驚異のマルチプレーヤー、モーガン・ゲリンの「The Saga Ⅲ」
マルチリードプレーヤーというのはよく聞く。また、いくつかの楽器を使いこなす器用なジャズ・ミュージシャンも少なくはない。
しかし、モーガン・ゲリンの場合、ある楽器がメインというわけではない。キーボード(アコースティックピアノを含む)、ドラム、パーカッション、エレクトリックベース、エレクトリックギター、そして様々な管楽器(テナー・アルト・ソプラノサックス、バスクラリネット、フルート)、EWIをはじめとする様々な電子楽器を対等に駆使し、作曲からプロデュースまですべてこなしている。
しかも、まだ彼は弱冠21歳で、このアルバムも「The Saga Ⅲ」というタイトルから分かるように、初リーダーアルバム「The Saga Ⅰ」を2016年、つまり17歳の時に発表している。いくら母親がピアニストで父親がベーシストという家庭に生まれ、バークリー音楽大学で学んだといっても、天才過ぎる。
「The Saga Ⅲ」は前2作に比べても完成度が高い。前半の何曲かは後期のウェザー・リポートを彷彿させるが、1曲目のFanastic Planetのベースなどはジャコ・パストリアスみたいだし、2曲目のFlashbackのキーボードはジョー・ザビヌルかと思わせる。このアルバムではサックスのソロが聴かれないが、「The Saga Ⅱ」では何曲かEWIやサックスのソロを展開している。また、ドラムなどは「The Saga Ⅰ」レコーディング前の数ヶ月でマスターしたというから、舌を巻く以外にない。
といって、これらのアルバムが自分ひとりですべてつくったセルフアルバムというわけではない。それぞれ何人ものミュージシャンが参加している。また、彼自身も、他のミュージシャンと様々な楽器でセッションしている。
今後、モーガン・ゲリンから耳を離せない。
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