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アゼルバイジャン出身のピアニストIsfar Sarabskiの「Planet」

 このマガジンでも昨年、アルメニア出身のピアニスト、ティグラン・ハマシアンの「The Call Within」を紹介したが、今回はアルメニアの隣国、アゼルバイジャン出身のピアニスト、Isfar Sarabskiの「Planet」というアルバムを紹介する。

 ともに旧ソ連を構成した国でありながら、アルメニアはキリスト教国(アルメニア教会)で、アゼルバイジャンはイスラム教徒が国民の大半を占める国だ。しかも、両国にはナゴルノ・カラバフ(アルツァフ共和国)をめぐる対立があり、昨年秋にも軍事衝突が起きたことは記憶に新しい。

 しかし、音楽、特にジャズに国境はないことを身をもって体現しているのが、このふたりのミュージシャンかもしれない。ともに30代前半と年齢的にも近く、アメリカをはじめ世界的に活躍している。

 すでに多くのアルバムを発表しているティグラン・ハマシアンに対して、Isfar Sarabskiはこの「Planet」がデビューアルバムになる。

 Isfar Sarabskiは祖父がアゼルバイジャンの有名なオペラ歌手(俳優、劇作家)であり、母親はバイオリン教師で父親も音楽に造詣が深いという音楽一家に生まれ、19歳のときにモントルージャズフェスティバルのソロピアノコンクールで優勝し、その後、バークリー音楽大学で学んだ。彼の音楽の基礎には、ジャズのほか、クラシック、民俗音楽、エレクトロニック・ミュージックがあるようだ。

 「Planet」はピアノトリオを中心に、要所要所に控えめなストリングスが流れ、ソロピアノ、民俗楽器を取り入れた曲等、多彩なアルバム構成になっている。

 なかでも「The Edge」という曲は、アゼルバイジャンの民俗楽器であるタールという弦楽器(多分)をフィーチャーした民族色溢れる曲だ。この楽器は6弦の弦楽器で、動物の骨や象牙でつくったピックではじいて演奏するそうで、ちょっと聞くと三味線の音に似ている。私は一瞬、「上妻(宏光)か!?」と思ったくらいだ(笑)。

 また、「白鳥の湖」は山中千尋を思わせるアレンジで面白く聴ける。山中はバークリー音楽大学で教鞭を執っているので、もしかしたら彼女のレッスンを受けたことがあるのかもしれない、と思ったりもする。

 タイトル曲の「Planet」はソロバージョンとトリオ+ストリングスバージョンで聴くことができる。

 全体を通してコンテンポラリーなアコースティックピアノの演奏を堪能することができる。注目していいミュージシャンだと思う。

https://music.apple.com/jp/album/planet/1547838683

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