているからだ。そもそも顔の全体を見てるようでも、人は無意識の内に自分にとって左側に見える相手の右側の顔を見ているのだという。これはオモシロイ。



第5章:もう損しない!得する顔になる

第5章は得する顔になるポイントを畳み掛けるように。割愛してご紹介。

・目の形はなかなかかえられない、ならば眉を変えてみよう

・歯科矯正の見直しを

・表情豊かな生活で顔面筋を活かそう

・順応にお気をつけを、3ずっと顔を見てると段々味方が歪んでくる動画(必見!)



まとめ:あなたの顔はあなただけのものではないのです

人との関わり・社会の中でそれぞれの顔は存在し、責任を伴い、自分の看板となっていく。自分だけのものであって毎日向き合う対象であると同時に、外を向いて人人との繋がりに大きな意味をなす顔。容姿が整っていてもいなくても、パーソナルな面・健康面・その人の生き様までを浮き彫りにしてしまう「顔」との付き合い方は奥深く、根深く、これからも我々を一喜一憂させることだろう。


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