【没問騒動】令和4年賃貸不動産経営管理士試験の問11が没問だと思う理由

令和4年賃貸不動産経営管理士試験の合格発表および正解発表が12/26に行われました。
試験直後から「これ没問では?」「日本語の解釈によって正解分かれるのでは?」といった問題がいくつか指摘され(どんな試験だよ)大荒れだった訳ですが、結果が出れば没問となったのは問32の1問のみとなりました。

とはいえ、問11についてはどんな解説や意見を聞いてもやはり没問ではないか、という考えがぬぐえず、ここに私の考えをまとめたいと思います。

※※
私は今回試験に合格し、加えて宅建も取得しているためそれなりの知識はあるかと思いますが、専門家ではないためあくまで私個人の考えとなります。

問11の内容とは?

問11は原状回復ガイドラインにおける借主の負担に関する記述として、適切なものを選択する問題でした。
そして正解となった選択肢がこちら。

鍵は、紛失した場合に限り、シリンダーの交換費用を借主の負担とする。

おそらく試験慣れしている人やある程度の読解力がある人であれば「限りってつけてるのおかしくない?」と感じるかと思います。
今回没問疑惑の原因になっているもの、まさにこの「限り」という表記のせいです。

「限り」と記載されていることで、紛失以外のケースを一切除外していることがおかしい、というのが私の(そして疑問を呈している多数の人の)主張なのですが、では原状回復ガイドラインでは鍵についてどのように記載されているか見ていきたいと思います。

原状回復ガイドライン

原状回復ガイドラインでは、鍵に関して借主負担となる事例として、以下のように記載されています。

●鍵の紛失、破損による取替え
(考え方)鍵の紛失や不適切な使用による破損は、賃借人負担と判断される場合が多いものと考えられる。

原状回復ガイドライン P21 別表1

また、借主の負担割合として以下も記載されています。

紛失の場合は、シリンダーの交換も含む。

原状回復ガイドライン P26 別表3

選択肢が適切だとする根拠として「シリンダー交換が借主負担と記載されているのが紛失の場合のみだから」という主張があるようです。

確かに上記の文章のみを読むと(100歩譲って)納得できなくはないですが、それはあくまで記載部分のみを抜き取って読んだ場合です。

没問だと考える根拠

私が問11を没問だと考える根拠は、以下の2点にあります。

①原状回復の一般原則に則ると明らかにおかしい
②事例として記載されているものを以て勝手に「限定」の意味を持たせている

原状回復ガイドラインでは、冒頭部分、および別表3にも原状回復の一般原則について記載されています。

・賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用方法を超えるような使用による損耗等については、賃借人が負担すべき費用となる
・建物・設備等の自然的な劣化・損耗等(経年変化)及び賃借人の通常の使用により生ずる損耗等(通常損耗)については、賃貸人が負担すべき費用となる

原状回復ガイドライン P26 別表3

つまり、借主に責任がある場合は原状回復費用は借主負担になる、というそもそもの前提条件が存在している、ということになります。

さらに、鍵交換が借主負担として記載されているのは、あくまで「トラブルになりやすい事例について判断を加えたもの」であり、いわば「発生しうる複数のケースのうちのひとつ」だと判断できます。

まとめると、原状回復ガイドラインから読み取れる内容は以下となります。

  • 賃借人の責めに帰すべき理由でシリンダーの交換が必要になった場合、交換費用は賃借人負担となる。

  • よくある鍵紛失の場合は、シリンダー交換費用は賃借人負担となる。

つまり、「紛失した場合に「限り」シリンダー交換が借主負担になる」なんてことはどこにも書いておらず、また、原則の考えや、記載内容があくまで事例であることを考慮すれば、記載内容を以て限定の意味を持たせることは明らかに不適切である、となります。

問題が「原状回復ガイドラインにおける借主負担」についての問いである以上、原状回復の一般原則を無視して、かつ事例としての記載を限定として読ませた選択肢を正解にするのは、試験として問題であるだけではなく、原状回復ガイドラインを歪めることにならないでしょうか。



(蛇足、のような)
冒頭にも記載しましたが、私は合格しているので問11が没問になろうがなるまいが結果には影響しません。
ですが、正直今回の問題については、日本語を意味を都合よく捻じ曲げて、試験作成者にとって都合のいい解釈を無責任かつ一方的に押し付けられているようで、どうしても私の中で許すことがなかったため、noteにまとめることにしました。

今後この問題を盾にした退去時トラブルが発生する可能性も0ではありません。
指針とすべき原状回復ガイドラインを歪ませないでください。




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